【第二十二話】『微塵模糊』
『真〜、ご飯だよ〜』
『・・・はぁ〜い』
母さんの声で目が覚めたの、久しぶりだな。
・・・あ、制服のまま寝てた。
昨日は帰ってきた途端、気絶するように寝ちゃったんだなぁ。
しかし、夢かと思うような体験をしたのに、寝て起きたら至って平凡な1日の始まりだな。
まあ、これが当たり前の日常か。
むしろ、あれだけ非日常を味わっておきながら、いつも通りな自分が怖いくらいだ。
縁もよくあの急な非日常の展開について来れたもんだよな・・
・・・
そうだ、縁!
記憶の中とはいえ、爆発に巻き込まれたみたいな感じだった。体は大丈夫なんだろうか。
よし!今日は縁に昨日の事を聞いてみよう。
『真〜!ご飯冷めるから早く食べちゃいなさい!』
『今行く〜!』
ご飯のことをうっかり忘れてた。
・・だだだだだ・・
勢いよく階段を走り、階段の4段目から飛び降りて着地する。
だだんっ!
『よしッ!』
何がとは言わないが絶好調だ!
リビングと一体化したダイニングルームにスルッと入る。
『父さんおは・・あれ?』
『お父さんは昨日から出張!何寝ぼけてるの』
『あ、そうだった。』
他のイベントが濃すぎて忘れてた。
昨日にしても父さんの席にサングラスの・・法綱さん?が座ってたし。
『ホント、人のプライベートの記憶を邪魔するよなぁ』
『訳のわからない事言ってないで、いいから早く食べなさい!』
『へい』
椅子に座ってテレビに目をやった。
今日のお天気だ。
・・・今日は雨か。
自転車で傘はNGらしいから、バスで行くかな。
実は通学定期券があるにも関わらず自転車通学していたりする。
『今日は寄り道しないで帰ってくること!』
『へーい』
昨日は音無先生が家に連絡してくれてたのに寄り道しちゃったなぁ・・
玄関から出ると、思ったより雨が降ってる。
こりゃ傘さして行かないと駄目だな。
バス停で待っていると、本井さんが来た。
制服で。
『あれ?本井さん、今日もコスプレですか?』
『コスプレ言わない!』
期待通りの反応が来た。
『おはよう、来問くん。体の調子はどう?』
『おはようございます。体の方は元気ですよ!昨日は制服のまま布団で爆睡しちゃってましたが・・』
『そう。それなら良かった。縁くんも大丈夫かな・・』
『アイツは体力バカですから。
ただ、昨日はなんか爆発に巻き込まれたりしてましたし、どうなんだろう。
記憶の中で怪我とかしたら現実にはどう影響するんですか?』
『それについては、実は事例がないし、私は経験ないから何とも言えないの。むしろ体験したあなた達のほうがわかるんじゃない?』
『えっ!?昨日のあれは本井さんみたいな人達がしょっちゅう経験してるようなことでは無いんですか?』
『そんな訳ないでしょ!そんな人の記憶に土足で立ち入るような事、命令されても嫌よ。』
『えぇぇぇ・・』
そんな危険な任務を僕や縁みたいな素人にやらせる?普通しないよ?
本井さんの衝撃的なカミングアウトに顎が地面まで届きそうな頃合いでバスが来た。
ああ・・やっぱり雨の日ってバスに乗る人多いよなぁ・・
外から見てもわかる程にバスの中は混んでいた。
・・・ん?
バスを見ていた僕の視界の脇に人影が入った。
おかしいな、さっきまで周りに人の気配はなかったのに。
その人影は、レインコートのフードを被り、こちらを見ていた。
僕に気付かれたと思ったのか、脇道の方へ走って行った。その先は僕の家がある方向だ。
・・何だ?
『来問くん?』
『・・ああ、何でもないです。』
僕達はバスに乗った。
予想通りバスは混んでて座れないので、僕と本井さんそばの手すりや吊り革を握った。
何となく振り返り、バスの中から家の方を見たが、もう人影はなかった。
僕よりは年下に見えたけど、中学生か。
何か僕に用事でもあったんだろうか?
もしかしたら本井さんを見ていたのかも。
こんな感じだけど本井さん、学校じゃ1日で人気者になった実力者だからな。
『・・どしたの?来問くん』
『何でもないっス』
・・にしても、何だろう。
何だか知らないけど気になるな。
過去にもそんな事があったような・・
・・つッ❗️
一瞬、頭に針が刺さったような痛みが走った。
『来問くん、大丈夫?』
『大丈夫です、一瞬頭が痛くなって・・でもすぐ痛みは消えました。』
『そう?昨日の疲れが残ってるのかも。無理はしないでね。』
『はい。ありがとうございます。』
たしかに、今日は調子良くないのかもな。
昨日のこともあるし、音無先生の様子見がてら保健室にでも行って寝ようかな。




