頼むよトパーズ様
「あっ……そうだ、オルゴール作らなきゃだね」
桃がハッと机の上を見て呟くと、蒼はきょとんと首を傾げた。
「えっ……オルゴール……?」
「そうなんだよ! 異世界の調査も大事だけど、私たちで大会用にディスクオルゴール作っててさ! あと2週間で完成させなきゃいけないんだよ!」
桃が頭を抱えて机に突っ伏すと、ルビーは真剣な眼差しで製図の束をめくりながら、フッと息を吐いた。
「まったくだぜ。世界の謎を追うのも大事だが、この大会に向けた設計と金属加工のスケジュールもギリギリだ。ここで手を抜いたら、今までの苦労が全部パーになっちまうからな」
「おっしゃる通りですわ、ルビー」
トパーズが手元の調音用ハンマーを置き、優雅に頷く。
「ディスクオルゴールという構造上、精密な計算、正確な金属加工、そして妥協のない調音と美しい外装……この役割分担が綺麗にハマらなければ、完璧なものは絶対に仕上がりませんもの」
これまでこのオルゴールの存在すら知らなかった蒼は、机の上に広げられた製図や歯車のパーツを興味深そうに覗き込んだ。そして、そこに描かれた設計図にふと目を留め、驚いたように声を上げる。
「……あ、これ。もしこの歯車比とピッチ間隔にするなら、僕の知る向こうの機械理論をベースにこう設計し直した方が、音のブレがなくなって理想の発音サイクルになるんじゃないかな?てかこれ桃が昔琥珀の家でやらかしたディスクオルゴールだよね?」
蒼が指し示した図面を見て、ルビーは「ほう……!」と目を輝かせ、トパーズも感心したように頷いた。
「さすがは機械世界から来たサファイアだ。理屈の通った良い指摘だな」
「ええ。あなたが言うのならそうなのでしょう!さすがですわ」
桃は過去の失敗を言われ苦虫を噛み潰した顔をしたが、嬉しそうに微笑んだ。
「っと…その話は置いといてって!でも、すごい! 蒼は今まで作ってなかったのに、一瞬で設計のツボが分かっちゃったよ! ねぇ、新月の回路調査だけじゃなくて、この大会用のオルゴール作りも、よかったら蒼の知識を貸してよ……!」
蒼を元の世界へ帰すための『次の新月(あと1ヶ月)』と、彼女たちが挑む『オルゴール大会(あと2週間)』。
予期せぬ形でオルゴール作りは進みそうな手応えを感じさせた。
「ねぇトパーズ、今日もいつも通りトパーズの部屋に私泊まっていいよね? ローズの部屋を2人に貸そうと思うの……えっと、女子寮に来たはいいけど、帰る時に見られた方がまずいよね……???」
桃が首をかしげてそう口にすると、それまで図面を覗き込んでいた蒼とルビーの動きがピタリと止まった。
「「ひえっ……!?」」
一歩間違えれば即退学の不法侵入&男子発覚という最悪の未来が脳裏をよぎり、蒼とルビーは情けない声を上げて青ざめる。
「た、確かにそうだ……! 忍び込む時は奇跡的に行けたとしても、朝方に女子寮から男が出ていくところを見られたら完全に一発アウトだ……!!」
蒼が頭を抱えてカタカタと震え出すと、ルビーも「うわっ、逃げる時のことまったく考えてなかった……!」と冷や汗を流す。
トパーズはナプキンで指先を優雅に拭い、二人を静かに見つめながら、ため息をついた。
「……確かにそうですわね。入る時以上に、出る時のリスクを考慮しておりませんでしたわ。……逃走方法は明日までに考えます…」
「じゃあ2人ともまた明日ねーおやすみ!」
と言いながら桃は机の引き出しを開け中にするりと入って行った
「は?お前ら部屋と部屋繋げちゃったの?」
「当然ですわ、前も言ったでしょう?桃の健康管理は私の役目ですから、あっ脱走用のいいアイディア思い浮かびましたわ、そのためには早く寝てくださいな」
トパーズの真面目かつ頼もしい(?)決意表明に、蒼とルビーは顔を見合わせ、「明日までに頼むよトパーズ様〜〜!!」とすがるのだった。
某青たぬきの住む部屋の引き出しだね
魔力なくても魔道具あればなんとかなっちゃう、まるで、のびちゃんと同じですね




