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「ちょっと、リサってば。お行儀が悪いですわよ」
わたくしの名前はリリー。かわいいものが大好きな十五歳ですの。
リサっていうのはわたくしの5つ年下の妹のこと。もう、田舎者だからって、きちんとお行儀よくしていなくちゃだめじゃない。
今日は牧師様がうちにお夕飯を食べにいらしてくださる大切な日なのです。
リサがお行儀悪くしていたら、お父様とお母様に恥をかかせてしまうでしょう?
ですからわたくしは、リサに注意をしたのですけれど。
「もう、お姉ちゃん最近口うるさいよ」
「あ〜ら〜? かわいいお口で毒づいちゃいけませんわ。わたくしの悪口ならかまいませんけど、両親と牧師様の恥になるようなことはつつしんでくださらない?」
わたくしは、まだ子供らしくてやわらかいリサの頬を両手でつかんで引き伸ばしました。う〜ん、ぷにゅぷにゅ。
ああもう、リサったら本当にかわいらしいんだからっ。
「お姉ひゃんのいじわる〜」
「ん〜。むにむにぃ〜」
こんなのいくらでも愛でられますわ。
リサの目に涙が浮かびそうになってきましたから、頬から手を離して頭をなでてあげます。
「だいたい、お姉ちゃんおかしいよぅ。こんな田舎で上品にしている意味なんてないんだからぁ」
「あらあらたいへん。ミルクがたりませんわ。お母様、わたくしちょっとミルクを買ってきますわね」
「よろしくたのむわ」
「いってきまぁ〜す!」
今日も快晴!! 気分上々!! しあわせですわぁ〜。
とことこと野道を歩いておりますと、なにやら地面をじっと睨んでいらっしゃいます。
「あのぉ。お困りですか?」
「はっ。いや、コンタクトを落としまして」
「それはお困りでしょう。ご一緒に探してもよろしいですか?」
「いや、その必要はありません」
そう言うと、わたくしとおなじくらいの年頃の男の人は、仕立ての良さそうなベストの内ポケットに手を差し入れると眼鏡を取り出しました。
正面からお顔を拝見しますと、これまたなんと見目麗しい殿方なのでしょうっ!
「おや。あなた様は」
「はい?」
わたくしのことを知っておりますのでしょうか? いやいや、そんなはずはありませんわ。このお方のようなお美しいお方を忘れるはずがありませんものっ。
「いいえ。コンタクトレンズを探そうとしてくださり、ありがとうございました。近いうちにまた、どこかでお会いしましょう」
「……はぁ?」
なんのことでしょうか!? ににやらわたくしの人生にとんでもない関わりを持ってきそうなお言葉遣いが気になります。
つづく




