第五十六花「小さな発見と、それぞれのこだわり」
私は染井 芳乃!
城津 芽草ちゃんと星咲 睡蓮さんと糸刃 翔ちゃんと花森 菫ちゃんと顧問の風信子 桃花先生と黒百合 リリィちゃんといっしょに太陽女学院でゲーム開発部をしています!
私と芽草ちゃんはシナリオ、睡蓮さんはプログラム、翔ちゃんはイラスト、菫ちゃんはサウンド、リリィちゃんはデバッガーで、頑張っています!
◆ 二学期・放課後・部室
「うーん……」
私はノートを前にして唸っていた。
「どうしたの?」
芽草ちゃんが顔を上げる。
「ここさ……」
ノートを見せる。
「このイベント、なんか“普通すぎる”気がして」
「普通、ね」
芽草ちゃんは少しだけ考える。
「悪くはないけど、“印象には残りにくい”かもしれないわね」
「やっぱり?」
◆
「……ちょっと見ていい?」
翔ちゃんが近づいてくる。
「うん!」
ノートをじっと見る。
「……ここ」
指で一箇所を示す。
「会話、短い」
「あ」
「感情、足りない」
「なるほど……!」
◆
「確かに」
芽草ちゃんも頷く。
「ここはもっと、キャラ同士のやり取りを増やしたほうがいいわね」
「会話で見せるってことかぁ……」
◆
「音も」
菫ちゃんがぽつりと言う。
「このシーン、静かすぎるかも」
「え?」
「少しだけ環境音入れると、雰囲気出る」
「たしかに……!」
◆
「プログラム的にも」
睡蓮さんが口を開く。
「演出のテンポを少し変えたほうがいいかもしれません」
「演出?」
「テキストの表示速度や、間の取り方です」
「そんなところまで……!」
◆
「……あと」
リリィちゃんが小さく手を挙げる。
「プレイヤー目線だと……」
「うん?」
「ここ、選択肢あったほうがいいと思います」
「おお……!」
「分岐ポイント、増やす感じ?」
「はい……!」
◆
「……すごい」
私は思わず呟く。
「一つのシーンなのに、こんなに改善できるところあるんだ」
「それぞれの視点があるからよ」
芽草ちゃんが言う。
「シナリオ、演出、音、ビジュアル、システム」
「全部が合わさって“完成”になる」
◆
「……楽しいね」
私は小さく笑う。
「うん」
「……面白い」
「奥が深いです」
「いい作品になりそう」
「やりがい、あります……!」
◆
「よし!」
私はペンを握る。
「直してみる!」
「ええ」
「……期待」
「仕上がり、楽しみです」
「音も合わせます」
「確認します……!」
◆
カリカリカリ……
さっきよりも、
少しだけ丁寧に言葉を選ぶ。
「……できた!」
「見せて」
みんなで確認する。
「……いいわね」
「……良くなった」
「自然です」
「雰囲気、出てる」
「違和感、ありません……!」
◆
「やった……!」
私は思わずガッツポーズする。
「こういう積み重ねが大事なのよ」
芽草ちゃんが微笑む。
「小さな改善が、大きな差になる」
◆
「なんかさ」
私はふと呟く。
「最初より、ちゃんと“ゲーム作ってる”感じする」
「ええ」
「……してる」
「確実に成長してます」
「音も、前より意識してる」
「バグの見方も変わりました……!」
◆
夕日が差し込む部室。
ノートには修正された文章。
画面には調整された演出。
小さな変化。
でも確実な前進。
◆
「今日はこの辺で終わりにしましょう」
「はーい!」
「……うん」
「はい」
「お疲れ様です」
「また明日」
◆
部室を出る。
空は少しずつ秋の色。
「明日も頑張ろうね」
「ええ」
◆
――小さなこだわりが、世界を変える。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




