お待たせ!
「う……ん…」
工房のソファでトパーズがゆっくりと目を覚ます。
窓の外はすっかり夜に包まれていた。
「あ、起きたかトパーズ」
作業台でオルゴールのパーツを磨いていたルビーが振り返る。
「ルビー……? 私、いつの間に……あ! 禁書庫どうなりましたの!?」
ガタッと勢いよく飛び起きるトパーズ。
次の瞬間――
(〜〜〜〜〜〜ッッッぐぅぅぅぅぅぅ…………)
静かな部屋に、驚くほど盛大なお腹の音が響き渡った。
「……っ!?!?!?」
一瞬で顔を真っ赤にするトパーズ。
「な、なんですの今の音は……!? わ、私ではありませんわよ! 木の扉のキシむ音が響いただけですわ!!」
「いや、どう見てもお前のお腹だろ。どんだけ爆音鳴らしてんだよ」
「ルビー!!? 淑女に向かってなんですのその言い草は――!」
「まあまあ。鍵の確認は済んでるし、まずは夜間の食堂で腹ごしらえしてこようぜ」
ルビーに促され、プイッと顔を背けつつも空腹には勝てないトパーズ。
4人は夜の校舎を歩き、ランプが点々と灯る夜間食堂へと向かった。
桃の分とトパーズの分を載せた温かいスープとパンのトレイをトパーズに差し出す。
「おまたせ!おいしそうだね!」
一口食べると「……美味しいですわ」安堵の表情を浮かべる。
その時、離れたテーブルに座る上級生たちの会話が耳に入ってきた。
「聞いたか? 今年のクラフト大会の授賞式、あのインペリアル様が直々に来られるらしいぞ」
「マジで!? あの最高権力者様が表彰式に……!? 今年の優勝チーム、ヤバい栄誉じゃないか!」
その言葉を聞いた瞬間、トパーズは食事の手をピタリと止めた。
「……は? インペリアル様……って、お父様が……!?」
トパーズはすぐさま通信端末を取り出すと、迷わずお父様へ通信を飛ばした。
『……ん、トパーズか。どうかしたか?』
端末の向こうから聞こえるのは、相変わらず忙しそうに書類をめくっているお父様の声。
「お父様! 今年のクラフト大会の授賞式に、お父様がいらっしゃいますの!?」
『……あー。……まあ、スケジュール的にはそうなるな』
通信の奥で、お父様が少し気まずそうに、けれど淡々と応える。
「なんですの、来られるならもっと早く教えてくださればよろしいのに! 私、お父様にいいところを見せようと、こんなに必死で作品を作っていますのに!」
『いや……トパーズ、あまり興奮しすぎるな。直前まで調整がつかなかったんだ。それに……仕事で赴くだけだからな表彰式のみしか出られんぞ』
「またそんなそっけないことをおっしゃって! 表彰台でお会いできるのを楽しみにしておりますわね!」
『……はは、まあ無理のない範囲で頑張りなさい。……すまん、次の会議が入った』
「あ、ちょっとお父様!? まだお話が――」
『じゃあな』
プチッと容赦なく切られる通信。
「……もうっ! いつも肝心なところで話を切り上げて……! 相変わらず仕事ばかりなんですのね!」
トパーズは不満げに頬を膨らませつつも、どこかわくわくした様子で端末をしまった。
「……まあ、いいですわ! お父様が来られるならなおさら、優勝して驚かせてあげますわよ! ……それよりいよいよ本番の『禁書庫』へ向かいますわよ!待ってなさいあのくそ医務官…!!」




