3ー7
「ファレスは仕方ありませんね。厨房にでも移ってもらいましょうか?」
ケリーさんが提案すると、ファレスさんはいいえ、と首を左右に振ります。
「せっかくの申し出ですが、わたしはもう陛下のことを好きになってしまいました。もう後戻りできません。潔く辞めます」
「そうか。我の顔にそのような能力があるとは思えなんだがな」
陛下はいつも、ご自分のお顔を見ているから気づかないだけかもしれません。
その点では、ファレスさんも相当な美人さんなのてすけど、辞めるとなると残念でなりません。
「それで、こちらが新人のリリーです。リリー、ごあいさつなさい」
「はい。リリーと申します」
「そなたは我を見ても恋に落ちないのだな」
「リリーはかわいいものの方が好きなのですよ」
ねぇ、とケリーさんに話を振られて、うれしくてつい笑顔になってしまう。
「はい。実家でもよくクマのぬいぐるみやあみぐるみなんかを作っていました」
「ほう? それなら后がよろこぶだろうな」
不敵に笑われる国王陛下は、右手にあごを乗せて微笑まれております。
「はい。わたくしが作ったものでよろしければ、ぜひお譲りしたいです」
「ああ見えて、后もかわいいものが好きでな。以前飼育していたカピバラをたいそうかわいがっておったのだ」
わぁ。王妃様とおなじものを好きでいられるのはとても贅沢です。
「だが、そのカピバラが突然亡くなってしまってな。どうやら毒をもられたようなのだが、犯人がわからないのだ」
「え? そうなのですか?」
「カピバラだけでなく、羊もヤギも数頭殺されてしまったのだよ」
そんなっ。いたいけな動物たちを殺してしまうだなんて、犯人がゆるせませんわっ!!
「門番に言いつけて、警備を厳重にしてからというもの、そういうことはなくなったが、犯人が捕まっていないというのは后も不安がっているのだ」
なるほど、それで裏門の中と外にそれぞれ門番さんがいらしたのですね。
「カピバラは居なくなってしまったが、今朝そなたがつんできてくれた卵は美味しくいただいたぞ」
「ありがたき光栄にございます」
その時、ファレスさんの憎悪に満ちた表情がわたくしをとらえました。
ファレスさん、まさか? ですの?
つづく




