よく読めました
「なぁに??よんだ??」
「〜〜〜〜〜っっ!?」
頭上すぐ近くから降ってきた気やすく不気味な声に、4人は悲鳴を上げて跳ね上がった。
慌てて後ろへ飛び退いた弾みに、ルビーと蒼の背中が古い大型書架へと激しく激突する。
――ガンッ!! ガシャンッ!!
古い木製の棚が大きく傾き、ギシギシと悲鳴を上げた。次の瞬間、棚の上段に積まれていた古い羊皮紙、バインダー、そして重厚な禁書の束が、雪崩のように崩れ落ちてきた。
バサバサバサッ!! ドサッ!!
埃と紙片が舞い散り、4人の足元には開いたままの古書や破れたページ、おぞましい魔導書が乱雑に散らばり、悲惨な有り様となる。
その荒れ果てた足元と舞い散る埃の向こう――本棚の上で、医務官ジノがひょっこりと顔を覗かせ、月明かりの中でニヤニヤと楽しそうに笑っていた。
「どう探してた産業革命と魔法革命の戦争は見つかった??ふふっ」
頭上の書架の上で、ジノが頬杖をつきながら見下ろしてくる。
トパーズは散らばった本を蹴りつけるように一歩前へ出ると、手を広げて桃と蒼を自らの背後へ庇った。
「……二人とも、下がっていなさい!」
ルビーもすぐにトパーズの隣へと並び立つ。足元の禁書を踏みつけながら杖を構え、眼上のくそ医務官を殺気みなぎる瞳で睨みつけた。
「いつから……いつからそこにいたの……!?」
桃がトパーズの背後ろから顔を覗かせ、声を震わせる。
「やだなぁ、最初からだよー。鍵を渡してこんなにすぐ罠にかかりに来るとは思わなかったけどね」
ジノはうっとうしいほど楽しそうに肩をすくめた。
「罠だとわかってて来てるに決まってんだろ! ぶっ飛ばすぞ、くそ医務官!」
ルビーが杖の先を向け、低い声で威嚇する。
「……それでも、ここに飛び込んで調べないと、僕たちは一歩も前に進めなかったんだ」
蒼が眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせ、冷や汗を拭いながらも毅然と言い放った。
そんな4人の必死な警戒をどこ吹く風とばかりに、ジノは書架の上でゴロンと寝転がると、小さく手を叩いた。
「んで、収穫はあったんだねー? よかったよかった」ぱち、ぱち、ぱち。煽るような手拍子が響く。
「お前は一体何がしたいんですの……!? 鍵まで渡して、私たちを試すような真似をして……!」
トパーズが怒りに肩を震わせ、鋭い眼光でジノを射抜く。
「あれ? その資料、ちゃんと読んでないのー? 桃くん確認してみなよ」
ジノは本棚の上で頬杖をついたまま、心底可笑しそうにクスリと笑った。
促され、桃が震える手で『校内転生者管理一覧』のページを捲り、そこに記された文章に目を通す。
「管理者は異世界転生者と、疑わしき者を見つけ次第……監視、報告……。確定したら………インペリアル氏に……引き渡す…………っ…」
読み上げる桃の声が、恐怖で細く小さくなっていく。
「……っ!?」
トパーズとルビー、そして蒼の顔色がサッと失われた。
「はいっ! よく読めました〜」
ジノは軽快に手を一回叩くと、本棚の上からヌッと身を乗り出し、桃と蒼を見下ろした。その瞳には、底意地の悪い暗い光が宿っている。
「ねぇ、異世界転生者くんたち。なんで君がその文字読めるか分かる? 僕たちと会話できてるか考えたことある? 魔法か何かだと思ってた? はっ、違うね。元は同じ世界なんだから当然だよね〜〜??? ほーんとうに?なーんにも疑問に思わなかったのーー?? あははは!」
禁書庫に、ジノの笑いだけが不気味に響き渡った




