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わたくしが舞踏会デビューをするのは今週末に決まりました。
右隣のレモンティ王国からは王様と王妃様、それにまだお小さいエリオット王子様もいらっしゃいます。
さらに左隣のローズヒップティ国からは老王様とお后様、それにお孫様にあたるサリーシャ様もおいでになるそうで、わたくし緊張が止まりませんわ。
「難しく考えなくていいの。ただ、その場の雰囲気を楽しんでいれば、自然と足が動くはずです」
ケリーさんはそう言ってくださいますが、なにしろわたくしはどんくさいのです。
男性側に扮したケリーさんの足を何度踏んだことか。
とほほほほ、です。
「心配いらないわ、リリー。ジェインなら華麗にリードしてくれるはずよ」
王妃様も優しくそうおっしゃってくださいますが、こう、足が料理をするようには動けないのです。
「ふむ。たしかにあなた、どんくさいわねぇ、リリー」
「あああああっ。それを言われてしまいますと、わたくし申し訳なくてたまらなくなりますわっ」
「泣いてる場合じゃないでしょう?」
ケリーさんはそこで一旦言葉を区切って、わたくしにハンカチを差し出してくれました。
「ファレスが次に攻撃を仕掛けてくるとしたら、おそらくは舞踏会でしょうね。その時あなたはいつも通りに王妃様をかばって戦ってくれればいいの。いわば、ダンスはおとりのようなもの。それらしく見せてあげれば、ファレスが勝手に怒って出てくるはずよ」
ケリーさん、頭がいいですっ!!
「そうと決まりましたら、休んでいられませんわね。わたくし、がんばります。ケリーさん、もう一度お手合わせをお願いします」
「よろこんで」
そうして少し、また少しとステップが踏めるようになってきました。
これはうれしい変化です。
「まぁ、このくらい踊れれば、ジェイン様も納得してくださるでしょうよ。あとはあなたの魅力次第ね」
「魅力、とはなんのことでしょう?」
「うっふふっ。それは自分で考えた方が楽しいのではないかしら? リリー」
王妃様はにこやかにわたくしを見ておりますが、はて? 一体全体なんのことなのでしょうか?
「髪はケリーに任せておしまいなさい。それと、本番はブーツではなくパンプスだから、そっちでの練習もしておかなければね」
髪? パンプス? 世の中にはまだまだ知らないことが山のようにあるようです。
お父様、お母様、そしてリサ。元気で暮らしているでしょうか?
電話では元気な様子でしたから、さすがのファレスさんでも実家に攻撃を仕掛けてこないでしょうけども。
つづく




