第三花「学食と新たな部員?」
私は、染井 芳乃。
今は、城津 芽草ちゃんと一緒に――
ゲーム開発部の部員を探して、校内をあちこち見て回っているところ。
「新しい部員、なかなか集まらないわね」
廊下を歩きながら、芽草ちゃんがぽつりと呟く。
「うん……みんなもう、部活に入ってたからね……」
勧誘しても、「もう決まってるから」って断られることが多い。
少しずつ焦りも出てきていた。
「でも、諦めなければいつかは見つかるわ」
穏やかな声。
「うん!そうだよね!張り紙もしてるし!」
気持ちを切り替えるように、私は笑ってみせた。
そのとき。
「そういえば、芳乃ちゃんっていつも太陽光ゼリーだったわよね?」
「え?うん!そうだよ」
お昼はだいたいそれで済ませている。
手軽でエネルギーも取れるし、便利なのだ。
「たまには、学食も食べてみない?」
芽草ちゃんがこちらを見る。
「今日、お弁当忘れてきたんでしょう?」
「うん!そうする!」
即答だった。
「えぇ、じゃあ、行きましょうか」
私たちは、そのまま学食堂へと向かった。
扉を開けた瞬間――
「わぁ〜!ここが、学食!」
思わず声が漏れる。
広々とした空間に、たくさんの生徒たち。
そして、ほんのりと甘くてあたたかい香りが漂っていた。
「えぇ、ここではいろいろな太陽光食品があるわ」
「ホントだ〜!これがメニュー?どれにしようかな〜」
壁に並ぶメニュー表には、色とりどりの料理が並んでいる。
見た目も鮮やかで、まるで花畑みたいだった。
緑人である私たちは、太陽の光を養分として取り込んで生きている。
日光からでも十分だけど――口から摂取する方が、より大きなエネルギーになる。
「お嬢ちゃん、なににする?」
カウンターの向こうから、元気なおばちゃんの声。
「あ、はい!」
慌ててメニューを見直す。
「こ、この太陽光カレー!」
「はいよ!」
――次の瞬間。
「おまたせ!」
「早っ!?」
思わず目を丸くする。
「お嬢ちゃんは何にする?」
「じゃあ、同じ物を」
芽草ちゃんも落ち着いた様子で注文する。
「はいよ、おまたせ!」
やっぱり早い。
「それじゃあ、行きましょう」
「あ、うん!」
私たちは、空いている席を探して腰を下ろした。
「それじゃあ、いただきましょうか」
「うん!」
「「いただきます!」」
ひと口食べた瞬間――
「んん!!美味しい!」
思わず声が出た。
体の中に、じんわりとエネルギーが広がっていく感覚。
まるで、太陽をそのまま食べているみたいだった。
「でしょう?」
芽草ちゃんが少しだけ得意げに微笑む。
「太陽光エネルギーに、味と色と匂いをつけた物よ。最近ではゼリーだけじゃなくて、こういう食べ物もあるの」
「へぇ〜!そうなんだ!」
感動しながら、もう一口。
そのときだった。
「すみません、お隣、よろしいでしょうか?」
透き通るような、美しい声。
「あ、はい!」
顔を上げると――そこには、ひときわ目を引く少女が立っていた。
淡く輝くような髪。
どこか静かで、凛とした雰囲気。
「ありがとうございます。私、“星咲 睡蓮”と言います」
「え、あ、染井 芳乃です!」
少し慌てながら名乗る。
「城津 芽草よ」
芽草ちゃんも落ち着いた様子で続けた。
「芳乃さんと芽草さんですね、覚えました」
優雅に微笑む睡蓮さん。
「あ、もしかして――ゲーム開発部の方ですか?」
その言葉に、思わず身を乗り出す。
「知ってるんですか?」
「えぇ。廃部寸前だった部を再建しようとしている、と」
どうやら、噂になっているらしい。
「部員は、まだ探してますか?」
その一言に、胸が高鳴る。
「あら、ゲーム開発部に興味が?」
芽草ちゃんが静かに問いかける。
「えぇ。昔からタイピングが得意で……でも、この学院じゃその能力が使えなくて」
少しだけ寂しそうな表情。
その瞬間――
「だったら!うちの部員になりなよ!」
気づけば、声が出ていた。
「その能力、絶対使えるよ!」
言葉が止まらない。
「あ、もちろん……そっちが決めていいよ」
最後に少しだけ弱気になる。
一瞬の沈黙。
そして――
「まぁ、良いのですか?」
睡蓮さんが、ふわりと微笑んだ。
「ぜひ、入部させてください」
「……っ!!」
胸の奥が、ぎゅっと熱くなる。
「うん!」
思いきりうなずいた。
「ふふっ、決まりみたいね」
芽草ちゃんが、どこか嬉しそうに言う。
「うん!これであと一人!」
ゲーム開発部、現在三人。
あと一人で――
私たちの“部”は、動き出す。
その瞬間。
私の髪に咲いた桜が、さらに大きく花開いた気がした。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




