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19/84

3ー5

「あの、差し出がましいようですが、わたくしはジェイン様のことはそのように思っておりませんので、どうかお気をゆるしてくださいませんか?」


 そんなこと言ったって、とファレスさんはむすっとしたままです。


 それにしてもジェイン様、女性と見れば誰でも口説くとか、ありえませんわっ。


 わたくしの理想は相思相愛ですもの。両親のように、いつまでも相手を思いやれることがしあわせですのに。


「すみません、ファレスさん。リリーさんにどうしても鶏を見せてあげたかったのです」

「もう、わたしのこともいつかは誘ってくださいよ? 絶対ですからねっ」


 言うが早いか、ファレスさんはジェイン様の頬に口づけしました。


 わぁ、ずいぶんと積極的なのですね。


「しぁ、リリーさん。ケリーさんがお待ちです。行きましょう?」

「はい。お手間を取らせて申し訳ございません」


 そうしてわたくしたちは食堂へ向かいました。


 昨日は夕方の食事の時間に間にあいませんでしたから、今日はみなさんと食べられるのですね。うれしいですわ。


 食堂と言っても、王様たちが入る場所ではありませんので、できるだけ質素です。


 さらに言うなら、食事の内容もそこそこシンプルですがとてもおいしい朝食をいだけました。


 わたくしがファレスさんと朝食を食べ終えた頃、ケリーさんにお会いしました。


「まぁ、リリーさん。ずいぶんと探したのですよ」

「申し訳ございません。それから、おはようございます」


 おはよう、と取ってつけたようにあいさつをかわすと、今日は陛下にお会いする大切な日ですから、きちんと身なりを整えてくださいね、と念を押されてしまいました。


 わたくしたちはあわてながらも丁寧に歯磨き粉を終えると、姿見で髪の毛一本ほつれることもゆるさないといった視線で我が身を整えます。


「よろしい。では、参りましょうか」


 今度はケリーさんに先導されて大広間へと向かいます。


 この時間は陛下はすでに朝食を召し上がった後なのだそうです。


 大広間の扉を門兵さんに開けてもらいますと、玉座に人の気配がします。


 と、言いますのも、陛下のことは二秒以上見てはならないからです。


 そしてわたくしたちは陛下の前にひざまずきます。


「みなの者、面をあげよ」


 はうっ。お声もとても素敵ですが、顔を上げてしまったら、規則違反になってしまいますわぁ〜っ!!


     つづく



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