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魔法のない普通科で。    作者: ワイ
オルゴールの音と桃
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隣にいてくれるのは

「魂の抜けたような顔になっちゃったね稚魚くん、あ〜本当にかわいそうだぁ」

ジノはニヤニヤとへらへら笑いながら、空になった薬の入れ物を弄ぶ。苦い薬を容赦なく流し込まれ、ベッドの上で完全に白目を剥いてぐったりしているルビーの姿は、まさに魂が抜け出た惨状そのものだった。

そんなルビーの惨状には目もくれず、トパーズは咳払いをひとつ挟んでジノに向き直る。

「人形、私とルビーはテレパシーが使えますわ。それでしたら、作業はどのように進められますか」

「へぇ! まるで熟年夫婦みたいだぁ、おめでとう」

パチパチと棒読みの手拍子を打つジノに、トパーズの青筋がピキリと浮かぶ。

「いいから答えなさい!!!」

「はいはい、怒らないでよマスター様。……ふん、まあ、言葉を発さずに意思疎通ができるなら話は別だねぇ?声を出して喉を痛める必要もないし、タイムロスも減る。指示出しの効率だけで言えば、それ以上の方法はないよ」

ジノはあからさまにつまらなそうな顔で肩をすくめた。

「ただし――稚魚くんが持つかどうかが問題だけどね〜本当に魔力の低い稚魚くんだし〜?脳内に直接イメージを送り続けるのもタダじゃない。ただでさえ体力が削れてるんだから、調子に乗って使いすぎたら次は本当に脳みそが焼き切れるよ?」

(…けっ、脅かしてんじゃねえよ……こっちはさっきお前のせいで喉も胃袋も死んだんだよ……)

「マスター様と通信できるなら元気じゃないか」

と冷ややかに言い捨てるジノだった。

「なら決まりですわ、 桃と蒼が周りの魔力無効の距離をうまく調整すれば、ルビーの指示を私が受けて桃が手を動かせる、時間は? 精神的な負荷はどうやって測ればいいのですか?」

「はいはい、こんなのありますよっと。この砂時計がこの稚魚くんの全てのリミットわかるようになってるから、落ちたらその日は全て終わり〜。それ以上続けるようなら……その時はまた来るよ、次はさ撮影もさせてもらおうかな」

ジノはひらひらと不気味な鈍色の砂時計を揺らしてみせる。

「……砂が落ちきるまで〜人形、早く仕事に戻りなさい!」

トパーズはジノの言葉を遮るようにキッと指を差し、追い払うように言い放った。

「はぁー、マスター様が厳しくて参っちゃうなぁ、こういうの?パワハラって言うんでしょ?」

ジノは手をひらひらと振らせながら、心底だるそうに、けれど意地の悪い笑みを崩さないまま退散していった。バタンと扉が閉まり、ようやくジノが部屋から消える。

トパーズはふうと息を吐き、視線をベッドの上のルビーへと移した。白目を剥いて死んだように横たわっているが、二人の間に開いたテレパシーを通じて、その微かな鼓動と不屈の意志が伝わってくる。

『…そう言えば腹減った。できればトパーズに食わせて欲しい』

「っ!?」

不意打ちのように脳内に直接飛び込んできたルビーのおねだりに、トパーズは思わず声を出して驚いてしまう。

「っ、桃に食べさせて貰えばいいではないですか!」

唐突に声を張り上げたトパーズに、お粥を準備していた桃と蒼が「えっ?」「トパーズ……?」と目を丸くして首を傾げる。

照れ隠しの反論に対しても、ルビーは脳内で事もなげに、どこまでも素直に言い放つ。

『オレは、隣にいてくれるのはトパーズがいい』

「つ――――っ!?」

脳内に直接響くそのまっすぐな言葉に、トパーズの顔は耳の先端まで一瞬で真っ赤に染まった。あまりの羞恥と愛おしさで頭が沸騰しそうになりながらも、彼女は口元を固く結び、必死で平静を装おうとする。

『……くそっ、この砂時計が出てる間は、お前以外に甘えてる余裕もねえからな……早く頼むぜ、トパーズ』

ルビーの不敵なボイスが、赤面するトパーズの頭の中にだけ響く。

トパーズは大きく深呼吸をし、赤くなった顔を誤魔化すようにキッと作業台へ向き直った。

「……桃、蒼。砂時計のカウントが始まりましたわ。ルビーの指示は私が拾って伝えます。お粥の準備と並行して、外装の組み立てに入るわよ!」

「了解! 砂が落ち切る前に、最高の外装を組み上げてやるんだから!」

「ルビーのペースを乱さないように、手際よく進めるぞ」

不気味な砂時計が静かに時を刻む中、甘い気配と引き締まった緊張感が同居する部屋で、4人はついに3日目の本格的なオルゴール制作へと走り出した。



ちなみに全然関係ないんですが、先日「本物のジノ(魔法の天才)がそのスペックをフル活用し、トパーズの認知を狂わせて自分をルビーだと誤認させ、本物の目の前でNTRプレイを決める」という最悪すぎる悪夢を見ました。

起きた瞬間、素で「なんだこれ……」って言いました。ジノの悪趣味さが夢の中でまで遺憾なく発揮されていました。


ついでなんでジノについて補足するんですが、ルビーはもちろんトパーズも手も足も出ないくらいの実力者です。

ですが彼の慢心、傲慢、油断、怠惰、のせいで今後一歳喋る事ができない体にされました。

敗因は一言で表すと性格が悪いせいです。はい。

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