【第二十九話】『雲煙万里』
『俺はちょっとした事情で、自分の思いのままにこの世界で部分的な『ロック』ができるようになった。
アンタには、しばらくそのままでいてもらうよ。』
身動きしない縁に向かって話しかけ、その場を去っていった。
・・・
1人その場に残された縁。
彼は自らの記憶領域にいた。
彼の目の前には、取り戻した「真実の記憶」の窓が無数にある。
そして、空から降ってきたひとつの窓。
それは、さながらノイズで画面が乱れたテレビのごとく、定まらない映像を映し出していた。
『そうやって人の記憶に入り込んでくるのはここ数日で予習済みだ。
そしてお前が「真実の記憶」を奥底に追いやってホンモノのフリをするって事もなッ❗️』
ノイズの窓は縁には目もくれず、無数のケーブルのようなものを「真実の記憶」に向かって勢いよく伸ばした。
『させるかッ❗️』
縁の体から虹色の光が噴き出す。
その虹色を纏った拳でケーブルを力任せにぶん殴った。
そこから引火した虹色の炎はケーブルを伝って本体まで燃え広がり、ノイズの窓はあっという間に灰と化した。
『どうやら、こいつが侵入する事で時間が止まったような状態になるみたいだな。
そして記憶を乗っ取り何事もなかったかのようにまた時間が動き出す・・制御装置みたいなものか?
未だに信じられないが、こんな事が全ての人間に対して行われているのか・・
世界征服でもする気か!』
記憶の中から元の世界に戻ると、縁の体の内側から虹色の光が漏れ出す。
その直後、空間から「ガシャン!』というガラスが割れたような音が響くと共に縁は動き出した。
首をゴキンと鳴らし、体を確かめる。
『ふう。』
正史もこの記憶のすり替えをやっている組織の関係者なのか・・?
それも気になる点ではあるが、フードの男の正体が正史とわかった時点で確信したことがある。
カフェで待ち合わせの時の一件も含めて状況を整理した結果、やはり俺の予測は正しいと思う。
来問が俺に近づく事でアイツ自身のリスクが高まると予測した。
だがそれは正史も同じ、いや俺以上に危険だ。
縁は、正史の一言が引っかかっていた。
「今はまだアンタの出る幕じゃない」
アイツは、どこかで俺に出番が回ってくる展開を想定して何かをしようとしている?
そしてそれは「今ではない」ということだ。
正史、お前は今までどこで何をしていた?
お前の目的は・・まさか⁉️
確かめなければ・・❗️
・・・
・・
・
『おいおっさん!縁先輩を近づけるなって頼んでたのに、ありゃどういう事だよ!』
『おっさんて・・・自覚してても実際に言われるのは厳しいねぇ。』
『うるせえ、それよりどうなんだよ?』
『ん?おかしいなぁ。
さっちゃんからの報告によると、縁くんは「来問とは距離を置く」って、自分から言ってきたって事なんだが。』
・・という事は、縁先輩は最初から俺を尾行してたって訳か。脳筋かと思ってたけどいい勘してるな・・
『それに僕はまだ彼とは直接的に関係してないからねぇ。詳細はさっちゃんに確認してもらえるかい?』
『ちっ、相変わらずのらりくらりな先輩だぜ。』
(・・相変わらず?・・先輩?)
『・・そんなに来問くんや縁くんをしっかり管理したいなら、君も学校生徒になっちゃいなよ?さっちゃんみたいにさ♪』
『・・できたらとっくにやってんだよ・・』
(・・乗ってきた!)
『まだ高校生になれる年じゃないかぁ♪』
『るせぇ❗️
これでも高1だ文句あっか⁉️
・・まあ、入学してればの話だけど』
・・
(やはり・・)
『それよりもだ❗️
縁先輩の件、ちゃんと見張っとけよ❗️』
『ちゃんとそう伝えとくよ。
さっちゃんにね♪』
マサシは舌打ちしながら去っていった。
『・・・さてと。まずは帰って調べるか。とんでもない爆弾が見つかるかも。』
・・・
・・
『このあたりかと思ったが・・やはり簡単に尻尾を掴ませてはくれないか・・』
ガラガラ・・
『・・ああっ!やっと見つけた!』
『ん?珍しいね、さっちゃん。僕に用事かい?』
『もう、私1人に任せないでくださいよまったく!
こんな倉庫で何してるんですか?』
『まあ、ちょっと昔の思い出探しをね。』
『そんなの休日にやってくださいよ、もう!』
『いやほら、そうじゃなくてさ、よくあるでしょ?
なんかこう、比喩的なやつというか、表現の自由というかさ・・』
『そんなカッコつけようとするから毎回カッコ悪く仕上がってるんですよ?いい加減気づいてください。』
・・・
『・・で、何かわかったんですか?』
『いやぁ、何とも・・』
『結局だめだめじゃないですか〜。
私は苦労して縁くんから重要な情報をゲットしてきたのに・・』
『縁くん!そういえば、マサシくんから怒られちゃったよ〜。
縁くんを来問くんに近づけるなってさ。』
『はぁ!?
だから前に言いましたよね?
縁くんは自分から「来問くんと距離を置く」って言ってたって。
今は学校にすら来てないんですよ!』
『ふむ。
という事は、縁くんはマサシを追っていた可能性があるね。』
『その可能性しかないでしょ!
なんなんですか今日は。ポンコツ具合にもほどがありますよっ❗️』
『初代ポンコツ大賞のさっちゃんに言われるとは・・』
『しょっ・・何ですかそれは❗️勝手に変な賞作らないでくださいっ❗️』
『・・まあまあ、お互いいったん落ち着こうか。』
『全くもう・・。
って、それどころじゃないんですよ❗️
あの「マサシ」くんについて、重大な情報が入ったんです!
『ほう、どんな内容だったんだい?』
『それが、
「この情報を知ってしまうことで、本井先輩にまで危険が及ぶかもしれないから、教えられません。」
という事なんです!』
『・・初代ポンコツ大賞・・』
『・・えっ?』




