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魔法のない普通科で。    作者: ワイ
借り物のカラダと桃
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何でもない!何でもないよ!

翌朝、約束通り女子寮の前に向かうと、そこにはすでにサファイアとルビーの姿があった。

「おはよう、桃。ふふ、ちゃんと時間通りに来られたね」

サファイアが安心したような優しい笑みを浮かべる。

「おーい桃! ハンカチとか教科書とか、忘れ物してねえだろうなー!?」

ルビーは昨日言っていた通り、ニッと八重歯を見せて大袈裟に手招きをしてきた。

「おはようふたりとも! うん、大丈夫。忘れ物もしてないよ」

ふたりの変わらない明るさに、昨夜のモヤモヤがすっと晴れていく気がした。桃はふたりの元へ駆け寄りながら、ふと思いついて口を開く。

「ねえ、ハンカチといえば昨日、ふたりと別れたあとでね——」

昨日あった出来事を話そうとして、桃はハッと息をのんだ。

『ここで会ったことは、絶対に誰にも言わないで……!』

頭の中に、昨夜のトパーズの焦りきった顔と、あの切迫した声が鮮明に蘇る。

——そうだ、口止めされていたんだった。

言葉を呑み込み、急に口を噤んでフリーズしてしまった桃を、サファイアとルビーは不思議そうな顔で見つめていた。

「ん? ハンカチ……? ハンカチがどうしたんだ?」

ルビーが首をかしげ、能天気な顔で覗き込んでくる。

「何でもない! 何でもないよ!」

桃は慌てて否定しながら、ポケットの中のハンカチをギュッと握りしめた。

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