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王妃様のお部屋にうかがいますと、ファレスさんのことがすでに伝えられていたようで、王妃様はファレスさんを優しく抱きしめました。
「ああ、ファレス。陛下のことを好きでもいいじゃない? せめてもう少しだけでもここに居てくれない?」
「申し訳ございませんが、わたしが悪うございます。ここは潔くお暇いたします」
それに、と言って、ファレスさんはわたくしの顔を少しだけ見やります。
「どうやらわたしはお邪魔になるかと思いますので」
え? その口ぶりですと、王女様のことを知っていらっしゃるのですか?
「そんなことありませんよ。ファレスはこれまでわたくしによく仕えてくれました。一時の気の迷いでさよならするなんて、悲しすぎるわ」
「わたしも、とても悲しいです。ですが、自分の気持ちに責任を持たなければなりませんから。王妃様、どうかお身体にお気をつけくださいね」
「ありがとう、ファレス」
そう言うと、ファレスさんは王妃様の部屋から出て行きました。
残ったのは王妃様とケリーさんとわたくしのみです。
「王妃様、つたないかと思いますが、これからは遠慮せず、わたしかリリーに用事をお申し付けください」
ケリーさんの声はいつもどうりにシャンとしております。
「そうね。ファレスのことは残念だけど、これで彼女に秘密を聞かれる心配はなくなったものね。でもね、わたくしはやっぱり、ファレスのことが残念ですのよ」
「はい。ですがもう彼女のことはわすれた方がいいです。陛下が妾を持つことはありませんのに、その候補にと躍起になる者が居たのでは、わたし共も心苦しゅうございますから」
まだまだファレスさんのお暇に浸っていたいわたくしたちでしたが、突然ドアが激しくノックされます。
すぐにケリーさんがドアを開けますと、門番の一人があわてた様子でかまえております。
「王妃様、どうかごゆるりと部屋から避難してください」
「避難? どうかしたの?」
「西の塔で火事だそうです。なかなか消えないところを見ると、魔法の炎のようでございます」
それと聞いて、王妃様はよよと身体をそらします。
「まぁ、なんて忙しい日なのでしょう。ファレスは居なくなるし、西塔で火事だなんて」
「ところが、その火事をもたらした犯人がファレス様だとのことで」
ファレスさんが、火事を起こしたですって? そんな、つい今さっき部屋から出て行ったばかりですのにっ。
つづく




