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【第二十五話】『雲外蒼天』

・・・


・・静かだ


何も無いみたいだな


多分目を閉じているんだろうけど、真っ暗どころか真っ白だ。


眩しいくらいの白に包まれて何も見えない。


・・・


・・何か聞こえる


ん?呼ばれてるのか?


『真っ!』


跳ね上がるように飛び起きた。


周りを見渡す。


知らない部屋だ。


『真っ!大丈夫か!』


『・・父さん!』


父さん、何でそんな必死な感じなんだ?

それにここはどこだ?


『心配したぞ全く。もう少しで寿命が縮むところだったぞ!』


『はは、ごめん。

で、ここはどこ?』


『救急対応の病院だ。お前の友達から連絡があってな。公園まで飛んで行ったわ!』



・・ああ、そうか。


僕は・・。



『どうした?真、どこか痛むのか?』


僕はメンタルが強い人間じゃない。


だから耐えられない時だって普通にある。


ぐしっ・・


・・・


『真。


・・乗り越えられる時は必ず来る。


今はそれでいい。』



その瞬間景色がぼやけて、僕の思いが一気に溢れ出した。



そういうの、普段言わないくせに・・


あと、事情も知らないくせに・・


・・


父さんは背中を向けたまま、僕を待っていた。




精密検査っぽいのを受けて、特に問題はないって事で、家に着いたのが23時45分・・今日が終わってしまうぞ。


そういや、今日は昼から何も食べてない。


『真!ラーメン食うか?』


『食べる!大盛りに餃子と炒飯も!』


『そんなに無いわ!』


一蹴された。


母さんは、病院から父さんの連絡を聞いて安心したせいか、先に寝たみたいだ。


『それ食ったら早く寝ろ。

明日は学校行けそうか?』


『・・多分、大丈夫。』



・・あまり気が進まないな。


歯を磨いて、部屋に戻った。

風呂に入る気力はゼロだ。

明日の朝にしよう・・とか考えてたら、もう日付変わってるわ。


ベッドに横になった。


こういうタイミングで、いつもなら本井さんがノックレスで飛び込んで来るんだけどな。



ちょっと期待したが、彼女は来なかった。



・・・


・・


『真〜!ご飯だよ!』


・・ん?


もう朝か。


なんか全然寝た気がしない。


のそりとベッドから降りて、リビングへ向かった。


『おう、真。調子はどうだ?』


『ん・・何かあまり寝た気がしない・・』


『休むのか?』


『・・いや、行く。』


『そうか、無理はするなよ。』


テレビを見た。


ニュース番組だ。


『昨日、すごい雨だったところがあったみたいだよ』


母さんが朝ごはんをテーブルに運びながら声をかけてきた。


テレビにはちょうど、その台風みたいな様子が映し出されていた。

みんな、傘が壊れて、びしょ濡れだ。ここまで強かったらもう、レインコート一択だな。


・・レインコート・・フードを被ったやつ・・


尾行・・!?


・・一瞬鼓動が速くなる!


落ち着け!


大丈夫。


僕は大丈夫だ。


・・


『それじゃ、行ってきます』


自転車に乗って学校へ向かった。


この時間なら、余裕で学校に着く。


そうだ!


もう僕にはあとがない。

悪いが遅杉、僕はお前と一緒に特別補習なんて受けてる暇はないんだよ!


余計なトラブルに巻き込まれないように、周りを警戒しながら自転車置き場に到着。


ささっと靴を履き替えて教室に向かう。


ガラガラガラ


『おはよう!』


『おっすー』


よし!今日は無事に遅刻回避したぞ。

いや、元々遅刻しない側の人間だったからな。

これが当たり前。



縁は・・まだ来てないな。


・・・


・・


ガラガラガラ・・


『おーぅ、ホームルーム始めるぞ〜』


ん?もうそんな時間か。


縁のやつ何やってんだ。


『あ〜、縁なんだが、今日からしばらく休むそうだ。家庭の事情らしいが。』



じゃあ出席とるぞ〜


という渡河先生の声は、僕の耳に届かなかった。


縁は有言実行した。


距離を置くどころか顔も合わせる気がないって事じゃないか。



何を考えたらいいのかわからないまま、気づけば午前の授業が終わっていた。




・・学食でも行くか・・


食堂はいつも通りの賑わいだというのに。


その活気に乗っかれないしみったれた空気を醸し出している自分が嫌になる。


並んでいる間、他の学生達の楽しそうな会話が聞こえる。


僕はぼーっとしたまま、何を頼んだのかもわからないまま、トレイを受け取り、隅っこの席につく。


食欲はどこかに忘れてきた。


肉野菜定食を前に1人俯き、また僕は泣きそうになっていた。


・・・


『がちゃんっ❗️』


勢いよく僕の向かい側にトレイが置かれた音がした。


のそりと顔を前に向ける。


対面に無言でドカッと座ったのは・・


・・本井さん?


昨日一緒にバスに乗った時から1日しか経っていないのに何故か久しぶりな感じがした。


なんだか穏やかではない表情でこちらを睨みつけている。


呆気にとられていると


『何しょぼくれてるんですかっ❗️』


『・・え?』


本井さんはミックスフライ定食に醤油ラーメンという相変わらずのわんぱくセットを頬張りながら話を続けた。』


『私はチャネラーになった時、覚悟を決めてるの!振り返らずにひたすら前に進むって。』


・・何の話だ?


『記憶は過去。

確かに、過去がなければ今はないけど、今があるなら未来は作れる!

びびってなんかいられないわ❗️』


『あなたはどうするの?

このまま縁くんの言う通り、そうやって縮こまって生きていくの?』


『・・縁に会ったんですか⁉️』


『会ったわよ❗️

話がありますって急に来たから何を言われるのかと思ったら、来問くんのために私達は会わないほうがいいって。

そんなの聞き入れる訳ないでしょ!

私は来問くんをチャネラーにする為に「ここ」にいるんだから。』


本井さんに圧倒された。


『縁くんが何を根拠に言ったのかは知らないけど、私だって一応この道のプロなのよ!

私達の世界はそもそもリスクなしの安心設計なんかじゃない。それを支えてみんなを幸せにする為にチャネラーは在るの。』


君にもそうなれる道がある、と彼女は言った。


その勢いが、僕を囲っていた薄暗いモヤモヤを消し飛ばした。


『本井さん・・』


『来問くんも何言われたのかはわからないけど、決めるのは自分。

彼の言ったことだけが100%の正解って訳じゃないでしょ?』


確かに、縁に言われたことはショックだった。けど・・


僕がどうするかは僕に決める権利がある!

そう思ったら、体が軽くなった。



『・・もう大丈夫みたいね。

いつも通りの来問くんじゃないと、私も調子狂っちゃうからしっかりしてね。』


『・・そうですね!

気持ちが晴れたら、お腹すいてきました。』


『じゃあ、この醤油ラーメンを来問くんにプレゼントします♪

肉野菜定食だけじゃ元気出ないでしょ?』


『あ、ありがとうございます。

でもそれじゃ本井さん足りないんじゃ・・』


『それなら心配ないわ!』


彼女はチャーシュー麺大盛りを追加注文した。


・・・


僕は肉野菜定食と醤油ラーメンを何とか完食し、本井さんとは食堂前でお別れした。


『来問くん、またね!』

笑顔で手を振りながら小走りで去っていく。

何か「さっちゃん」て呼ぶ法綱さんの気持ちがわかる気がした。


あと本井さん、廊下は走っちゃダメですよ。


・・・


教室に戻り、自分の席につく。


よし!僕は僕の思い通りにやる!


気になったことは、調べずにはいられない!


・・とはいえ、肉野菜定食と醤油ラーメン(本井さん仕様なので大盛り)は、僕には多すぎた・・


午後からはお腹いっぱいで授業内容は全然頭に入ってこなかった。


放課後、やっとお腹が落ち着いてきた。


いったん気持ちを整理しよう。


気持ちの整理といえば、僕にはあそこしかない。


自転車置き場から愛車を引っ張りだし、校門を出たところで


『丘の上公園にいくの?』


後ろから声をかけられたが、聞き覚えのない声だ。


振り返ると、見慣れない男子中学生?くらいと思われる子がいた。


・・・いや、はっきりとは覚えていないが、この身長やスタイル、顔の輪郭に見覚えが・・こいつはフードのヤツだ!


突然の状況に戸惑っていると


『今日は行かないほうがいい。まだ心が安定してないようだからね。また倒れちゃうよ?』



・・こいつ、何者だ!?

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