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嫁が優秀な子供ほしさに義理の祖父と托卵を企てやがった! 俺は嫁一族と縁を切り、托卵された子供を育てる決意を固める。  作者: panpan


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道種 千鶴⑥

千鶴視点です。


 娼婦に身を堕としてから数年後……。

私は今、警察署で取り調べを受けている……被害者として。

そして加害者の名は染谷 佐紀……罪状は詐欺罪。

そう……彼女は大河の叔母でもなんでもない……ただのクズな詐欺師だった。

私から金を搾り取るために……大河の情報を組み込んだAIを使って私を騙し続けていたんだ。

私がずっと大河だと思って話し合っていたのは……実在しないただのAIだった。

警察から最初聞かされた時には……本当に何を言っているのかわからなかった。

話し方も同じだし……私達の思い出だってたくさん知っていたし……何よりも以前と変わらぬ愛を私にささやき続けてくれた。

そんな彼がAIのはずがない……そう思っていた。

だけど……警察が直接大河に話を聞きに行った映像を見せてもらうと……大河は私と連絡なんて取り合っていないし、事故のことも知らないとはっきり証言していた。

ネット犯罪に詳しい捜査員とやらがネットに疎い私にもわかりやすいように大河だと思っていたのがAIであることを説明してくれたし……染谷自身が私からお金をだまし取っていたことを認めた。

次々と浮かび上がる証拠と証言……私が騙されていたことはもはや疑いようがない事実……。

そしてなぜ……染谷の犯行がバレたかと言うと……こういうことらしい。


※※※


 警察の話によると……染谷は私のほかにカモとなる女を探していたらしい。

あいつは私から巻き上げたお金を全てギャンブルにつぎ込んでいたらしいが……私から得られるお金では満足できなくなってきたとか。

だから新たなカモを求めて……私のように孤立している女を探し回っていた。


※※※


 そして見つけたのが皮肉にも私と同じ道種家の女……霧子きりこだった。

なんでも医者をしている夫から浮気と托卵を理由に離婚を突き付けられ……深く傷ついた自分に優しくしてくれる男とマッチングアプリで知り合い、子供を置いて男と駆け落ちしたそうだ。

だがまもなく……男が妻子持ちであることが判明し、霧子は男の妻から慰謝料を請求された。

霧子は貯金をすべて失い、さらには足りない分を借金することになった。

その上、男は妻とやり直すことを選び……霧子はあっけなく捨てられた。

霧子はひどく傷つき……同時に元夫への想いが蘇った。

元夫……野口とかなんとか聞いたけど……とにかく霧子は元夫に復縁を求めたが……冷たくあしらわれたそうだ。

何度会いに行っても野口は霧子を受け入れず……ついにはストーカーとして警察に突き出されたらしい。

当然だ……夫以外の男を愛した時点で霧子に復縁を求める資格はない。

霧子は出所後……野口にまた会いに行ったらしいが、すでに元夫は勤めていた病院も住んでいた家も変えて行方がわからなくなっていた。

それでも野口との復縁を諦めきれず……ネットで野口に関する情報を求め、そこに染谷が付け入ったのだ。

染谷は霧子もATMにしようとAIに野口の情報を入力して霧子に紹介し……私の時と同様の事故話で霧子から金を撒き上げた。

だけどネットに晒されていた大河とは違い……野口に関する情報が十分に入力されていなかったらしく……霧子はラインの相手が野口であるか疑い出し、警察に相談した結果……染谷の犯行が露見したのだった。

騙された期間自体は1年にも満たないが……職も貯金もない中で野口へ金を貢ごうと闇金から借金してしまったらしく……染谷が逮捕されてからしばらくして行方不明になった。

まあ長々と話したが……正直、霧子なんてどうでもいい。


※※※


 それよりも私は……染谷に騙されていたと言う事実を受け入れることができなかった。

だって私は……数年もの間ずっと大河のために頑張って来たんだよ?

汚らしい男達に身を捧げ……得たお金のほとんどを大河に貢いでいた。

つらかった……苦しかった……それでも私は耐えた。

愛する大河のためだと思えば……どんな地獄でも我慢できた。

いつかもう1度……大河と人生をやり直す未来を信じて……。

それが全部……嘘だった?

そんなの認められるわけがない……。

だったらこの数年間はなんだったの?

なんのために私はあの地獄にいたの?

大河のために頑張ってきたこの数年が……染谷のギャンブル代になっていただけなんて……信じたくない!

1から積み上げてきた愛が……信じていた未来が……ただの幻だったなんて……そんなの信じられる訳がない!!

でも……どれだけ私が事実を否定しようが……現実は無情に進んでいく……。


-------------------------------------


 後日開かれた裁判にて……染谷には有罪判決が下り、数年の時を刑務所の中で過ごすことになった。

染谷のことは許せないが……それ以上にあんなAIに数年も騙されていた自分自身が許せなかった。

今更だけど……よくよく思い返してみれば、疑わしい部分はいくつかあった。

だけど大河との未来をもう1度見られると信じて曇っていた私の目には……何も映らなかった。

もしも霧子が気付いていなければ……私は一生を染谷に捧げていただろう。


-------------------------------------


 それでも私の人生が再び絶望のどん底に沈んだことに変わりはない。

大河を”2度”も失った私には……もう生きていく気力すら湧いてこない。

誰かを頼りたくとも……私の周りには誰もいない。

父はこれまでの功績が認められてアメリカの法律事務所へと移り……母は塀の中……。

忌まわしいあの爺は道種学園を放火して死んだとニュースで聞いた。

私と同じく爺の苗床になっていた道種家の女達は……爺からやっかいな性病をうつされたらしく……そのほとんどが重症化し、日常生活に大きな支障が出ている。

中には心臓や肺の機能が低下して死んだ女もいるとか……。

数少ない男の方も爺と苗床を共有していたこともあってか……漏れなく全員同じ性病にかかり、7割近くの男達が精巣機能を失ったと聞いた。

世間では未だに道種家を叩く人間が後を絶たず、【令和のハプスブルク家】と呼んで蔑んでいる。


 私は幸か不幸か……性病はうつされていなかった。

一族の中で健康状態を維持できているのはおそらく私と音瑚くらいだろう……。

だが私は子供を生めない身で……音瑚は大河の元にいる。

血こそ絶えないが……もはや道種家は終わりだ。

全く皮肉なものね……。

一族の繁栄と日本の未来のために種を振りまいていた爺が……結果的に自らの手で道種家を崩壊させてしまったのだから……。

本当……つくづく愚かな爺だ。

そして……そんな爺を妄信していた私自身も……救いようのないバカだ。


-------------------------------------


 裁判が終わり……被害者として証言する役割を終えた私は裁判所のソファに腰かけていた。


 ”これからどうすれば良い?”


 私は何度も自分に問いかけたが……答えは返って来ない。

いやむしろ……自分自身から問われる。


 ”これ以上、生きている意味があるの?”


 私は答えることができなかった……答えられるわけがない。

だって……私にはもう何も残っていないもの……。

生きていたって……その先には誰も待っていないし……何があるわけでもない。

そんな人生……あっても仕方ないんじゃない?

そう思うと……生きていること自体が馬鹿馬鹿しくなってくる。

あぁ……そうだ……私には生き続ける意味なんてないじゃない……。

大河を失ったあの時から……私の人生は終わっているんだ。

なのになんで……私は今もなお生きているんだろう?


「……バカみたい」


 目頭が熱くなり……視界が歪む。

目から流れる涙が頬を伝わる……まるで私の中に残っていた希望が涙と共に流れていくみたいだ……。

そして流れていった涙は……冷たい床に落ちて弾ける。

なんだか私の未来を予見しているようだ……。

そうだ……こんな無意味な人生なんて終わらせよう……。

頭の中が絶望一色に染まり……この無意味な人生にピリオドを打つ決意を固めたその時……。


「あの……ちょっと良いですか?」


 頭の上から不意に声を掛けられ、反射的に顔を上げると……悲し気な表情を浮かべた女性が私を見下ろしていた。


「雀ちゃん?」


「お久しぶりです……先生」


 私の目の前に立っていたのは……私のかつての教え子である天野あまの すずめだった。

卒業後も何度か連絡を取り合っていたし……顔を合わせることもあったけど……大河に爺との関係がバレたあの日以降はパッタリ……爺を刺してからはスマホ自体を解約して存在そのものが頭から抜けていた。。


「何か……用?」


 私は慌てて涙を拭き、できる限り平静を装った。


「突然すみません……。

これからお時間いただけますか?

先生にお話ししたいことがあるんです」


「話?」


「はい……ちょうどそこにコーヒーがおいしいって評判のカフェがあるので、そこに行きませんか?


 話なんて聞く理由はないけれど……断る理由もない。

私は流されるがまま……彼女と裁判所を後にした。


-------------------------------------


「それで……私に話ってなに?

そもそもどうして裁判所にあなたがいたの?」


 雀ちゃんは気持ちを落ち着かせるかのようにテーブルに運ばれたばかりのホットコーヒーを一口すすり、ゆっくりとカップを置いて私にこう返した。


「SNSで知ったんです。

先生が詐欺師に騙されて裁判が開かれているって……。

”ざまぁ”とか”自業自得”とか……先生へのコメントは非難一色でしたけど……」


「そう……」


 別にSNSで叩かれていることに関しては別に驚きはなかった。


「SNSを見てるんなら知ってるでしょう?

私が何をしたかくらい……」


「……知ってます。

先生が血の繋がったおじいさんと子供を作ったこととか色々……」


「そんな私に……一体なんの話があるの?」


「単刀直入に言います。

先生……もう1度、先生をしてもらえませんか?」


「えっ?」


「実は今年……私の母が小学生専門の学習塾を開いたんです。

母と叔母が先生をやっている小さな塾なんですけど……結構評判は良いんです。

だから生徒の数が予想以上に多くなっちゃって……2人だけでは手が回りきれなくなったんです」


「だから私に手伝えって言うの?

冗談はやめてよ……」


「冗談でこんな重大なことは頼みません。

先生なら……生徒達を支えることができると信じているんです」


「そもそも今の私は教員免許をはく奪されて……教師じゃないの。

ブランクだってあるし……私には生徒に勉強を教えることなんてできない」


「免許がなくたって……勉強を教えることはできます!

先生も生徒達と1から勉強しなおせばもう1度……」


「簡単に言わないでよ!!」


 思わず荒げた声出してしまった……。

周囲の客や店員が何事かと私達の様子をおそるおそる伺っているみたいだけど……今の私の視界には入らなかった。


「私はね……何もかも失ったの!

家族も……家も……友達も……教師としての立場も……女としての価値まで……。

その上、詐欺師のくだらない嘘に騙されて……長い時間と少ない貯金まで失った。

ネットでも未だに”汚物”だの”クズ女”だの……私のことを叩いている人であふれているわ。

わかる?……私の人生もう終わってるの!!

どうにもならないところまで堕ちちゃったの!!」


 雀ちゃんの誘いを……言葉を……私は徹底的に拒否した。

でも彼女は……優し気な目で私をなだめるかのようにこう言った。


「生きている限り人生は終わらない。

どんなに今がつらくても……私はあなたに立ち上がってほしい。

将来のために頑張る生徒達を支えられる教師になりたいって言う、あなたの素晴らしい夢を……同じ教師として叶えてほしい」


「!!!」


「覚えていますか?

先生が私に言ってくれた言葉です」


 確かに……今、雀ちゃんが言った言葉は私が彼女自身にかけた言葉だ。


これで終わらせたかったのですが長くなったので区切ります。

後半はこのあとすぐに書き上げます。

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