【第三十話】『隠忍自重』
ガラガラ・・
『う〜い。
ホームルーム始めるぞ〜。
遅杉と縁以外はみんな来てるか〜?』
渡河先生はいつも通り朝から脱力全開だ。
『遅杉も休みなんですか?』
『あ〜あいつはホームルームにいなさすぎだから数えない事にした。ま、1時間目の授業中には来るだろ。
・・今日の1時間目は「歴史」だがな。
ダッハッハ❗️』
担任が楽しそうに言うな!
また授業が遅れちゃうじゃないか!
ガラガラガラ!
ん?遅杉の到着か?
『ホームルーム中すいません❗️来問くんいますかっ?ちょっと急用なのでっ❗️』
まさかの本井さんだ!
『ん〜?来問ならそこにいるから、いくらでも連れてけ。』
親戚に野菜配る感覚で引き渡すのやめて!
『ありがとうございます❗️来問くん、ついて来て❗️』
『・・はいっ!』
脱力先生からの急展開に頭も体もまだついてきてない、切り替えろ!
そんな僕を振り返りもせず、本井さんは僕の手を引いて堂々と廊下を走る!走る!
このまま職員室の前を通ったら絶対怒られますよこれ・・
『本井さ・・
ドスンっ!
急停止した本井さんの背中に顔面が衝突した。
『ちょっ・・』
『気をつけて❗️「ロック」されてる❗️』
え?ロックって、あの白い光が来る時の!?
職員室のドアを見た。
向こうの先生達は会議の途中なのだろう。
しかし誰一人としてぴくりとも動かない。
『ロックって、何かが変化した時に起こすんじゃないんですか?』
『普通はね!今は普通じゃないってこと!』
本井さんの声が頭に刺さり、空気が張り詰めていく・・
・・静かになった廊下にどこかで聞いたような声が響いてくる。
『へぇ、僕が来るのを知ってたみたいだね。』
本井さんは全周を警戒するように立っている・・!
『誰が予想したの?お姉さん?』
廊下に響く声、どこから話しているんだ?
『・・マサシくん・・
あなたの狙いは来問くんだったのね!
何が目的?』
マサシ・・?誰だ?
『あ〜あ、僕の名前を教えちゃっていいの?
縁先輩から何も聞いてないのかな?』
本井さんは「ハッ」とした表情で僕を振り返った。
『え?・・何ですか・・!?』
足音が僕の後ろから近づいてくる・・
振り返った時、目の前にいたのは、フードを被った子だった。
でも。
あれ?なんだ?
確かこの前、校門のところで顔を見たはずなのに、まったく思い出せない。
被っているフードに隠れて見えないその奥の表情が。
『急がなくていいんだよ、真。
今、僕の顔なんて気にしなくていい。
大事なのは、真実を追い求める探究心だ。だからさ、家に引きこもってちゃ駄目だよ?』
・・!?こいつ、知っているのか!?
僕が最近、丘の上公園に行っていないことを。
いや、その前に僕の行動を把握している!?
『僕はずっと時が来るのを待ってた。
・・でもまだみたいだ。
あせらずしっかり準備を整えて、確実にやり遂げる。』
何を言ってるんだ?
『だから、お姉さんもあまり余計な事はしないで、ずっと真の味方でいてね。』
そう言って、「マサシ」と呼ばれたアイツは校舎の外に消えていった・・。
『本井さん、アイツは・・』
『縁くんから聞いたの。彼があなたを狙ってるって。詳しい話は人目を避けて話すね、ひとまず屋上に・・。』
気づけば廊下に人が次々と出てきていた。
授業が始まる時間だ。実習室に行く学生達だろう。
『ほらっ、今ならあまり目立たないから早く!』
・・・
僕は一体、何を聞かされるんだ・・?
・・・
流石に、授業の時間帯は屋上に人影がない。
『はぁ・・びっくりした❗️来問くんを連れてかれるかと思った・・』
『連れてかれるって・・一体どういう事になってるんですか?』
『詳しい話は出来ないんだけど、さっきの男の子が、どうやら君を狙っているらしいの。
目的は不明なんだけど、あなたを誘拐する可能性があるって縁くんが言ってた。』
『それで、私はが来問くんの側について警護するって事になったの。よろしくね。』
なっ・・なな・なんですと⁉️
『それって、ずっとですか?』
『ずっとです。』
『放課後は・・?』
『家についていきます。』
・・・
ええええええ⁉️
『ご両親にはうまくいってね♪』
『いやいやいや、だってねぇ、ちょっと・・』
『えっ?もしかして嫌だった?』
『いや、縁は反対しなかったの?じゃなくて!
えっと・・・そう!法綱さん!
あの人は?』
『その人の指示です。
それに、縁くんからもお願いされたよ?』
何てことだ・・
まさかの展開・・!
父さん達には何て説明すれば・・
いやいや、マジでウチ来るの!?
『・・あの、ドッキリとか・・』
『そんな訳ないでしょ⁉️私だって暇じゃないんですよ❗️』
あ、怒らせちゃった。
『という訳で、学校じゃ学年もクラスも違うから来問くんを守れないので、しばらくお休みしましょう。
そして、来問くんのお家にもご迷惑がかかるので、ご両親には合宿という名目で説明して当分の間ホテルに泊まります。』
え、かなりマジなやつだ・・。
『さらに、居場所がバレるのを防ぐため、2日おきに宿泊場所を変えます!』
そこまでするの!?
『い、いつからですか?』
『今からよ!
さっき見たでしょ?
あなたを追ってくる正体不明の敵を。彼は非正規にロックを操作できる超危険人物なのよ!
一刻の猶予もないの。』
『・・わかりました。じゃ、一度家に戻って着替えとか用意しないと・・』
『それには及ばないわ。買えるものなら全部旅先で購入します。大丈夫。頼りになる財布がいるから♪』
『旅先?』
『おっと失礼。宿泊先よ。』
話を聞くに鬼気迫る状況とはわかるけど。
なんだか本井さん、修学旅行気分じゃないか?




