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「それでは、卵があるかの確認といきましょう」
ジェイン様は抜き足差し足と鶏小屋の鍵をあけます。もちろん、魔法での施錠です。
「うむ。今日もたくさん生んでくれましたね」
ジェイン様は生みたてのほやほやの卵をわたくしに渡します。
わたくしはエプロンで卵を包み込みました。その際、浄化魔法をかけることもわすれてはおりませんよ。
合計十二個の卵を回収すると、わたくしたちは出てきた時とおなじ裏門をくぐって城内に入って来ました。
その足で厨房に向かうと、たくさんの調理師さんたちに卵を渡して水を飲ませてもらいました。
「ただの水なのに、おいしそうに飲むのですね、リリーさんは」
ジェイン様はそれはそれは珍しそうにわたくしを眺めます。
「ええ。このお城のお水はとてもおいしゅうございますわね」
朝食も楽しみですわ。
卵を回収した時に、エプロンを汚していたらしく、あらためてジェイン様が浄化魔法をかけてくれました。なんとお優しいのでしょう。
そこへファレスさんがあらわれました。
「おはようございます、ジェイン様」
「おはようございます、ファレスさん」
ファレスさんは、わたくしのことは目に入っていないようです。
ジェイン様も、そこを気にしていないで突然ファレスさんの前で片膝をつきますと、ファレスさんの右手の甲に口づけしました。
ファレスさんはうっとりと目を細めて、それからわたくしをにらみつけます。
「おはようございます、リリーさん。わたしに内緒でジェイン様を独り占めするなんてずるいですよ」
「ひ、独り占め? そんなつもりはありませんけど、そう見えているのでしたらあやまります。すみません」
「あやまって欲しいわけじゃありません。ジェイン様はみなさんのジェイン様ですから、ジェイン様が目的で侍女になったのならば田舎に帰ってください」
「そんなっ。わたくしはそのようなことはまったく思ってもおりませんでした」
ですが、ファレスさんはすっかりおへそを曲げてしまわれて、ふん、とそっぽを向いてしまいました。
「ファレスさん、新人をいじめるものではありませんよ。それに、リリーさんはわたしがスカウトしてきたのですから、侍女同士仲良くしてください」
「ん〜。ジェイン様がそうおっしゃるのでしたら、そうしますよ。ですがぁ、わたしはジェイン様の一番のファンなのですもの」
やはりジェイン様はお綺麗でいらっしゃるから、おもてになるのですわね。
わたくしも気をつけて距離感をとらなければなりませんわ。
「それはそれとして。ジェイン様も女性と見れば口説く癖をお直しになってくださいよ、もう」
ファレスさん、相当怒っていらっしゃいます。
そして、最後にこんなことを言うのです。
「リリーさんが部屋に居ないから、ケリーさんと一緒に探していたのに、まさか朝からジェイン様をたぶらかしているとは夢にも思いませんでしたわ」
たぶらかしていません。それはおそらく、悪夢だと思われます。
つづく




