生きた心地がしねぇ
「とりあえずトパーズの部屋でも行こうか、お腹も満たされたし」
お腹をさすりながら満足そうに言う桃。
「ええそうしましょう…と言いたいところなのですが…蒼に全く人払いの魔法をかけられるイメージが湧きませんの…不甲斐ないですわっ…!!」
「そっか蒼も桃と同じで全く魔力がないから魔法が効かないのか!」
「じゃあ一階の私の部屋にしようか」
「「は?」」
ルビー蒼は目を合わせる
「私が寮母さんの気を引きますわ!! その隙に一階の桃の部屋へ!!」
トパーズが力強く言い放つと、すっと背筋を伸ばして寮母室の廊下へと向かって行った。
(だからってなんで女子寮なんだよーーーー!?!?)
「寮母さん、みてくださいな! わたくし、こんなこともできるようになりましてよ〜〜!?」
隣の廊下から、いつになくハキハキとした(そして妙にオーバーな)トパーズの声と、何かを盛大に派手な音で爆発させたようなドカーンという魔法の練習音が聞こえてくる。
「こ、今だ……! 行くよっ!」
桃を先頭に、姿勢を低くして忍び足で陣形を組む4人。
最後尾を走る蒼は、心臓が口から飛び出そうなほどバクバクしていた。
(な、なんでこんなにドキドキハラハラしながら潜入しなきゃいけないんだ……!? 女子寮に男子が忍び込むって、普通にバレたら一発で退学だし警察沙汰レベルでヤバくない!? どうすんのこれ……!!)
そんな蒼のパニックをよそに、前を行く桃がパッと手を挙げ、キリッとした顔で振り返る。
「……行くぞ!!」
「「「うおぉっ……!!」」」
音を殺した猛ダッシュで廊下を駆け抜け、一目散に桃の部屋のドアへと滑り込む。
カチャン! と鍵をかけ、全員が一斉にドアの裏にへたり込んだ。
「「「生きた心地がしねぇ〜〜〜〜!!!(笑)」」」
「ふぅー……! ぜぇ、ぜぇ……っ! トパーズの『気を引く』が派手すぎてヒヤヒヤしたよ〜〜っ!」
桃が胸を押さえて床に倒れ込むと、ルビーも壁に頭をもたれかけて「あははっ!」と笑い転げた。
「ギャハハ! 最高の囮だったじゃねぇか! 寮母さん『トパーズ様!? 何をなさってますのーっ!』って大パニックだったぞ!」
「笑い事じゃないよルビー……! 僕、生まれて初めて女子寮に不法侵入したよ……本当に生きた心地がしなかった……」
蒼が膝を抱えて真っ白になっているところへ、トントンとドアをノックしすまし顔のトパーズがスルリと部屋に入ってきた。スカートの裾を払いながら、何事もなかったかのように微笑む。
「お待たせいたしましたわ。……これでひとまず、一階の桃の部屋が『仮の秘密基地』になりましたわね」
「トパーズ!よく無事だったね!」
「ふふ、寮母さんには『少し魔力の調整を失敗してしまいましたの、おほほ』と微笑んでおきましたわ。……ですが、毎回この大捕り物をやるのはわたくしたちの胃が持ちませんわね。一刻も早く、誰にもバレない秘密基地を見つけませんと……!」
「だね……! 明日からは、秘密基地探しだね!」
危険すぎる女子寮潜入ミッションを突破し、4人は顔を見合わせて「ふぅ〜」と深く息を吐きながら、絆を深めるように笑い合うのだった。




