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牛屋さんのお宅でミルクとチーズを買い込んだわたくしは、ほくほくした気持ちで家路に向かいます。
今日はとても綺麗な殿方にお会いしました。この村は小さな集落ですので、見覚えのないお方は目立つものですが、はて。またお会いすることがあるのでしょうか?
それはともかく、ですっ。
なぜわたくしがほくほくしているかと言いますと。牛です。牛なんです。ミルクを買いに行ったらチーズも買っていいことになっているのがわたくしのしきたりでございます。
チーズです。大好物です。ミルクをたしなみながら、チーズをはむ。最高でございますわっ。
ですがここはのどかな農道。田舎娘とはいえ、歩きながらチーズをかじるようなはしたない真似はいたしません。早く帰り着けば、それだけチーズを食べる時間が早まるというもの。ここは早足のスキップ添えで、歩を進めます。
「る〜んたった、る〜んたった。るんるんるん」
即興の歌まで披露しながら家路に帰り着きました。
「ただいま戻りました」
……あらっ? 神父様。予定より早いのですね?
おや? お隣にいらっしゃるのは、先ほどの?
「リリーや。こちらはロイヤルミルクティ城で魔法教師と道化師をしていらっしゃるジェイン様だ」
神父様のお言葉で、ジェイン様がゆっくりと優雅なしぐさで立ち上がります。
「俺様、イカサマ、ジェイン様。リリーさんですね。先ほどは失礼いたしました」
……イカサマ? 笑うところですの?
「いや。持ち芸の一つなので、真剣にとらえないでください」
「はい」
「それでな。こちらのジェイン様が言うには、リリーに城で働いて欲しいとのことなのだよ」
「お城で、ですか? それは下女としてでしょうか?」
「くわしくはまだ話せませんが、下女ではありませんし、給料込みで悪いようにはさせません」
ジェイン様はきらきらの瞳でわたくしに微笑みかけます。そのように麗しいお顔で微笑むなんて、反則でございますわ。
「そのお仕事は、わたくしでないとつとまりませんのですか?」
「そうです。我が城の主であるジョゼフ国王陛下が占いましたところ、リリーさんの丁寧な立ち居振る舞いがその仕事にぴったりだとのことです」
ジョゼフ国王陛下っ!? 年齢不詳の美丈夫であらせられる、あの、ジョゼフ国王陛下!?
「つつしんでお受けいたします」
ロイヤルミルクティ城内部は美形が多いとのお噂はかねがねうかがっております。そのようなところでお仕事をいただけるのでしたらよろこんでお受けいたしますわっ。
ああ、美を前面に浴びられる日が来ようとは。丁寧に生きてきてこれほどすばらしいと思ったことはありませんわよっ。
つづく




