牛乳の髭
「では担当分けですわ。桃と蒼はオルゴール作りに全力を。私とルビーで19世紀頃の物を手当たり次第に魔力感知しますわ」
トパーズがスプーンを置くと、優雅に、しかしテキパキとした口調でそう指図した。
「えっ……! 2人と2人に分かれるの……!?」
持っているパンをちぎる手が止まり桃が驚くとトパーズは静かに頷く。
「ええ。大会までのタイムリミットはあと2週間。オルゴールの設計修正と組み立てには、向こうの世界の機械知識を持つ蒼と、木工・組み立てを得意とする桃の連携が不可欠ですわ。そして、消えかかっている19世紀頃の魔力反応を探すのは、感知魔法が使えるわたくしと、ルビーで動いた方が圧倒的に効率的ですの」
(……確かに理にかなってる。異世界の知識を持つ僕と、こちらのクラフト技術を持つ桃なら、オルゴールの設計変更も一番早く進むはずだ)
蒼は心の中で納得しつつ、ルビーの方へと視線を向けた。ルビーは飲んでいた牛乳コップをトンッ!と置きニヤリと力強い笑みを浮かべる。
「よし来た! 手当たり次第だな! 校舎裏の倉庫から旧校舎のガラクタ置き場まで、片っ端から引っぺがして探してやるぜ!」
「……荒々しい探索はご遠慮願いますわよ、ルビー牛乳の髭もついてますわ…」
トパーズはやれやれと溜息をつきつつも、どこか信頼を寄せた眼差しをゴシゴシと慌てて口を拭いているルビーに向けた。そして再び桃と蒼に向き直る。
「オルゴールの方は任せましたわよ。大会の優勝も、回路の解明も、どちらも手に入れるつもりで挑みますわ」
「うん……! 任せて、トパーズ、ルビー! こっちは蒼と一緒に、絶対に最高のオルゴールを形にしてみせるから!」
桃がギュッと拳を握りしめると、二つ目のパンに手を伸ばしていた蒼も心強く頷いた。
「僕も全力を出すよ。向こうの精密機械のロジック、全部このオルゴールに注ぎ込むからね」
こうして4人は、それぞれの「本気」を懸けた2チームに分かれ、タイムリミットへ向けた怒涛の調査と制作へと本格的に動き出すのだった。




