第四十花「夏を結ぶコード」
私は染井 芳乃!
城津 芽草ちゃんと星咲 睡蓮さんと糸刃 翔ちゃんと花森 菫ちゃんと顧問の風信子 桃花先生と黒百合 リリィちゃんといっしょに太陽女学院でゲーム開発部をしています!
◆ 太陽女学院・部室棟 ゲーム開発部部室(放課後)
「――これで、最後の調整です」
星咲 睡蓮さんが静かに言った。
画面の中では、夕焼けの海辺に立つ少女がこちらを見ている。
“終わらない夏”をテーマにした短編ゲーム。
その最終ビルドが、今まさに完成しようとしていた。
「バグチェック、最終段階入ります」
黒百合 リリィちゃんが真剣な目でログを追う。
「……このルート、問題なし」
「こっちも大丈夫」
糸刃 翔ちゃんが短く答える。
イラストデータを最終確認しているその横顔は、いつも通り静かだった。
「サウンドも最終調整完了です……!」
花森 菫ちゃんがヘッドホンを外す。
「夕暮れの波音、ちゃんと入ってます」
「いい感じね」
城津 芽草ちゃんが軽く頷いた。
私は息を吸う。
「じゃあ――」
「ビルド、出そう!」
◆ コンパイル
キーボードの音が一斉に重なる。
カタカタカタ……
静かな部室に響く、ひとつのリズム。
「エラーなし」
「成功」
「……動いた」
画面に、ゲームタイトルが浮かび上がる。
――“終わらない夏”
その文字がゆっくりと光った。
◆ プレイテスト
「じゃあ、みんなでやってみようか」
最初にマウスを握ったのは私だった。
クリック。
画面が動き出す。
波の音。
夕焼けの空。
「……きれい」
芽草ちゃんが小さく呟く。
「ちゃんと、形になってる」
リリィちゃんが画面を見つめる。
「バグ……なし」
「……動いてる」
翔ちゃんも少しだけ目を細めた。
菫ちゃんは音に耳を澄ませている。
「……この波音、いい」
「うん、すごくいい」
画面の中の少女が、ゆっくりと歩く。
プレイヤーの選択で、未来が少しずつ変わっていく。
「……これが、私たちのゲーム」
私は小さく呟いた。
◆
「いい出来ね」
部室の入口から声。
風信子 桃花先生が立っていた。
「先生!」
「完成したのね」
「はい!」
「まだ最終調整は必要だけど……」
「十分よ」
先生は優しく微笑む。
「ちゃんと“作品”になってる」
その言葉が、少しだけ胸に響いた。
◆ 夜の部室
外はすでに暗い。
窓の外に、夜の空が広がっている。
「……終わったんだね」
誰かが言った。
「うん」
「でも、次がある」
芽草ちゃんが続ける。
「このゲームは、始まりにすぎないわ」
「……次?」
リリィちゃんが首をかしげる。
「うん」
私は笑う。
「もっと大きいゲーム作ろう」
「大会でもっと上を目指して」
「うん」
「……やる」
「私も」
「もちろん」
「わ、私も……!」
◆
静かな部室。
完成したゲームの画面。
その向こうに――
まだ見ぬ物語が続いている。
◆
「終わらない夏」は、ゲームの中だけじゃない。
私たちの時間も、
まだまだ続いていく。
◆
そして――
新しい季節が、すぐそこまで来ていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




