第五花「ボーイッシュ少女と四人目の部員!」
私は染井 芳乃!
太陽女学院の新入生!
今は城津 芽草ちゃんと星咲 睡蓮さんと一緒に、ゲーム開発部の部室の場所を確認するために部室棟へ来ています。
「えっと、部室棟の……ここだ!」
扉の前で立ち止まり、ゆっくりとドアを開ける。
「……わぁ〜!」
思わず声が漏れた。
中は想像していたよりずっと広くて、窓からはやわらかな光が差し込んでいる。机や椅子はまだ少ないけれど、これから何かが始まる場所としては、十分すぎるくらい素敵だった。
「中は結構広いわね」
芽草ちゃんが腕を組みながら頷く。
「えぇ、それに日当たりも良くて美しいですね」
睡蓮さんも穏やかに微笑む。
「うん!ここでゲーム作るんだ……!」
胸の奥が、わくわくでいっぱいになる。
だけど――
「……新しい部員、見つけないとだよね」
現実に戻ると、ちょっとだけ不安も顔を出した。
◆
次の日。
「う〜ん……新しい部員、なかなか見つからないよ〜……」
廊下を歩きながら、私はため息をついた。
掲示板に張り紙もしたし、声もかけてるけど、なかなかうまくいかない。
そのとき――
「……ん?」
ふと、見慣れない教室に目が留まる。
「あれ?ここ空いてたっけ……あ」
そっと中をのぞくと、教室の隅にひとりの少女がいた。
短めの髪に、どこか中性的な雰囲気。
机に向かって、なにかに集中している。
「なにか書いてる……?」
気になって、思わず声をかけてしまった。
「なにかよう?」
振り向いたその目は、少しだけ警戒しているようだった。
「あっ、えっと……気になって……」
しどろもどろになりながら答えると、
「そう」
とだけ短く返される。
でも、帰ろうとはしなかった。
「何書いてるの?」
勇気を出して聞いてみると、少女は少しだけ迷ったあと――
「ん」
と、スケッチブックを差し出してくれた。
「わぁ!!上手!!」
そこに描かれていたのは、まるで今にも動き出しそうなキャラクターの絵。
線も、表情も、すごく生きている。
「……ありがと……」
少女は少し照れくさそうに視線を逸らした。
「どうしてここで描いてるの?教室とかじゃダメなの?」
「恥ずかしいし……それに、あんまりうまくないし」
「えぇ〜!?そんなことないと思うけど……」
本当にそう思った。
この絵を見て、そう思わない人なんていないはず。
そのとき、少女がぽつりと呟いた。
「……糸刃 翔」
「え?」
「糸刃翔……私の名前」
「あ……!」
私は思わず笑顔になる。
「私は染井 芳乃!よろしくね!」
そして――勢いのまま、言葉が飛び出した。
「ねぇ!ゲーム開発部に入らない?」
「ゲーム開発部?」
翔ちゃんは少し驚いた顔をする。
「私、ゲームなんて作れないよ?」
「ううん、そうじゃなくて!」
私は首をぶんぶん振る。
「翔ちゃんの絵を、ゲームのキャラクターにしたいの!」
「私の……絵を?」
その言葉に、翔ちゃんの目が少しだけ揺れた。
「うん!絶対いいゲームになると思うの!どうかな?」
少しの沈黙。
翔ちゃんはスケッチブックを見つめて――
それから、ゆっくりと顔を上げた。
◆
数分後。
部室にて。
「新しく、ゲーム開発部の部員になった、糸刃 翔ちゃんです!」
私は元気よく紹介した。
「い、糸刃翔……です……」
「城津 芽草よ」
「星咲 睡蓮です」
「よ、よろしく……」
少し緊張している翔ちゃんに、二人は優しく微笑む。
「翔ちゃんの絵って、とっても上手なんだ!」
「まあ」
「それは見てみたいわね」
「こ、これです……」
翔ちゃんが差し出したスケッチブックを見て――
「まあ、お上手」
「えぇ、ひと目見ただけでわかるわ」
二人ともすぐにその実力を認めた。
「うんうん!やっぱりそうだよね!」
嬉しくて、つい声が弾む。
そのとき――
ガラッ。
部室の扉が開いた。
「あら、そろったみたいね」
「先生!」
私は勢いよく振り返る。
「これで、いけますか?」
少しだけ緊張しながら聞くと、先生はにっこり笑った。
「えぇ、もちろん。あとは顧問がいれば、大会に出るときに申請ができるわよ」
「っ……はい!」
あと一歩。
でも、確実に前に進んでいる。
「顧問を見つけるついでに、道具も準備しなきゃね」
「それでしたら、こちらで用意しましょう」
「いいの?ありがとう!」
「お友だちのためですもの」
その言葉に、翔ちゃんがはっとしたように顔を上げる。
「もちろんあなたも、お友だちですよ」
「ッ……!!」
一瞬、驚いたような顔。
そして――ほんの少しだけ、嬉しそうに笑った。
「ふふっ」
芽草ちゃんが優しく笑う。
私はぐっと拳を握った。
「うん!みんなで育てよう!」
「そして大会に!」
「「「お〜〜〜!!!」」」
こうして、ゲーム開発部は四人になった。
まだ小さな、小さな部活。
でも――
ここから、きっと大きな何かが生まれる。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




