【第二十八話】『一知半解』
『真〜ご飯だよ〜!』
『今行く〜』
『おおっ!母さん今日は気合い入ってるね!どしたの?』
ダイニングテーブルの中心に天ぷらが山のように積み上がっている!
中でもデカいエビが目につく。20本はあるぞ!?これだけで充分なボリュームなのに、さらにサツマイモに大葉、イカまで用意している。いったい何人前作る気だ?
と内心あきれつつもこの山盛り、なんか懐かしい感じがする。
『今朝お父さんがね、「剣山のようにエビが刺さった天丼を食したい」ってぼそっと言ったんだよ。』
・・ほう。
『ほら、お父さんって食にこだわらないというか、食べれれば何でもいい人でしょ?
だから珍しくリクエストが来たからつい張り切っちゃったわ〜』
『おお〜、父さんに感謝だな!
・・で、その父さんは?』
『ビール買いに行ったよ。珍しく今夜はガッツリ飲むんだってさ』
『へぇ〜、いつも缶ビール2本で撃沈するのにね〜。母さんも飲むの?』
『私の分も買ってきてくれてたらね♪』
『早く帰って来ないかな〜』
・・・
『真は先に食べてていいよ。お父さんはそのうち帰ってくるでしょ。』
『いや、父さんが帰ってくるまで待ってようぜ?・・・え?』
なんだ?・・今誰に話そうとしたんだ?
『何してんの?食べるならご飯盛っちゃうよ?』
バタン!
『帰ったぞ〜!』
『お帰り!父さん遅いよ、早く食べよう!』
『ん・・そう急かすな。
おっ、今日は豪華だな!
何かいい事あったのか?』
『何言ってんだよ、父さんのリクエストだろ?』
『俺は何も頼んでないぞ』
『『え?』』
『ん?
2人ともどうした?』
『だって、父さんが「剣山のようにエビが刺さった天丼を食いたい」って言ったんだろ?』
『そんな訳ないだろう、なあ?母さん。
俺は揚げ物苦手なんだから。』
『そう言われてみればそうだわ。聞き間違いしたかしら』
『だろう?
俺は今日、職場の後輩の土産「漁師が仕込んだイカの沖漬け」を肴に酒を楽しもうと思って、わざわざビール買い込んできたんだ♪』
え〜!母さん!
『父さん、じゃあこの天ぷらの山は?』
『真!今こそお前の「漢」を見せてみろ!』
『いや無理だって!こんなの・・』
・・
あれ?・・この続きは・・なんだ?
過去にもこんな事があった気が・・する・・
・・・
なんか、強烈な違和感を感じる。
いつからだ?
・・
『どうした?真。
食べる前から具合悪くなったか?』
『・・ん、ああいや、大丈夫。
とりあえず、出来たてのうまいやつから食べまくってやる!』
『真、食べきらなくていいからね!
明日、天ぷらうどんにでもするから。』
『それ、いいね!』
僕は無心で、ただひたすらに海老天を頬張った。
・・・
・・
『・・はぁ、何やってんだろ、俺。もっとズバッと行くほうがらしいんだけどなぁ・・』
『おいお前、何者だ?
なぜ俺や来問の周りをうろついてる?
顔を見せろ!』
『・・ちっ、あいつらちゃんと見てなかったな!』
縁は俊敏な動きであっという間に距離を詰め、逃げようとしたその男のフードをめくった。
『ぐっ・・』
『・・・お前は❗️』
その一瞬で縁の掴んでいた手はふりほどかれた。
『・・あ〜あ、やっぱわかっちゃったか。』
『正史❗️なぜお前が・・・そうか❗️
目的はどうであれ、今お前を来問に会わせる訳には行かないッ❗️』
『おいおい縁先輩、久しぶりの再会だってのに、そんな悲しい事言わないでくれよ!
アンタの記憶が戻ったのは俺としても喜ばしい事なんだぜ?
ただ、今はまだアンタの出る幕じゃないんだよ!』
『何とでも言え。反抗するなら、力づくでも連れて行くぞ⁉️』
『へっ、筋肉と熱血だけじゃどうにもならない世界だってあるんだぜ?先輩』
マサシ=正史は二歩、三歩後ろにジャンプして縁との距離を置き、何もない目の前に右手を伸ばし、何かをつまむように手首を捻った。
カチリ・・
その一瞬で縁を含む、全ての動きが停止した。




