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忘れ物するなよ!
「流石に疲れたんじゃないかい? もう夜だし、女子寮の近くまで送るよ、桃」
サファイアが優しい声音でそう言い、桃の顔をのぞき込みながら歩幅を合わせてくれる。
「あはは、確かにちょっと足が重いかも……。サファイア、ありがとう」
「いいんだよ、これくらい。ほら、オレらも魔力ないけど、いないよりマシだろ?」
並んで歩きながら、さっきのドタバタ劇から一転して、とりとめもない他愛のない会話が続いていく。
「あの魔法科の制服、やっぱり歩きにくそうだよね」とか、「今度の食堂のメニューは何が出るかな」とか――そんな何気ない言葉のキャッチボールが、ささくれ立っていた桃の心を心地よくほぐしていった。
女子寮の建物が見えてきて、そろそろ足が止まるというその場所で。
「じゃあ、オレらはこっちだから!」
ルビーがひょいと手を挙げて、大きなあくびをひとつ噛み殺した。
「また明日ね。朝、ここまで迎えにくるから」
「忘れ物すんなよ!桃!」
「それ、絶対にお前が言われるセリフだろ!?」
サファイアがすかさずルビーにツッコミを入れ、一同は揃って声を上げて笑った。
「うん、ありがとう! ルビーもサファイアも、また明日ね!」
寮の入り口でふたりに手を振り、桃はホッと温かい気持ちを抱えたまま、去っていく二人を優しく見送った。




