【第四十一話】『邂逅相遇』
【縁サイド】
俺は今、深層領域から帰還した来問のドラゴンもとい「真実の記憶」と力比べをしている。
向こうは俺めがけて力いっぱい前に進もうと頭突きをかましてくる。
俺はそれを真正面から受け止め、押し返す。
言葉通りの押し合いだ。
ただ今絶賛大移動中の「偽物の記憶」に向かっていくかと思ったが、どうやらあっちには興味がないようで助かった。
そんな「偽物の記憶」も、あと少しで穴への移動が終わりそうだ。
何とかなりそうだな。
・・と思ってしまったのはフラグなのか⁉️
急にドラゴンが上を向き、特大の咆哮を放った。
それと同時に、穴へと吸い込まれていた「偽物の記憶」の群れが集まり始め、穴をも塞ぐ大きな黒い物体となった。
『・・何だ!?』
その黒い物体はモゾモゾと形状を変化させながら、ゆっくりとこちらに迫ってくる!
『グォォオオオ‼️』
虹色のドラゴンは黒い物体めがけ、火炎を吐いた!
『マズイ❗️』
俺は黒い物体と火炎の間に移動し、咄嗟に虹色の炎を盾の形にしてそれを弾いた。
『正史ッ❗️聞こえてるかッ❗️少々マズイ事になりそうだッッ⁉️』
(何?どうかした?)
『「偽物の記憶」が急に集まってデカい塊になった。こっちに向かってくるッ‼️』
(そんなはずは・・兄貴はチャネラーフラグがあるから、SMSはオフラインのはず・・まさか❗️)
『何かわかったか⁉️』
(・・やられた。あのクソ野郎、姑息な真似しやがって❗️)
『何だ⁉️』
(表層領域のどこかに「敵」が潜り込んでる❗️
ソイツが「偽物の記憶」を操って「真実の記憶」を深層領域に押し戻そうとしてる❗️)
『どんなヤツかわかるか?』
(形状が特殊でうまく説明できねぇ。手足のないロボットみたいなヤツだ!)
『わかったッ❗️とにかくソイツを見つけて潰せばいいんだなッ❗️』
(どっちの記憶も消さないように頼む!)
『出来るかどうかの話じゃないな❗️やるしかないッ❗️』
とは言ったものの、どうする?
まずは落ち着け、落ち着いて状況を確認だ。
俺は今、挟み討ちの状態だ。
右からドラゴン、左からもドラゴンが迫っている。
・・なん・・だとッ⁉️
「偽物の記憶」の集合体はいつの間にか虹色とそっくりな黒いドラゴンの形を成していた。バカな・・
どうする!?
俺は、虹色のドラゴンからはダメージを受けない。おそらく黒いドラゴンからもダメージは受けないだろう。
ただ、虹色ドラゴンから黒いドラゴンへの攻撃はアウトだ。当たった部分の記憶が多分消滅する!
となれば、虹色ドラゴンの攻撃を防ぎつつ、黒いドラゴンを穴まで押し戻して落とすしかない。
くそっ、体が2つあれば対応が楽なんだが・・
・・・
ん?待てよ?
『俺の中の虹色ッ❗️ドラゴンになって出て来いッ❗️』
・・・
・・
・
ブォオオッ!!
『おおッ‼️』
俺の中の「虹色の炎」はイメージ通りドラゴンの姿で顕現した。
やや小ぶりではあったが。
『よしッ❗️
目の前の虹色ドラゴンを足止めしてくれッ❗️』
『グォォォォン❗️』
よし!何とかなりそうだ!
その間に俺は黒いドラゴンの相手を。
『ガァァァ・・』
黒いドラゴンが口を開けて・・
・・なんだ!?
奥に何かが見える・・
『・・キオク・・セイギョ・・❗️』
口の中にいる何かが言葉を発した・・❗️
『セイアツ・・セヨ❗️』
あれが黒いドラゴンを操ってるヤツか❗️
中に飛び込めば捕まえられるか?
だが俺の炎でドラゴンが焼けちまう・・
炎を消すか?
やろうと思えば出来るだろうが、それで何とかなるのか・・?
後ろを振り返った。
虹色のドラゴンの方は、うまく膠着状態を維持できてる。
なら俺も行くしかないッ❗️
『行くぞッ‼️』
全力で炎を纏って黒いドラゴンに向かって突っ込む❗️
そして接触する瞬間に炎を解除し、黒いドラゴンの口に飛び込んだ。
ドラゴンはすぐに口を閉じた。
そうなるよな。
だが、真っ暗だが、見える。
俺は自分の目に虹色の炎を灯した。
記憶領域が実態ではないというのなら、何でもできると思ったからだ。
洞窟のようなドラゴンの腹の中は割と狭く、すぐ目の前に、いかにも犯人ですと言っている風体のロボットがいた。
カメラの様な頭部と回転ゴマのようなボディ。実際に胴体は回転して浮遊しているようだ。
無骨なデザインは冷たさを感じる。
これも俺のイメージなんだろうか。
正史によれば、コイツを破壊すればおそらく黒いドラゴンは元に戻る。
遠慮なく行かせてもらう!
動こうとした瞬間、周囲の壁が前後左右から急に迫って来た。押し潰す気か❗️
俺は力いっぱい横の壁をぶん殴る。
グワァァンとたわむような響きと共にドラゴンが体勢を崩した。
壁にぶつかったロボットは制御が崩れたのかそのまま倒れ込む。
すかさず距離を詰めて、渾身の一撃をそのボディに叩き込んだ。
『ダァッ‼️』
ガン!
コイツ・・
想像以上に硬い!
普通に殴っても効いてる気がしない。
このまま腹の中でやりあってもこっちが不利だ。
とりあえずコイツは外に連れ出す!
ロボットの頭を両手で掴んでぐるぐる回転し、その遠心力でドラゴンの口めがけてぶん投げる!
ドラゴンは口を閉じたまま、喉元で受け止めた。
『そうなるよなッ❗️』
そこに全力のドロップキックを打ち込み、ロボットをノドにねじ込みそのままこじ開けた。
『ガギギギ・・』
外に飛び出たロボットは、黒いドラゴンの一部を引き寄せ、鎧のごとく身に纏った。
『知能はあるのか・・AIみたいなものか?』
あの鎧は多分、虹色の炎に当たれば灰になってしまう。
さてどうしたものか・・
・・正史が何か言っていたような・・
偽りの記憶に何か攻め所はなかったか・・?
《SMSに埋め込まれた「偽りの記憶」の上に新たな今の記憶が堆積しているからな》
たしかそう言っていた!
という事は、偽物ではない部分があるって事だ❗️
『・・あれは・・!?』
よく見ると、黒い鎧にところどころ白い部分がある!
目に虹色の炎を灯していたからだろうか。
それが表層の記憶に新たに刻まれた「真実の記憶」であると直感的に理解した。
その白い部分は鎧の黒い部分を押しのけ、ロボットの中心に集合していく。そしてひとつの塊となって剥がれ落ち、鉄のボディが丸見えになった。
『そこだッ❗️』
虹色の炎をまとった一撃を鎧の隙間から直接ロボットに打ち込んだ。
『バキッ❗️』
いい感じにヒビが入った。どうやらこの炎はロボットにも有効なようだ。
ヒビが入った場所から煙が漏れ出し、鎧は溶けながらずるりと地面に落ちた。
ロボットは傾きながらも何とか浮遊し、くるくると回転を続け、カメラのような頭はそのレンズをこちらに向けている。
ロボットが相手なんて人生初だから、感情も読めないし、まだ余裕があるのかどうかもわからない。
そんな事を考えながらロボットと睨み合っていたが、次第にガタガタと金属が内部でぶつかる音が聞こえ始め、回転が不規則になっていく。これは流石に効果ありだったようだ。
『年貢の納め時ってヤツだな。』
『・・貴様ぁぁ・・何者だ⁉️』
ロボットが急に人間の言葉を話し始めた。
『なんだ?急に人間らしく話し出したな』
『貴様ら、チャネラー風情が俺様の邪魔をしてただで済むと思ってるのか?』
『・・その下品な語り口から察するに、お前が管理部長という奴か?』
『名前を言え❗️すぐにクビにしてくれる❗️』
『俺は高校生なんだが、退学にでもされるのか?何でも自分勝手にやりたい放題やってきたような悪の匂いが充満しているな。
俺の目の前にいるのが本人じゃなくて、本当に残念だ。』
『何だとぉ〜貴様、誰に口を・・』
『ウラァッ‼️』
バキィィン❗️
虹色の炎をありったけこめた会心の一撃がロボットの顔面・・モニターを貫通した。
瞬間、虹色の炎が一気に燃え広がる・・❗️
ロボットからの声は灰とともに消え去った。
『ミョウモンか。正史の言う通り、ロクなもんじゃなさそうだな。』
振り返ると、黒いドラゴンは既に力なく崩れ落ち、元の「窓」に戻りながら穴に吸い込まれていく。
虹色ドラゴン同士の押し合いも問題無さそうだ。
『正史❗️こっちは片付いたぞ。例のミョウモンというヤツが操っていたようだ。』
(だろうな。
縁先輩がぶっ壊した「メモリサーチャー」は、SMSがオフラインになっている人間を検索して入り込み、強制接続させる補助機構だ。
そんなものを好き勝手に手当たり次第バラ撒けるのは、あの野郎ぐらいだからな。)
『ばら撒く?今のヤツが何体もいるのか⁉️』
(ああ。でも心配いらないぜ
この辺り一帯を飛び回ってたぶんは俺が全て停止させたからな!)
『そんな事ができるのか⁉️』
(ま、所詮は機械だからな。室内に電気飛ばしゃショートする。)
『じゃあこっちのも片付けられたんじゃないか?』
(それをやるにはなぁ、兄貴の体内に高電圧の電気ショックをお見舞いする事になるんだぜ?)
『それはマズイな・・』
(まっ、そこは縁先輩がやってくれたし、兄貴の方も無事記憶は繋がったみたいだから作戦成功だ❗️)
『そうなのか❗️来問は助かったんだな⁉️』
(縁先輩、感謝するぜ❗️)
振り返ると、虹色のドラゴンはいつの間にか辺り一帯に浮遊する窓へと姿を変えていた。
そしてドラゴンが這い上がって来た穴の前には、ひとつの扉があった。
その扉が静かに開く・・
その瞬間、扉から溢れる光で目の前が真っ白になった。
再び目を開けると、俺は記憶の中から元の世界に戻っていた。
目の前のベッドには、目を覚ました来問が体を起こしていた。
『来問ッ❗️』
ぼーっと真正面を見ていた来問は、はっ!とした表情で俺の方を見た。
『・・・!?
縁ッ❗️』




