第四十一花「コードの隙間の、いつもの日常」
私は染井 芳乃!
城津 芽草ちゃんと星咲 睡蓮さんと糸刃 翔ちゃんと花森 菫ちゃんと顧問の風信子 桃花先生と黒百合 リリィちゃんといっしょに太陽女学院でゲーム開発部をしています!
◆ 太陽女学院・部室棟 ゲーム開発部部室(放課後)
「……完成後って、静かだね」
私は椅子に座りながら、ぽつりと呟いた。
机の上には、ついこの前まで熱を持っていたノートやメモが整然と並んでいる。
でも今は、どこか落ち着いた空気だった。
「燃え尽き症候群?」
城津 芽草ちゃんが軽く笑う。
「そんな大げさなものじゃないよ!」
「ふふっ、でも少し分かるわ」
芽草ちゃんはノートをぱらぱらとめくる。
「次の目標が決まるまでの空白って、少しだけ落ち着かないのよね」
「……空白」
糸刃 翔ちゃんが小さく繰り返す。
机の隅で、黙々とスケッチをしていた。
「でも、悪くない」
「え?」
「……静か」
それだけ言って、またペンを走らせる。
◆
「みんな、暇そうね」
部室の入口から声。
風信子 桃花先生が顔を出した。
「先生!」
「今日は珍しく平和ね」
「完成したばっかりなので……」
「なるほどね」
先生は部室を見回して、軽く笑う。
「こういう時間も大事よ」
◆
「ねぇねぇ!」
突然、黒百合 リリィちゃんが顔を上げた。
「ちょっとだけ、提案があるんですけど……!」
「なに?」
「このゲームのログ、もう少し分析してもいいですか?」
「え?」
「プレイヤーの選択データとか……」
「まだやるの!?」
「やります」
即答だった。
「……すごい熱意」
芽草ちゃんが感心したように頷く。
「デバッグ魂ね」
◆
「私はこっち」
花森 菫ちゃんはヘッドホンをつけていた。
「新しい音、試してる」
「もう次の曲作ってるの!?」
「……癖」
短く言って、また集中に戻る。
◆
「翔ちゃんは?」
「……描く」
机の上には、また新しいキャラクターデザイン。
「もう次のゲームの?」
「……うん」
「早いねぇ!」
◆
「ねぇ、芳乃」
芽草ちゃんが私を見る。
「次、どうするの?」
「次?」
「大会、じゃないでしょ?」
「うん……」
私は少し考える。
「まだ決めてないけど……」
「なんか、もっと自由に作りたいかも」
「自由?」
「うん。ルールとかじゃなくて、思いついたまま」
「いいんじゃない?」
芽草ちゃんが静かに言う。
「それが一番、私たちらしいわ」
◆
「いいこと言うわね」
先生が笑う。
「じゃあ、次は“実験”ね」
「実験?」
「えぇ。制限なしの創作」
◆
部室が少しだけざわつく。
でも、そのざわつきは嫌じゃなかった。
むしろ――
「わくわくする」
私はそう思った。
◆ 夕方
窓から差し込む光が、少しずつ橙色に変わっていく。
「今日はこのへんで終わりにしましょうか」
先生が言う。
「はーい!」
「……また明日」
「ログまとめておきますね」
「新しい曲、考える」
「次のキャラ案、描く」
みんな、それぞれ動き出す。
止まっていたわけじゃない。
ただ少し、休んでいただけ。
◆
帰り道。
校舎の影が長く伸びている。
「なんかさ」
私は芽草ちゃんに言う。
「ずっと作ってる気がするね」
「そうね」
「でも、嫌じゃない」
「うん」
芽草ちゃんは空を見上げる。
「それが、好きってことよ」
◆
夕焼けの中で、
私たちは歩く。
まだ名前のない次のゲームへ向かって。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




