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3ー6

「どうしたのだ? なぜ我の顔を見ようとしない?」


 深く低いお声がよく通る大広間の玉座で、ジョゼフ国王陛下がわたくしたち侍女に問いかけます。


「失礼ながら陛下。そのお姿を見てはならないと決めたのはわたしでございます」

「なぜなのだ? ケリー」


 国王陛下は心底不思議そうな声を出されます。


「それは、陛下がたいそうお美しゅうございますから。わたしたち侍女がおかしな感情を抱かないようにと決めました」

「だが、我にはジュリアがいるぞ? それでもそうなってしまうのか?」

「恋とはそういうものです」

「ならば、ためしに顔を上げてみたらどうだ?」


 はっ。国王陛下、なんと大胆な提案なのでしょう。


「それで我に恋心を抱いたら辞めてもらえばよい。我としても、侍女がどのような顔をしているのか確認しておかなければ、不安になるというもの。この気持ち、わきってもらえるか?」


 陛下にそこまで言われてしまったのでは、さすがのケリーさんも我を通すわけにはいきません。


「では、責任は陛下に取ってもらいますからね。さぁ、あなたたち、顔をお上げなさい」


 ケリーさんにうながされて、わたしたちは顔をあげます。


 国王陛下は、噂通りの年齢不詳の超絶美形でいらっしゃいます。その艶めく銀色の長い髪は、ゆったりと後ろで一つに結わえ、整いすぎたお美しい瞳は翡翠色です。


「どうだ? 恋に落ちたか?」


 わたくしはいいえと首を振りますが、ファレスさんは唇を噛み締めたまま、うつむいてしまいました。


「陛下。僭越ながらファレスさんはジェイン様の大ファンのようでございます。ですから――」

「余計なことを言わないでください」


 わたくしはファレスさんのためと思い、開いていた口を閉ざします。


「陛下、わたしファレスは本日付をもって辞めさせてもらいます」

「ほら、言ったとおりでございましょう? 陛下。リリーは? あなたはそういう気持ちにならないの?」


 ケリーさんに問われて、わたくしはまったく、と首を左右に振ります。


「たしかに国王陛下はお美しゅうございます。ですが、陛下はわたくしの雇い主でございますから、そのような気持ちになることはありません」


 わたくしの答えに、ファレスさんは一層ぎりぎりと唇を噛み締めます。


 すみません、ファレスさん。わたくしはあなたとは考え方が違うようです。


     つづく


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