一応心配してくれてるのかな
テントの中では、木彫りのパーツや金属の歯車が整然と並ぶ中、蒼が真剣な目つきでオルゴールの構造図に向き合っており、その隣では桃が丁寧に木の枠組みを削り進めていた。
2人の足音に気づき、桃がふっと顔を上げた――その瞬間。
「戻ってきましたわ!! 収穫はゼロですわ!!!! アイツ仕事もろくにしないくせに! アイツの顔を思い出しながらイライラしていたら、予定よりだいぶ早く足取りだけは軽くなってしまいましたわよ!!!」
ガラッと勢いよくテントの幕が開くや否や、トパーズが顔を真っ赤にして叫び、持っていた荷物を激しく机に叩きつけた。
「ひゃっ……!? と、トパーズ……!?」
突然の怒号に、桃は「おかえり」と言う暇すらなく、削りかけの木片を持ったままビクッと肩を跳ね上げる。
蒼もペンを止めて目を丸くし、後ろから入ってきたルビーは呆れたように頭を抱えた。
「ど、どうしたの急に……?」
蒼が恐る恐る尋ねると、ルビーがやれやれといった調子で肩をすくめて言った。
「帰り際に気味の悪い保健医のオッサンに絡まれたんだよ。あいつ、お前ら2人の体調心配してたぜ」
「えっ!? ……あんなに『歩けたら帰れ』とか言ってたのに、一応心配してくれてるのかな?」
桃がぱちくりと目を丸くして首をかしげると、蒼も苦笑いを浮かべながら眼鏡のフチを押し上げた。
「うーん……。一応僕も倒れてた人間側だけどもっと医療従事者って優しいもんだと思ってたよ」
「優しくありませんわ!!! あいつだけですわ!!! あんな腐った性格をしているのは!!!」
トパーズが机をバシッと叩いて大声を張り上げ、荒い息をつきながらフンッと胸をそらした。
「中央図書館は綺麗さっぱり全滅ですわ! 思い出させないでくださいまし、あいつ、仕事もろくにしないでぶらぶら散歩しているだけのくせに、ヘラヘラと気味の悪い嫌味だけ言ってきやがって……! 優しく心配してる風な顔をしながら、中身は腐りきっていますわ!! あんな奴、一生新月の引力にでも引っ張られて消えてしまえばいいのです!!」
「あはは……。トパーズってあの医務官のこと本当に大っ嫌いだよね。態度が全然違う……」
桃が引き気味に苦笑いすると、ルビーはニッと不敵に笑って腕を組んだ。
「まあ、あんなやつのことは忘れるぜ! クラフト大会のオルゴール作りは堂々と完璧に仕上げつつ、裏では『禁書庫』に入る方法を絶対に見つけてやろうぜ」
「ええ、その通りですわ! あの気味の悪いおっさんをギャフンと言わせるためにも、絶対に禁書庫の秘密を暴いてやりますわ……!」




