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嫁が優秀な子供ほしさに義理の祖父と托卵を企てやがった! 俺は嫁一族と縁を切り、托卵された子供を育てる決意を固める。  作者: panpan


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道種 熊次郎⑥

ちょっと熊次郎視点を加えます。


 なっなんだ……体中が痛い……燃えるように痛い。

なのに体が全く動かない……声も出ない。

ワシは確か……学園を道連れにして黄泉の国へと旅立ったはず……。


「……」


 夢見心地のような感覚が……痛みによって少し戻って来た。

同時にぼやけていた視界も鮮明になっていく……。


「……」


 暗い……とても薄暗い所だ。

一瞬、地獄というワードが頭を過ぎったが……暗闇の中をうっすらと照らす小難しいなんらかの機械が目に入った。

それはよく見ると……病院で良く見る心電図だ。

どういうことだ?

一体何が……。


「目が覚めたようだな」


「!!!」


 闇の世界に響く聞きなれぬ男の声……。

ヌゥっとどこからともなく現れたのは見慣れぬ40代くらいの白衣を着た優男。


「俺が誰かって……目だな。

俺は野口っていうしがない医者だ。

まあ……あんたに嫁を寝取られて托卵された間抜けだとでも言えば理解できるか?」


 ワシの心を見透かしたかのような口ぶりで野口と名乗る男はペラペラをワシに語り掛けてきた。

ワシに嫁を寝取られて托卵された?

こいつも大河同様の愚か者か?

いやそれより……ワシはどうなったんだ?

ワシは……あの学園で死んだはず……なぜこんなところにいる?


「残念だったな爺さん……あんたはまだ死んでねぇよ。

まあ……その状態で生きているって言えるかどうか微妙だがな……。


 なっ何!?


「あんた……自分が理事長していた学校に火を付けたんだってな。

どういう意図があったのか知らねぇし興味もねぇが……とにかくあんたはレスキュー隊の手でどうにか俺が務めている病院に運ばれてきたんだよ。

最も……運ばれてきた時点で生存はほぼ絶望的だったし……執刀した俺も内心無駄骨に終わると思っていたよ。

まさかあの状態で生き延びるとは……長い間医者をやってたが、あんたほどしぶとい人間は初めて見た。

まあ生き延びたとは言っても……体は一切動かせないし、口もきけないし、飯も食えねぇ……色々リスクは背負っているがな」


 否定したい気持ちでいっぱいだったが……実際に声は出ないし体も動かない。

こいつの言っていることは……事実だと言うのか!?

そんな馬鹿な!!


「それとな……あの火事で負傷したのはあんただけだ。

教師も生徒も火にのまれる前に避難してケガ1つしてねぇし、建物自体もそんなに被害はなかったみたいだぜ?」


 なっなんだと!?

そんな馬鹿な……あれだけガソリンを撒いたんだぞ!?

少なくとも半数以上の人間は死んでいるはずだ!!

デタラメに決まっている!!

それが事実であれば……ワシはとんだピエロではないか!!


「そうそう……言いそびれるところだったが、爺さんは世間的には死んだことになっているぜ?

爺さんは死んだって……俺が死亡届を出したからな」


 なっ何!?


「こう見えて意外と顔が広いんだよ俺は……。

普通はこんな偽造すぐにバレちまうだろうが……その辺は協力者達が上手くカバーしてくれる。

そいつらも俺同様、あんたに人生を台無しにされた恨みがあるからな……あんたに復讐できるのなら逮捕されるリスクなんて怖くねぇってよ」


 ふっ復讐だと!?

一体何をする気だ!?


「ククク……そんな怯えた目をするなよ。

何も取って食おうってんじゃない。

ただ……ちょっとした実験に付き合ってほしいだけだ」


 野口はそういうと……懐からケースを取り出し、そこからさらに注射器を取り出した。


「こいつは研究員をしている俺のダチが開発している新薬だ。

上手くいけば、日本の医学を1歩進めることができるかもしれない。

だがいかんせん……データが足りないんだ。

だからどんな副作用があるか……どれほどの効果を発揮するか……ほとんどわからない。

そこであんただ……」


 まっまさか……。


「あんたに今からこの薬を投与する……つまりは新薬の実験だ。

だが安心しろ……この部屋はせまっ苦しいが、最先端の医療機器を取り揃えている。

そう簡単には死なねぇよ」


 じょっ冗談じゃない!!

一生動けない身でモルモットにされてたまるか!!


 ギシ……ギシ……。


 ワシは逃げようと体中に力を入れるが……体はわずかに揺れるだけで全く動かない。

クソッ!!

動け!! 

動かんかぁ!!


「逃げられねぇよあんたは……そもそもあんたに逃げる場所なんてないだろう?」


 さっサイコパス野郎が悟ったような口を……。

お前が余計なことをしなければ……ワシは神の元へを旅立つことができたのだ!!

それを……。


「おいなんだ? その”私は被害者です”って目は……。

言っておくが、お前は被害者にはなれねぇぞ?」


 男は注射器をどこかへ置き、ポケットから1枚の写真を取り出し……ワシの眼前に突き付けてきた。

その写真には……小学生くらいの女の子が写っていた。


「ここに写っているのが誰だかわかるか?

俺の娘だ……あんたと元嫁の血が流れたな……」


 ワシと?

つまりは……ワシと苗床の子か。

だが……こんな子がいたか?

よく思い出せん……。


「なんだ……覚えてねぇか?

まあ無理もないか……片っ端から女を孕まして回っていたんだからな……種を仕込むこともできない11歳のガキのことなんていちいち覚えられねぇか……」


 こっこいつ……ワシのことをケダモノや種馬のように言いよって……なんと無礼な!!


「こいつはな……俺の娘だ。

とは言っても……娘と血が繋がっているのは俺じゃなくてあんただったがな。

それを元嫁から聞かされた時はショックで死んだ気分だった……。

嫁のことも娘のことも……俺なりに愛していたつもりだったからな。

愛想尽かして離婚したら……嫁はさっさと別の男を作って姿をくらませやがった……娘を置いてな。

ある意味……それが一番ショックだったよ。

結局娘は同情する形で俺が引き取ることになったが……以前のような愛情は抱けなかった。

学校では爺と浮気してできた汚い子供だと……クラスメイトや教師に冷遇され、近所でもヒソヒソと噂され、娘は外に出ることすらできなくなった。

それでも俺なりに娘を立派に育てようと頑張ってきた……。

でもある日……娘にこう言われたんだ」


『私はお父さんの娘だよね?』


「きっと不安でたまらなかったんだろうな……無理もない。

だけど俺は……娘の問いかけに答えることができなかった。

いや……沈黙してしまったことで娘を否定してしまったんだ」


 野口の顔が少し顔をゆがめた。


「そうだと言いたかった……当たり前だと娘の不安を吹き飛ばしてやりたかった……。

だけど俺には……”お前は俺の娘だ”と肯定できるだけの勇気や覚悟がなかった。

その結果……俺は傷ついた娘の心にトドメを刺してしまった。

すぐに後悔して娘の部屋を訪ねたが……娘は首を吊った後だった。

どうにか助けようと色々したが……もう何もかも遅かった。

ほんの数日前の話だ……。

あとで警察から娘の部屋で見つかった遺書を受け取ったんだが……なんて書いてあったと思う?」


 そんなこと知るかっ!!


『お父さん、生まれてきてごめんなさい』


「……信じられるか?

まだ11歳のガキが罪を悔いるような言葉を遺してこの世を去ったんだぞ?

あいつに罪なんて何1つ無いって言うのに……俺なんかよりもずっと深く傷ついた被害者だって言うのに……あいつは俺をこれ以上傷つけまいと死を選んだんだ。

全く……あの時ほど自分が無様だと思ったことはなかったよ」


 長々と話し終えた野口は写真を懐に戻し……再び注射器を手に取った。

先ほどとは違って口元が緩んでいるのがなんとも不気味だ。


「はっきり言って……あんたのことは殺したいほど憎んでいる。

だけど……法的に罰を受けたあんたをこれ以上追い詰めるのは正しいことじゃないからと……自分を抑えてきた。

だけど……娘が死を選び……死にかけたあんたが俺の元に運ばれてきたとき……俺の中で何かが変わっちまった……」


 野口は注射針からキャップを外し……注射器を指で軽く弾いた。


「娘は自殺したんじゃない……殺されたんだ。

あんたと……俺にな。

なんの罪もない純粋な子供が命を絶ってしまったんだ……俺達にはけじめって奴をつける責任がある。

最も……あんたにはけじめをつけなくちゃいけない罪が山ほどあるがな……」


 注射針がワシの腕を突き破り……血管内に何かが侵入してきた。

直接見た訳じゃないが……感覚でわかる。

野口の言う新薬とやらが……ワシの体の中に入って来たんだ。


「でもさ……少しは感謝してくれよ?

この実験が上手くいけば……治療できない病気で苦しんでいる人達を助けることができるかもしれない。

あんたのなりたがっていた……救世主とやらになれるかもしれないんだぜ?

歴史に名前は残らないがな……」


 やっやめろ!!。


「安心しろ……。

あんたがくたばるようなことになったら……俺は警察に行く。

人を殺した人間が医者としてその後も活動するなんて……シャレにもならないからな。

だからあんたもいい加減……自分がやらかしてきたことに向き合えよ、生きているうちに……」


 あがががぁぁぁ!!

次の瞬間……今まで感じたことのない激痛が走った。

まるで鋭い刃物で体中を抉られているような痛み……血管内に硫酸でも流し込まれたかのような痛み……脳が頭蓋骨ごと押しつぶされるような痛み……全ての痛覚がアラームを鳴らしている。

つらい……苦しい……いっそのこと死んで楽になりたい。

だがそんなこと……野口が許すわけもなかった。


-------------------------------------


 それからどれだけの時が過ぎたのかわからない……。

あれからも野口はワシに新薬とやらを毎日注入してきた。

激痛が体を支配することもあれば……体中を虫が這うような不快感に数時間襲われることもある。

もう満足に眠ることすらできず……激痛で意識を失っても、目覚めたらすぐに新薬を注入される。

助けを呼ぶことも……逃げることも……許しを請うこともできず……痛みと恐怖に耐えるだけの毎日……。

一言で言えば……生き地獄だ。


 ”もう死にたい……死んで楽になりたい”


 何度そう願ったことか……。

だがどれだけ願おうと……ワシは死ねない。

何度か死にそうになったことはあったが……そのたびに野口と言う名の悪魔がワシを生き地獄に引き戻してくる。

なぜだ……。

なぜワシは……野口の元へと運ばれたんだ?

あいつさえがいなければ……ワシはあの炎の中で死ぬはずだったんだ!!

野口の娘が自殺などしなければ……そもそも生まれてさえこなければ……ワシは救われたんだ!!

こいつらのせいで……ワシの”救われたい”というたった1つの願いが神に届かなかった。

なぜだ……なぜだなぜだなぜだ!?


-------------------------------------


 殺して……殺してくれぇ……。

もう何も分からない……痛いのは嫌だ……気持ち悪いのも嫌だ。

死にたい死にたい死にたい……たったそれだけのことなのに……なぜ叶わない?

どうして神は……こんな可哀想なワシをお救いになられない?

救いを求めるワシのこの手を……どうして振り払われる?

まさか……あなたまでこのワシを見捨てるというのか!?

ただ純粋に日本を良くしようとしてきたなんの罪もないこのワシを……あなたまで否定するか!?

永遠にこの地獄を味わえとでも言うのか!?

そんなの嫌だ……嫌だぁ!!

もういい……もういい……神でも死神でもなんでもいい……誰でもいいからワシを殺してくれ……。


 頼む……殺してくれぇぇぇぇぇぇぇ!!


千鶴視点を予定していたのですが……急遽、熊次郎視点を追加しました。

熊次郎のこれまでと最期がなんだか釣り合っていない気がしたので、伝家の宝刀である後付けを使いました。

あれで本当に終わるつもりだったので無理やり感はいつも以上に否めませんが……何もしないよりかはマシかな?

では改めて……次話こそ千鶴視点です。

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