悪趣味だな
「桃たちをお父様に引き渡すのですか!!! それでどうなるか、お前は知っているのですか!!!?」
トパーズの悲痛な叫びが、埃っぽい旧保管庫の空間に激しく響き渡った。
『魔法革命戦争史』に刻まれていた数々のおぞましい記録——人体実験、精神の破壊、そして転生者の管理。父であるインペリアルが握るシステムの裏側を知った今、引き渡されることが何を意味するのか………父に確認するまでは信じない、信じたくない。
「知っているか、だって?」
本棚の上に寝転がっていたジノは、くすくすと肩を揺らした。ゆっくりと体を起こし、暗闇の中で妖しく光る瞳でトパーズを見下ろす。
「やだなぁ、インペリアル様ぁ。僕を誰だと思っているの? 僕は『校内異世界転生者管理人』だよ? 疑わしい奴らをリストアップして、お父様に届けて、そのあと『どう処理されたか』まで……全部、一番近くで見てきているに決まっているじゃないか」
「お前……っ!!」
ルビーが歯を喰いしばり、壊れるほどの力で杖を握りしめる。
「ふふ、そんなに怖い顔しないでよ。でもさぁ、本当におもしろいよねぇ。自分たちの住む世界を守るためのシステムなのに、当の最高指導者の娘さんがそんなに怯えるなんてさ」
ジノは本棚の縁に腰掛け、脚をぶらぶらと揺らしながら、底意地の悪い笑みを深めた。
「さあ、どうする? 捕まえてお父様に献上しようか? それとも……このまま見逃して、君たちがクラフト大会でどんな惨めなあがきを見せてくれるか、高みの見物でも決め込もうかなぁ?」
「なんで私たちをこんなところまでおびき寄せて、わざわざ資料全て見せるようなことしたの……!?ッ」
トパーズの後ろで小さくなっていた桃が、震える声を振り絞ってジノを詰問した。その瞳には、恐怖と激しい怒りが入り混じっている。
「ん〜〜? なんでって?」
ジノは首を少し傾げると、心底楽しそうに満面の笑みを浮かべた。
「君たちが必死になって探して、怯えて、絶望してるの見てたら……めちゃくちゃ面白かったから」
にっこり。
暗闇の中で浮かび上がったその完璧すぎる笑顔に、桃の背筋を冷たい悪寒が駆け抜けた。
(ぞわっ……!)
言葉を失い、青ざめて息を呑む桃。その隣で、ルビーが激しい憎悪を込めてジノを睨みつけ、吐き捨てるように言い放った。
「……お前、本当に悪趣味だな」




