【第二十四話】『雨夜の月』
今日はバスで通学したから、丘の上公園まで徒歩で行くにはルート的に長くてきつい。
縁も家に寄ってから行きたいという事で、一度解散して夕方5時に丘の上公園で待ち合わせる事になった。
自宅に着いて、自転車専用の物置から愛車を引っ張り出す。普段は出しっぱなしだけど、雨の日はしまっておくのがマイルール。
ん?
何だ、この違和感というか何とも言えない気持ち悪い感じ。
あれ?自転車が2台しまってある。今まで全然気にしてなかったが、いつからあるんだ?
母さん用?にしては若者すぎる。父さんは車があるから必要ないし。
・・ま、後で母さんに聞くか。
『なあ母さん、物置の中にある自転車なんだけどさ。』
『ん?自転車?』
『うん。あれ?自転車の何だっけ・・』
『ご飯の準備しなきゃいけないから、忘れちゃったならまた後にして。』
『あ、うん。』
何を聞こうとしたんだっけ?
・・まあ思い出させないなら大したことじゃないか。
晩ご飯には少し遅れると母さんに伝えて家を出る。
いつものルートで到着した丘の上公園は、いつもと違う雰囲気だ。
なにせ、こんな明るい時間に1人じゃ中々来ないからな。
『来問、来たか。こっちだ❗️』
縁は既に到着していたようだ。
『早いな、いつ着いたんだ?』
『1時間前には着いていた。』
早すぎだろ❗️
突っ込むより早く縁は続けた。
『俺はもちろんだが、お前が尾行されないか上から確認していた。』
『え・・尾行!?』
『カフェで待ち合わせの時、お前に衝突した奴だ。俺だけでなく来問にまで顔を出していたとなると、偶然と考えるのは危険だろう?』
何という警戒心!
あの放課後の一件でこのレベルの警戒が必要だと決断するほどヤバいと思ったのか。
縁、お前は将来、絶対自衛官だわ。
『で、尾行されてたか?』
『いや、今のところ大丈夫だ。』
『そっか、じゃあやっと昨日の話が出来るな。』
『ああ。
・・その前に、確認したい事がある。』
『何だ?』
今回のテーマが楽しい話ではない事は承知の上だが、それを考慮しても険しい表情で縁は口を開いた。
『来問、お前は本井先輩が元々、ウチの学生じゃない事を知っているか?いや、知っていたか?』
『⁉️』
いきなり核心に近い質問が来た。
『縁、どうやって・・』
話し切る前に縁が右の手のひらをこちらに向け、制止した。
『その反応で充分だ。』
『俺は・・俺と音無姉さんは、今回の一件で「真実の記憶」を取り戻した。』
音無先生だけでなく、縁もか・・でもその可能性は僕も予想していた。なにしろ縁自身の記憶の中に入ったんだからな。
『俺が「音無姉さん」と呼び出したのは、本当の記憶を取り戻したからだ。』
なるほどね。
・・・
・ん?
待てよ?
それって・・
頭の上から血の気が引いていくのを感じた。
『気づいたか?
つまり、昼休みに保健室でお前が口にした質問は、「お前の記憶から失われているから出た」質問だという事だ。』
・・
何であの時、その発想に至らなかった?
僕は、あの白い光を目撃してからの事は全て覚えている。でも、それ以前に失った記憶が戻った訳ではない。
いや、「失った記憶があるかもしれない」という事自体、失念していた。
『来問よく聞け。
これ以上、今回のことを詮索するのはやめろ。
お前はバカでもわかるくらい知りたがりなところがあるから納得しないだろうが、お前のためだ。
これは、俺と音無姉さんからの忠告と思ってくれ。』
・・・どういう事だよ
『それから、よっぽどの事がない限り、今後しばらくの間、俺はお前から距離を置くことにした。
何かあってからでは遅いからな。』
『何だよ急に❗️
一方的じゃないか❗️
僕に何か原因があるなら言ってくれよ❗️
・・僕達はそんな程度の関係なのか⁉️』
『そんな事はない❗️
お前は大事な親友だ。
だからこそ、お前には今まで通りでいてほしい。
悪いが詳しい説明は出来ない、それこそがお前にとって「リスク」になるからだ。
・・・すまない。』
『嫌だ❗️僕だけ事実から置き去りにされて、何も知らないまま知ったかぶりの人生なんて❗️
まだ高校生なのに残りの人生を隠居生活しろって言われたようなもんだよ、これじゃ』
『来問ッ❗️』
『僕はッ❗️縁、お前と一緒に音無先生を助けられた事が嬉しかったんだ❗️
あんな人には理解できないような非現実的な経験をいきなり味わって、でもクラスメイトのお前と一緒にやり遂げられたことが❗️』
『・・・』
『あの時、音無先生の記憶に・・・うっ・』
急にめまいと吐き気が襲ってきた。
『うぅぅぅ❗️ぅぅぅッ・・ヴェッ・・』
『来問ッッ⁉️』




