愛してる
「ここに載ってなかった話をお父様に聞きたいんだろ? なら僕にその二人を引き渡して、ついでに一緒についていくかい? それなら君のお忙しいお父様も、キミに会ってくれるだろう?」
ジノは本棚の上から身を乗り出し、甘い毒を含んだ声で語りかける。
トパーズがぐっと奥歯を噛みしめたその時、手元にあった『校内異世界転生者管理一覧』へふと視線を落としていた蒼が、静かに眼鏡のフチを上げた。
「……お前、まだ僕のことだけでなく、桃のことだって報告してないだろ」
蒼の冷徹な指摘に、ジノは一瞬だけ目を丸くすると、すぐに首をすくめてヘラヘラと笑った。
「んー、そうだけど? いわゆる僕はサボり魔だからね」
「……なら、お前をここで足止めしてしまって、クラフト大会でお父様に表彰された時に直接聞き出せばいいだけの話ですわ!!」
トパーズの凛とした怒声が、旧保管庫の静寂を切り裂く。
ジノの揺さぶりに屈するどころか、正面から打ち破ってみせたトパーズの覚悟に、ジノの表情からヘラヘラとした余裕がふっと消えた。
すとっ。
ジノは本棚の上から、猫のようにしなやかな動作で床へと飛び降りた。足元に散らばる禁書を踏みつける音もなく、すうっとトパーズの眼前へと歩み寄る。
「ふーん? 普通さぁ、娘が『大変だー!お友達が巻き込まれて大変なのー助けてー!』って言うなら、父親ならすぐ駆けつけると思うけどなぁ?」
ジノはトパーズの周りをゆっくりと、嘲笑を浮かべながらうろうろと徘徊する。その視線は、獲物をじわじわと追い詰める肉食獣のそれだ。
「インペリアル様だけじゃないよ? 君たちの親だってそうだろ? ? それなのに……」
ピタリと足を止め、ジノはトパーズの顔を覗き込むようにして、心底愉快そうに目を細めた。
「それなのにそんな相談もできずに『表彰式でしか会えない』だなんてさぁ……。ああ、なるほどねぇ! お前、親に愛されてないのか!!!」ポンっと手を叩く
「〜〜〜〜〜〜!!!!!おまえーーーーー!!!どこまで人を!!!」
トパーズの叫びが旧保管庫に悲痛に響き渡る。気品ある彼女の面影は消え去り、顔を真っ赤にして激昂するトパーズの肩は、激しい屈辱と動揺で震えていた。
スッ……。
その時、ずっと下を向いていたルビーが前に出てトパーズの腕を引いて自分の後ろへと退がらせ、そのままトパーズへと一気に振り向く。
「親に愛されてないとかどうでもいい!!!俺がトパーズを愛してる!!それでいいだろ!なあ!!!?」
息つく暇もなく一気に言い放たれた、あまりにも真っ直ぐな大声。
「………………はぁ???」
ジノが驚きと呆れたように声を出す。




