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王妃様のお腹の中で、王女様が暴れているのは、わたくしの手を通じても伝わってきました。
「王女様、今はどうかお静かになさってください」
わたくしの魔力を中和させる能力がもっと完璧ならば。
「医者はおらぬのか? この状態ではジュリアを動かすことはできぬぞ」
陛下はひどく青ざめてあたりを見回します。
「大丈夫です。わたしはお産婆の経験もあります。ですからどうか落ち着いてください」
ケリーさんも王妃様のお顔の色をうかがいながら、お腹の状態をはかります。
「まだ生まれることはありません。ただ、状況に驚いている様子です。リリー、引き続き、王妃様のお腹をなでて」
ケリーさんに言われるまま、わたくしは王妃様のお腹をさすりながら、魔力を中和させる能力を送り込みます。
万能魔法使いのジェイン様がいらっしゃらない今、わたくしの力がためされているのです。
「王妃様、呼吸をゆっくりなさってください」
ケリーさんは慣れた調子で王妃様に現状を伝えます。
「あら、やっぱり疫病神だったみたいね」
その時ふいに、背後から声をかけられました。ファレスさんです。
「リリー、あなたやっぱり疫病神なのよ。王妃様がこんな状態になったのも、あなたのせいよ」
「ファレス、あなたはもう城を去ったのでしょう?」
ケリーさんは荒々しくファレスさんに訴えます。
「悪いけどあたし、黒魔術に長けてるの」
それは、とても信じられない言葉なのでした。
「そんな。あなたはそんなことに興味はないのでしょう!?」
「ケリーおばさんにはわからないわよ。ジェイン様はあたしだけじゃなく、他の女の子も平気で口説くし、ジョシュア様はまだ子供で、陛下は妾を取らないんだから」
一気にまくしたてたファレスさんは、不気味な笑みを浮かべます。
「西塔の火事はあたしが仕組んだの。城内にはあたしの味方もいるからね。黒魔術の火事を、はたしてどれくらいで消すことができるかしら?」
はぁ? なにを勝手なことをおっしゃるのですか!?
「カピバラを毒殺したのもあたし。その毒を王妃様に飲ませて殺そうとしたけど、ケリーおばさんに先回りされて失敗しちゃった。ああ、もう火は消されてしまったわね。それじゃあ、また来るわね」
言うだけ言うと、ファレスさんは黒いマントをひるがえして姿を消してしまいました。
ファレスさんの言う通り、西塔の火事はようやく消された模様です。
わたくしたちは王妃様を浮かせるように慎重に城内に連れて行くのでした。
つづく




