【第四十五話】『青天白日』
法綱さんが真剣に説明するほどの能力だ。管理課側では無視できないよな。
・・その力に思い当たる事はないが。
『そして、君が手にしたその力は、おそらくだが、マサシくんも同等の力を持っていると予測した。』
正史と同じ・・?
『その能力によって起きた結果が今回の騒動に繋がっている、と考えている。』
『それはどんな能力なんですか?そんなすごい力、使った記憶ないんですけど・・』
『・・その辺は鈍いんだねぇ。
悪用しなきゃ問題ない、という話でもない。悪意がなくとも日常的にホイホイ使われては困る能力なんだ。
それはこの世界の秩序に穴をあけるようなものだからね。』
・・世界の秩序に穴をあける・・
・・世界に穴をあける
・・世界を・・繋ぐ・・?
そういう事か!
『今の君は、僕ら正規のチャネラーにとって味方であるのか敵なのか、という関係性への疑問が生まれている。』
・・来た。これが「本題」だ。
『僕も、僕達もそれは同じ考えです。
法綱さん、あなたや本井さんが僕達の味方なのか、いや味方になってくれるのか。』
『それは僕の質問に対して半分「答え」になっているね。
「少なくとも今はっきり同志とは言えない」
「場合によっては敵となる」
そう君は言ったんだ。
そして少なくとも君達には「敵」が存在しているという事も。』
お互いを警戒し合っている、という事はわかった。でもここでこれ以上話すのはマズい。
今は敵の本拠地に僕1人。いざという時、どこに逃げればいいかわからないし、そもそも逃げられそうにない。
『まっ、僕としては君と敵対する事は本意ではないし、何よりさっちゃんが望まないからね。』
重くなった空気を取っ払うかのように軽い口調で法綱さんはそう言った。
『さっ・・本井さんは「マサシ」がどこにいるか知っているんですか?』
『君がここに来る前に、和田ちゃんから連絡があったんだよ。
「ターゲットはチャネリングで転移した」
ってね。
僕達は、マサシくんがレイヤー間を転移できる手段があるのではと予測していた。
そういう事象の報告が以前からあってね。
であれば、和田ちゃんの担当レイヤーから転移して、その転移先がウチのレイヤーだったなら、それはマサシくんではないかと僕は考えた。』
確かに、縁からの話と照らし合わせてもその予測には違和感がない。
でも、僕の質問に対して答えになっていないんじゃないか?
そう考えていたら、法綱さんは少しドヤ顔気味に話を続けた。
『レイヤーっていうのはね。ひとつの世界をさしているんだけど、世界の姿はどのレイヤーも一緒で、同じ場所に存在してるんだ。
つまり、転移元と転移先はレイヤーは違っても場所は同じ。』
・・という事は・・
『マサシくんは、「別のレイヤーにある君の家」から、このレイヤーにある君の家に転移してきた、という事になる。』
正史・・結局捕まってしまったのか・・?
『まあ、さっちゃんならマサシくんを捕まえても悪いようにはしないだろうから、安心しなよ。』
ガチャリ。
部屋に誰かが入って来た。
『待たせたね、法綱くん。
手厳しく怒られてしまったよ。』
『ハハッ!やらかしちゃったね和田ちゃん!
駄目だよ?チャネラーが故意にレイヤー住人を転移させちゃあ。』
・・え?
『来問くん、君は自宅にいる時に偶然出現した「ゲート」の前に居合わせてしまい、向こう側から手を捕まれ、「強制的に」転移させられたって事だ。
つまり、今回君は「被害者」なんだよ。』
・・確かに。
僕自身がドアを認識して自分の意思で開けたという事実を除けば、法綱さんの言った通りだ。
腕を掴まれて部屋に入ったのも事実だしな。
・・でも、待てよ?
という事は・・僕の家にあるはずの正史の部屋は、どこにあるんだ?
『すまないね、来問さん。
君は「今回の件」に関しては完全に潔白だった。』
和田さんに謝罪された。
無実という事なら、このまま解放してもらえたらありがたいんだが。
『・・だが』
そうなるよねぇ・・
『君があの「マサシ」と何らかの関係がある件については、引き続き話を伺いたい。』
・・やはりそう来るよな。
僕がどう返答しようか考えていたら
『和田ちゃ〜ん!
固い硬いカタイよ〜対応が!
そんな言い方じゃあ、相手が萎縮して何も話してくれなくなるんじゃない?』
『むっ、ではどうしろというんだ?』
『ここは僕に任せてもらおうか。
何せ僕は彼と何度となく顔を合わせているから、和田ちゃんに比べればハードルがかな〜り低いからね!』
『くっ・・仕方ない。
この場は君に譲るが、今回だけだからな!
しっかり報告書は出してくれよ。』
『さすが和田ちゃん!話がわかるねぇ!
報告書、期待して待っててね〜!』
『・・期待は、していない。』
ガチャン!
和田さんは部屋を出て行った。
ガチャン!
間髪入れずにまたドアが開いた。
『来問くんっ❗️』
『あっ・・』
本井さんが部屋に駆け込んできた。
『来問くん、大丈夫⁉️』
『大丈夫です!この通り・・』
ガシッ!
本井さんが僕にタックルしてきて、そのままハグされた。
あ、どうしよう。こういうの、慣れてない。
『さっちゃん、はしゃぎ過ぎだよ。僕がいるの、わかってる?』
本井さんは無言でぎゅぅっと僕を締めつけていた。
『ちゃんと護衛できなくてごめんなさい。でも無事で良かった・・』
ああ、この人はずっと心配してくれてたんだな。この人達とは敵対したくないと、本心でそう思う。
『さっちゃんがこれじゃあ、ちょっと事情聴取は無理かなぁ。一旦解散して、日を改めようか?』
え?帰っていいの?
『絶対に駄目です❗️』
僕のお腹に顔をうずめていた本井さんが勢いよく反論した。
・・え?駄目なの!?
『まだマサシくんを捕まえてないんです。やっと来問くんを保護できたのに、今解放したらいつまた誘拐されるかわからないんですよ❗️』
あ〜そういう事か・・
その辺の真実を知ってもらわないとどの道先には進めないか。
腹をくくって話さないとな。
『本井さん、法綱さん。
僕が「マサシ」に連れて行かれてから何があったか、そして今の僕が知る事実を2人に話します。(ただ、出来れば場所をどうにか出来ませんか?)』
最後は本井さんにだけ聞こえるよう小声で話した。もし録音とかされてて他の管理課全員に知られてしまえば、あの管理部長の耳にも入ってしまう。
本井さんは僕の背中に回した両腕をがっちりロックしたまま、僕の顔を見上げた。
僕も本井さんの目を真剣に見つめる。
何とか伝わってくれ。
・・いや、本井さん何で顔赤いの?
今そういう空気じゃないですよ!
『2人で何をやってるんだい?』
法綱さんが呆れている。
はっ!としたような表情になった本井さんはバッ!と後ろに飛び退いて
『あっ❗️そそそそうだね、来問くんの話をまず聞かないと、だよね!』
『はい、是非・・』
『やれやれ、それじゃあ今の環境じゃ話しにくいだろうから場所を変えようか。』
『・・ところでさっちゃん、マサシくんは捕まったのかい?』
『いえ、まだです。
来問くんが見つかってこっちで保護したって連絡があったので、急いで帰って来ました!』
法綱さんはまたしても呆れ顔で
『・・それは駄目でしょお。
任務放棄はれっきとした違反行為だよ。
また始末書書かないといけないじゃない。
頼むよ、さっちゃ〜ん。』
『えっ、また書くんですかぁ⁉️』
さっちゃ・・本井さんは相変わらずだった。




