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お茶の時間を楽しんだわたくしたちは、後片付けをしながら王妃様のご様子をうかがいながら、わたくしの仕事について説明してもらいます。
王妃様は現在妊娠八ヶ月。お腹のふくらみも目立ち始めた頃合いです。
わたくしはケリーさんに教わりながら、事細かに学ばせてもらっております。
ケリーさんの教育は、とにかく丁寧にを心がけていらっしゃるため、とても親身になって教わっているのです。
「王妃様のお部屋にあるものは持ち出し禁止よ。どうしても、という場合は、王妃様に直に聞くといいわ。それと――」
それと、と一拍置かれたケリー様は、深いため息をついた後、渋々といったように話をつづけます。
「それとジョゼフ国王陛下についてですが、二秒以上見つめるのは禁止しております」
「それは、常に平身低頭でいればよい、ということでしょうか?」
「もちろんそれが一番の理由ですが。なにしろ国王陛下はお美しくていらっしゃる。うっかり恋心を抱いて辞めさせた侍女の多かったこと。わたしはあなたにだけは侍女を辞めて欲しくないのよ、リリー」
それは、わたくしがのちに王女様付きの侍女長になるから、というだけの理由ではなさそうで。
そんな情け心を打ち明けてくださったケリーさんは、本当にお優しくていらっしゃる。
わたくし、感動が止まりませんわ。
「承知いたしました。ジョゼフ国王陛下のお顔はなるべく見ないよう心がけます」
そのお顔をみるのを少なからず楽しみにしていたので、しみしくはありますが、状況が状況だけに、わきまえなくてはなりませんからね。
「注意事項はそのくらいです。それからあなた、歌は得意?」
「ええと、たしなむ程度でしたら」
「よろしい。歌の稽古もさせましょう。なにしろ王女様付きの侍女長になるのですからね。子守唄を歌ってもらわなければなりませんから」
そのことはファレスさんが居ない時にこっそり耳打ちされました。
わたくしが王女様の子守唄を歌うとは。これはとても大変なお仕事になりそうですわね。
そうは言っても、かつて妹のリサをあやすために子守唄を歌った過去がありますから、そんなに心配しなくても大丈夫だと思いますが。
赤ちゃんって不思議です。目を見て話しかければ、なんとなく意思が伝わるものですもの。
つづく




