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お巡りさん! コイツです! この聖女が痴女です!

「それにしても、てっきりパーティーメンバーかと思ってたんだけど……ただの迷子ちゃんだったなんてねぇ」


 筋肉辛子男改め、筋肉辛子聖女のアンジェラが、肩と肩が触れ合うような距離から見下ろしてくる。

 ボディビルダーのような張りのある筋肉に覆われた肉体は、物理的にも精神的にも、近付くとかなりの圧迫感がある。


「まぁ、元々顔見知りではあるからな」


「あら、そうなの? でもあの状況で、よく逃げずに立ち向かったじゃない? 顔見知りどころか、パーティーメンバーだってバラバラに逃げ出してもおかしくないくらいには、アブナイ感じだったと思うけど?」


 腕がそっと寄せられる。

 意外にも、しっとりと艶のある肌が当たり、ああ本当に女性なんだなと思わされる。

 見た目は完全にマッチョマンなんだが。


「襲われてる女を見殺しにして逃げるなんて、寝覚めが悪いだろ。

 仲間が見つかるまでとはいえ、一度は一緒に居て良いと言ったんだ。すぐに諦めて捨てて行くわけにはいかない」


「うふ、美容室に居た時も、可愛い坊やだと思っていたけど……アナタ、なかなかイイ男じゃなぁい? 男気のある坊や……可愛い見た目のくせに、中身が雄らしいところ。そのアンバランスさが堪らないわぁ」


 少しばかり露出の高い修道服を翻しながら、煩悩の塊みたいな目を向けてハァハァしている様は、完全に背徳感に溺れる痴女にしか見えない。

 教会は大丈夫なんだろうか。

 俺の中の聖女のイメージが激し目に崩れて行く。


「アンジェラさんこそ、接近戦に強すぎないか? 聖女ってもっとこう……後方支援のイメージがあったんだが」


「いやぁね。安全なところで守られているだけの女なんて、アタシはそんなお飾りでおさまるつもりはないわ。

 前線やアブナイところになればなる程、聖女は必要なのよぉ?

 いざという時、男を支えられるのがイイ女ってもの。そうでしょ?」


「それは、確かにな……」


 支援や回復をしてくれるだけでも勿論有り難いが、やはりいざという時に戦闘が出来るのは強い。

 誰かを守りながら戦うというのは、それだけ難しいのだ。

 今回のような事があると、余計にそう思う。


「まぁ、前線や危険な場所では、前衛に守られながら後方支援っていうのが、聖女のスタンダードではあるけど、ね。聖女って言っても、その能力には、それぞれムラがあるしねぇ……」


「そういえば、教会でそんな事を聞いたな」


「アナタ、教会に来た事があるの?」


「以前、図書館に行った時に、孤児院の子達からお菓子やら栞を買ってな。それからたまに、買い物をしに寄るんだよ」


「そうだったのぉ。嬉しいわぁ、子ども達と仲良くしてくれて」


 一度離れた肌が、またくっつく。

 そっと寄せられた体に、胸筋が触れた。

 そう、胸筋である。

 バッキバキの胸筋だ。

 硬い。硬すぎる。


 纏うオーラだけはやたらと妖艶で、いろいろな意味でドキドキさせられるが……。

 露出のある修道服に、性格に筋肉に強さに……とにかくあちこちギャップが激しすぎて、自分がどんな意味で動揺しているのか分からなくなるレベルだ。


 一つ言えるのは、この筋肉辛子聖女も、俺にとっては間違いなく肉食獣だという事くらいである。


「アンジェラさんは……」


 言いかけたところで、俺の唇にアンジェラの指が押し付けられて、口をつぐむ。


「ねぇ、テディちゃん。アタシの事は、呼び捨てにしてくれないかしらぁ。さっきから“さん”付けなんて、他人行儀で……アタシ寂しいわぁ」


「ア、アンジェラ」


「良い子ねぇ。本当、可愛いわぁ」


 耳元で、「食べちゃいたいくらい」と囁かれ、咄嗟にズザザッ、と横に飛び退いてしまう。


 お巡りさん! コイツです! この聖女が痴女です!


 と叫びたいのをぐっと堪えるが、俺の口からは「あ、え、ちょっと!」とかいう無意味な言葉しか出てこなかった。


「やだ、そんなに怯えなくても、本当に食べたりなんかしないわよぉ。だってアタシ、聖女だものぉ。肉欲では繋がれないの。……アタシの気持ちは、ただ愛でるだけのも・の」


 色っぽい流し目の奥に、ギラギラとした肉欲を感じるのは気のせいだろうか。

 気のせいであってほしい。


 チラッと後ろを見る。

 フレーゲルと並んで歩いていたライリーが、俺の視線に気付いて会話を止め、グッと親指を立ててきた。


「おいお前、さっきから珍しく会話に入って来ないと思ったら……!」


「いやぁ、邪魔しちゃ悪いかなーと思ってさー」


「余計なお世話だ!」


 ニヤニヤと面白そうに笑うライリーの頭を引っぱたこうとするが、避けられた。くそ。


「ライリーちゃん、アナタ気が利くじゃなぁい? でもアタシ、アナタの事も可愛いと思ってるのよぉ」


 アンジェラが両手を広げて、俺達のほうへ飛び込んでくる。


「ぐわああぁぁ!! くっ、苦しい! アンジェラ! おい!」


「アンジェラちゃんっ、無理無理ムリムリ! 折れるぅ!」


 アンジェラの腕の中で、体をミシミシ言わせながら訴える俺達を見て、フレーゲルがぽかんとした後、俯く。


「…………ぷっ」


「お前今、笑ったろ!」


「フレーゲルちゃん、助けてー!」


「もぅー! 坊や達ったら、人聞きが悪いんだからぁ。ねぇ?」


 俯いて肩を震わせているフレーゲルから、笑い声が漏れ出す。


「だって、三人とも……あはっ、あははは!」


 フレーゲルがお腹を抱えて笑い出す。


 さっきまでの、どこか沈んだ様子が消えて行く。


 アンジェラが俺にウィンクした。

 気を使ってくれたのだろう。


 お前はイイ女だよ、本当に。

 そう思って、頷く。


「フレーゲル!! どこだあああ!」


「おーーい!!」


 少年達が呼ぶ声が聞こえてくる。

 どうやら、姫プパーティーの再会の時が来たようだ。


「皆ー! こっちっ! ここに居るよーっ!」


 フレーゲルが大きく手を振る。


 再会した姫プパーティーの小さな騎士達が、姫のあられもない姿を見て大騒ぎし、誤解から俺達に食ってかかったのは、また別の話だ。

息抜き代わりに、もっとエロコメ寄りの、頭すっからかんにして読めるようなものを書きたいなと思ったものの……

連載中の作品を増やしてしまうと、ただでさえ不定期な更新が、間があいてしまうようになりそうで、二の足を踏みますね……。

複数作品を連載中にしている方々って、凄いなと思う今日この頃。

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