第五十三花「のんびり放課後と、それぞれのペース」
私は染井 芳乃!
城津 芽草ちゃんと星咲 睡蓮さんと糸刃 翔ちゃんと花森 菫ちゃんと顧問の風信子 桃花先生と黒百合 リリィちゃんといっしょに太陽女学院でゲーム開発部をしています!
私と芽草ちゃんはシナリオ、睡蓮さんはプログラム、翔ちゃんはイラスト、菫ちゃんはサウンド、リリィちゃんはデバッガーで、頑張っています!
◆ 二学期・放課後・部室
「……今日は、ゆっくりね」
部室に入るなり、芽草ちゃんがそう言った。
「え?いいの?」
「ええ。毎日全力で走り続ける必要はないわ」
「ペース配分も大事よ」
「なるほど……!」
◆
「とはいえ、何もしないわけじゃないけどね」
芽草ちゃんはそう言って椅子に座る。
「軽く進めましょうか」
◆
「私は、プロットの整理を」
「じゃあ私も手伝う!」
「ええ、助かるわ」
ノートを広げて、二人で話し合う。
「この分岐さ、ちょっと急じゃない?」
「そうね、もう少し前振りが欲しいわ」
「じゃあここにイベント入れようか」
「いい案ね」
カリカリとペンの音が響く。
◆
「……」
ふと横を見ると、
翔ちゃんが静かにスケッチをしていた。
「何描いてるの?」
「……キャラ案」
「おお!」
紙をのぞき込む。
「かわいい……!」
「……まだラフ」
「でもすごいよ!」
翔ちゃんは少しだけ照れたように目をそらした。
◆
「音も、少しだけ試しますね」
菫ちゃんは小さな機材を取り出す。
「今回は分岐多いから、パターン増やす」
「大変そう……!」
「でも、楽しい」
ぽつりとそう言って、微笑む。
◆
「……異常なし」
リリィちゃんはすでに画面とにらめっこしていた。
「まだ初期段階なのに!?」
「初期だからこそ、です」
「早い段階で潰すのが大事です……!」
その真剣な顔に、思わず笑ってしまう。
◆
「進捗は順調ね」
芽草ちゃんが全体を見て言う。
「でも今日は――」
少しだけ優しく笑う。
「無理しない日」
◆
「……ねぇ」
私はふと口にする。
「こういう時間、いいね」
「ええ」
「……落ち着く」
「うん」
「好きです」
「効率も悪くないですよ」
みんな、それぞれのペースで動いている。
でも、
ちゃんと同じ方向を向いてる。
◆
「なんかさ」
私は少しだけ笑う。
「前よりチームっぽくなってる気がする」
その言葉に、
みんなが少しだけ顔を上げる。
「……そうね」
「……うん」
「前より、揃ってる」
「はい!」
「安定してます」
静かな肯定。
◆
夕日が部室に差し込む。
オレンジ色の光の中で、
それぞれが作業を続けている。
急がなくてもいい。
でも、止まらない。
そんな時間。
◆
「今日はこのくらいにしましょうか」
芽草ちゃんが言う。
「はーい!」
「……うん」
「はい」
「お疲れ様です」
「また明日」
◆
部室を出る。
少し涼しくなった風。
「二学期も、いい感じだね」
「ええ」
私は空を見上げる。
まだ、物語は続く。
ゆっくりでも、
確実に。
◆
――のんびりでも、前へ。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




