【第三十三話】『波乱起伏』
・・・何だ・・これ?
頭が痛い・・景色が歪む・・
目の前が真っ暗だ・・
何も見えないその真っ暗闇に亀裂が入っていく・・意識ごと割れてしまいそうだ!
ガシャンッ❗️
ガラスの床が割れたかのように足元が崩れ、僕はそのまま落下し何も見えない闇の中に吸い込まれた。
・・・
・・
・
・・ん?
ここは・・
・・丘の上公園か。
真っ暗な中、街の光がぽつぽつと見える、見慣れた景色。夜か。
・・・あれ?
僕がいる。
僕は今空にふわふわ浮いていて、
「丘の上公園で寝転がって空を見ているもう1人の自分」
を見下ろしている。
これは・・夢か。
自分の姿がこんな風に見える夢もあるんだな。
・・・
《なんだ、今ごろ来たのか。》
ん?
「寝ている僕」が誰かに話しかけている?
と、その話し相手と思われる誰かが暗闇の向こうから駆け寄って来た。
《俺を置き去りにして先に行くなよな〜、ずるいよ兄貴》
・・!?
あれは・・・マサシか❗️
・
・
え?
今なんて言った?
「兄貴」って言わなかったか?
《ははっ、お前がゲームしたまま寝落ちしてるからだ。》
《起こしてくれてもいいじゃん!
それにこの場所は俺が先に見つけたんだからな!
勝手に使うなよ!》
《そうだったな。そして家を抜け出すのが下手くそだったもんだから、僕にあっさり尾行されたと。》
《うるせぇ!》
《相変わらず言葉使い悪いな、正史。そんなだと嫌われるぞ?》
《これでも友達は兄貴の10倍はいるんだぜ?》
《なにおう!?この国語0点大王が!》
《うるせー、兄貴こそ遅刻大魔王だろうが!》
《うるさい!僕は毎朝忙しいの!》
《寝坊してるだけじゃん!》
《正史だってそうだろ!》
《兄貴のほうが!》
《・・・》
《・・》
・・
・
・・・
『来問くん❗️大丈夫⁉️』
『ん・・』
『目が覚めた?』
本井さんか?
『・・ここは?』
『ホテルだよ。しばらく君達が寝泊まりする部屋だ。大丈夫かい?』
法綱さんの声だ。声の方を向くと、少し離れた場所にある椅子から振り返って教えてくれていた。
いつの間に来たんだろう。
『あ〜もうずっと起きないから心配したよ〜!
大丈夫?来問くん』
本井さんがわたわたしながら話しかけてくる。
『さっちゃんは少し静かにね。』
ムスッとした本井さんが、への字口をしたまま僕の方へ向き直ったので、
『あの、僕はどうなったんでしたっけ?』
状況確認だ。
『ホントびっくりしたんだから!
急に来問くんが見えなくなったから立ち上がって見たら、横長の椅子にバタンって感じで倒れちゃってて!』
『ああ、そう言えばお昼ご飯中だったんですよね・・』
僕も本井さんの顔見えませんでしたよ?エビの壁でね。
『なんか・・変な夢見てました・・。』
『夢?』
『えーっと・・確か・』
言いかけたところで法綱さんは僕を制止するように口を開いた。
『来問くん、今は思い出そうとしない方がいい。今の君はすでにレッドゾーンまで引き込まれてしまっているようだ。』
『えっ?』
法綱さんが少し困ったような表情で僕を見る。
『・・まさかとは思っていたが、どうやら君も「音無萌音と同じ状況」になりつつある・・
・・いや、正確には音無萌音とは「真逆」の状況だと言うべきか。』
・・❗️
音無先生と同じ・・
『記憶喪失・・ですか?』
『彼女に起こった症状は、厳密には「記憶未到達障害」という。
思い出そうとする記憶がそもそも存在しないという特異な症例だ。』
確かに、音無先生はそんな感じだった。
『対して今君に起きている症状はこれとは違う。深層領域に眠っている記憶が覚醒し、表層記憶を破壊しようとしている。』
・・それって、真実の記憶が復活するってこと、だよな。
何か問題あるんだろうか・・
『あまり詳しい説明は君の症状を進行させかねないからこれ以上は伏せるが、このままでは良くない事になる。』
確かに、急な頭痛とかあるし、さっきは気絶するほど苦しかったから、ヤバイ感じはしてる。
僕はこれからどうしたらいいんだ?
『本井さん、法綱さん、僕は・・』
『今はしばらく安静にしていてくれ。
とは言っても、何もするなってわけじゃあない。リラックスできる事ならやってもらって構わないからね。
ただ、何かあった時のために、ホテル内にいてもらうよ。』
『身の回りのお世話は私に任せて!安心して本井お姉さんを頼るといいよ♪』
『・・ああ、その子、割とポンコツだから期待しないでね。』
『キィィィ❗️法綱キライ❗️もうどっか行って‼️』
・・・法綱さん、大丈夫、知ってます。
本井さんは部屋の中を逃げ回る法綱さんを驚異的なスピードで捕まえ、ひたすらに殴りかかっている。
2人のやり取りで少し気が楽になったかな。
・・
・
・
【縁サイド】
『じゃあ、お前の目的は・・・』
『・・・・・。』
正史、お前・・・




