ちょっと盛ってるでしょ?
テント内。
工具やパーツが広げられた静かな空間に、金属や木材が触れ合う心地よい音が響いていた。
「ねぇ蒼……」
「ん?」
かちゃかちゃ、と手元で精密な歯車を調整しながら、蒼が短く返事をする。
「ローズはどんな子だった?」
桃のふとした問いかけに、蒼の手がぴたりと止まった。そして、どこか遠くを見るような目をしたかと思うと、大げさに両手を広げて語り始めた。
「そりゃもうめちゃくちゃだよ! 手から火は出るわ水は出るわ、しかもそれコントロールできないってあわや災害レベル!!」
オーバーリアクションで身振り手振りを交えながら話す蒼に、桃は思わず吹き出した。
「ちょっと盛ってるでしょ? あははは!」
「まあね、ふふ」
蒼も悪戯っぽく笑いながら、再び手元の作業へと視線を戻す。
「でもさ……本当に凄かったんだよ。自分の力に振り回されながらも【思いは魔力を超えるんだ!】って絶対に諦めなくて、周りを巻き込む台風みたいだけど……どこか放っておけない、あったかいやつだったんだ」
真剣な表情に戻り、愛おしそうにパーツを見つめる蒼の横顔を、桃は温かい眼差しで見つめていた。
「桃が魔法を使えたらこんな子だろうなって、ずっと思いながら見てたよ」
手元の作業を止めた蒼は、工具をそっと置き、まっすぐに桃を見つめた。
「やっぱり……私、そっくり?」
蒼の瞳に映る自分の顔を見つめながら、桃が少し恥ずかしそうに、でもどこか嬉しそうに尋ねる。
「そっくりなんてもんじゃない。魂を分けた双子より同じだったよ」
「やっぱりそうなんだ……」
桃はふっと柔らかく微笑み、自分の胸元にそっと手を当てた。
自分の世界とは違う場所で、自分と同じような一人の少女――ローズの面影を重ねるように。
「……ねぇ。サファイアも、僕と同じなんだろ?」
蒼がふと小首をかしげて尋ねると、桃は驚いたように目を丸くし、それからパッと子供のように満面の笑みを咲かせた。
「うん!!」
力強く頷く桃の表情には、これまでの不安や戸惑いはなく、不思議な安心感と絆の色が満ちていた。
ふたりの間に流れる穏やかな空気の中、カチカチと響く歯車の音が、二人の距離をさらに縮めていくのだった。




