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Bloom Code ―太陽女学院ゲーム開発部―  作者: れんP
一学期編

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第二十三花「それはきっと、幸せの呪い」



 


私は染井 芳乃(ソメイヨシノ)

城津 芽草(シロツメクサ)ちゃんと星咲 睡蓮(ホシザキスイレン)さんと糸刃 翔(イトバ ショウ)ちゃんと花森 菫(ハナモリ すみれ)ちゃんと顧問の風信子 桃花(ヒヤシンス ももか)先生といっしょに太陽女学院でゲーム開発部をしています!


 


 


◆ 太陽女学院・職員室


 


「ん?」


 


職員室に入ると、先生がため息をついていた。


 


 


「はぁ……」


 


 


「先生?どうしたんです?」


 


 


「あぁ、芳乃さん……いやね、不登校の子をいくら説得してもこないの」


 


 


「……そうなんだ」


 


 


先生の表情は、いつもの穏やかさより少しだけ疲れて見えた。


 


 


「だったら、その子を説得するよ!」


 


 


「え?」


 


 


先生が驚いたように顔を上げる。


 


 


「芳乃さんが?」


 


 


「うん!」


 


 


「……まぁいいわ、無理でしょうけど」


 


 


先生は小さく息を吐きながら、住所を書いた紙を渡した。


 


 


「葉脈町の住宅街よ」


 


 


「ありがとう!行ってくるね!」


 


 


 


◆ 葉脈町・住宅街


 


「えっと、ここかな?」


 


 


地図を見ながら歩くと、小さな家の前にたどり着いた。


 


 


「ピンポーン」


 


 


……。


 


 


「……あれ?」


 


 


返事がない。


 


 


「入るよ〜?」


 


 


ドアは、少しだけ開いていた。


 


 


「……2階かな」


 


 


階段を上がると、静かな空気が広がっている。


 


 


「コンコンッ」


 


 


「入るよ〜?」


 


 


ガチャ。


 


 


「……あれ?」


 


 


薄暗い部屋。


 


 


そこに――いた。


 


 


 


「…………だれ?」


 


 


黒髪の少女が、こちらを見ていた。


 


 


その瞳は、どこか怯えているようで。


 


 


 


「あ、いた……ねぇ、どうしたの?」


 


 


 


「近づかないで!!」


 


 


 


鋭い声が部屋に響く。


 


 


 


「……っ」


 


 


 


「呪いが……呪いが移るから……」


 


 


 


「え?」


 


 


 


少女は、震える手で自分の腕を抱いた。


 


 


 


「私は呪われた子なの……」


 


 


 


「だから、近づかないで……」


 


 


 


その言葉は、悲鳴のようだった。


 


 


 


「……むぅ〜……」


 


 


私は少しだけ考えて――


 


 


「行くよ!」


 


 


 


「え!?ちょ!?」


 


 


少女の制止を無視して、私は手を伸ばした。


 


 


 


◆ 遊園地


 


「さぁ!遊ぼ!」


 


 


気づけば、私は少女の手を引いていた。


 


 


「た、楽しそうな場所……?」


 


 


「そう!遊園地!!」


 


 


ジェットコースターの音。


 


 


笑い声。


 


 


光。


 


 


全部が混ざった場所。


 


 


 


「ねぇ、名前は?」


 


 


 


「……黒百合 リリィ(クロユリ りりぃ)……です」


 


 


 


「リリィちゃん!」


 


 


 


「わっ!?」


 


 


手を引かれて、リリィちゃんは小さくつまずいた。


 


 


 


「だ、大丈夫!?」


 


 


 


「わ、私は……慣れてないだけで……」


 


 


 



 


そのあとも――


 


 


回転する乗り物に乗って、


 


 


「きゃあああああ!!」


 


 


売店でアイスを食べて、


 


 


「冷たいっ……!」


 


 


ゲームコーナーで遊んで、


 


 


「これ難しい!」


 


 


何度も笑って、転びそうになって。


 


 


 


そのたびに、私は笑った。


 


 


 


「ねぇ、」


 


 


 


ふと、リリィちゃんが言う。


 


 


 


「どうして、不幸なことばかり起きてるのに、そんなに笑ってられるの?」


 


 


 


「え?」


 


 


 


私は少しだけ考えて――


 


 


「楽しいから!」


 


 


 


即答した。


 


 


 


「私の、私の呪いのせいなのに!!」


 


 


 


リリィちゃんの声が震える。


 


 


 


「……」


 


 


 


一瞬、風が止まった気がした。


 


 


 


でも私は――


 


 


にこっと笑った。


 


 


 


「だったらそれはきっと、“幸せの呪い”だよ♪」


 


 


 


「……幸せの、呪い……」


 


 


 


リリィちゃんが、小さく繰り返す。


 


 


 


「うん!」


 


 


 


私は強く頷いた。


 


 


 


「楽しいことがいっぱい起きるなら、それは呪いじゃなくて、幸せだよ!」


 


 


 


「……」


 


 


 


リリィちゃんは、何も言わない。


 


 


ただ、手だけは――まだ離していなかった。


黒百合 リリィの手を握ったまま、私は遊園地の出口へ向かっていた。


 


「もう少しで夕方だね!」


 


「……はい」


 


リリィちゃんは小さく頷いたまま、少しだけ落ち着いた表情をしていた。


 


そのときだった。


 


 


「おーい」


 


 


聞き慣れない、嫌な笑い声。


 


 


「……あれ〜、黒百合じゃん」


 


 


振り返ると、数人の女子生徒が立っていた。


 


ガラの悪そうな雰囲気。


 


 


「こんなどこで何やってんの?」


 


 


「ひっ……!?」


 


 


リリィちゃんの手が強く震える。


 


 


「なにかよう?」


 


 


私は一歩前に出た。


 


 


「誰?もしかして黒百合の友達?できたんだw」


 


 


「……」


 


 


リリィちゃんは何も言えないまま俯いている。


 


 


「なんだよ、なんか言ってみろよ」


 


 


その言葉に――胸の奥が熱くなった。


 


 


「ちょっと!!」


 


 


私は声を上げた。


 


 


「リリィが困ってるでしょ!!」


 


 


一瞬、空気が止まる。


 


 


「アァン!!何だよ貴様!!」


 


 


女子生徒が一歩踏み出す。


 


 


「お前には関係ねぇだろ、それとも何だ?やんのか?」


 


 


「……」


 


 


私は、リリィちゃんの前に立つ。


 


 


そして、はっきりと言った。


 


 


「“友達”をいじめるやつは許さない!!!」


 


 


その瞬間――


 


 


私の足元から風が吹き上がった。


 


 


つむじ風。


 


そして、桜の花びら。


 


 


それは私の周りを包み込み、光のように舞い上がる。


 


 


「これは!?」「花詞!?」「マジかよ……!」


 


 


女子生徒たちが後ずさる。


 


 


「チッ!!行くぞ!」


 


 


舌打ちとともに、彼女たちは去っていった。


 


 


 


静けさが戻る。


 


 


「……」


 


 


リリィちゃんは、ぽつりと呟いた。


 


 


「……あの『花詞』は……『純潔』……」


 


 


「じゅんけつ?」


 


 


私は首をかしげる。


 


 


「そうか……だから私の『花詞』『呪い』も……」


 


 


「ねぇねぇ!」


 


 


私は気になって割り込む。


 


 


「純潔って何?」


 


 


「え、あ、いえ!」


 


 


リリィちゃんは慌てて顔を上げた。


 


 


「わ、私、昔から人の観察が好きで……その、花詞の種類がわかったりして、それで……」


 


 


「すごーい!」


 


 


「え!?」


 


 


リリィちゃんの目が丸くなる。


 


 


「そんなの分かるの!?すごいじゃん!!」


 


 


「……っ」


 


 


リリィちゃんは一瞬、言葉を失ったあと――


 


ほんの少しだけ、笑った気がした。


 


 


「ねぇ!」


 


 


私は勢いよく言った。


 


 


「一緒にゲーム開発部やらない?」


 


 


「え……?」


 


 


「みんなも喜ぶよ!」


 


 


「わ、私が……いいんでしょうか」


 


 


リリィちゃんの声は、まだ少し震えている。


 


 


でも、その瞳はさっきと違っていた。


 


 


少しだけ――光があった。


 


 


「うん!」


 


 


私は迷わず頷いた。


 


 


「この人といれば……」


 


 


リリィちゃんは小さく息を吸って――


 


 


「……はい!」


 


 


そう答えた。


 


 


その瞬間、風がやさしく吹いた気がした。


 


 


まるで、誰かが背中を押したみたいに。


 


 


こうして――


 


黒百合 リリィは、ゲーム開発部の新しい仲間になった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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