一生だってかけてやる
「おまえこんな魔法もつかえねーの?」
「将来普通科だな!」
「っ……ひっくっ……ぐす…」
「いいじゃんか!普通科だって!魔法は!思いは魔力を超えるんだ!」
あの子に守られてばかりじゃなく今度は自分が助ける。
「ありがとう、ローズの部屋」
桃はそう優しく呟くと、名残惜しそうに部屋をあとにした。
身支度を整えた者から食堂に集まろうと話し合っていたため向かうと、食堂にはすでにみんなが集まっていた。
テーブルを囲み、他愛もない会話で談笑しながら食べる食事。賑やかで温かいその時間はあっという間に過ぎていき、食事が終わると、4人はゆっくりと立ち上がって片付けを済ませ、列車へと向かった。
新月が登りきるタイミング。
駅では工具の準備や搬入作業が慌ただしく行われていたが、4人は車両の前で一切作業に手をつけず、ただ静かにその時を待っていた。
「いよいよですわね……」
トパーズが静かに口を開く。
「来られたんだ! また会えるかもしれねぇじゃん!」
ルビーが力強い声で桃の背中を押すように言う。
「桃、ありがとう」
サファイアもまっすぐな瞳で感謝を伝える。
「みんな、ありがとう……大好きだよ。泣かないって決めたのに……ぐすっ」
堪えきれずに涙をこぼす桃に、「桃っ!」とトパーズがたまらず抱きつく。
ルビーは桃と肩を組み、サファイアとは固く握手を交わしたサファイアに向かってウインクし、秘密のサインを送る。
人目も気にせず、全神経を研ぎ澄ませて魔力感知を行うトパーズ。
——今までよりも、はっきりと強い魔力を感じる。
「……今ですわ」
トパーズが鼻水をすする音が聞こえた。
桃はふっと優しく笑うと、目の前の列車にそっと手を触れた。
「さよなら」
感謝と愛おしさを込めて呟き、光に包まれるその瞬間を待つ。
……。
……。
何も起こらない。
「……はっ???」
静まり返った空気の中、全員が互いの顔を見合わせた。
桃の手元にあるかぎ針からも、目の前の列車からも、魔力は間違いなく過去最高値を計測している。
桃はパニックになりながら、もう一度勢いよく列車に手を触れ直した。
「どうして?なんで? 「なんでだよ!! これだけやっても、まだ何が足りないっていうんだ!?」
いつも冷静なサファイアが、なりふり構わず列車をドンドンと叩きながら取り乱し声を荒らげる。
「サファイア、落ち着けって!!」
暴れるサファイアの体を、ルビーが必死になって後ろから組みついて抑え込む。
「絶対に……何があってもローズのことを助ける! 何年だって、一生だってかけてやる……!!」
サファイアのその悲痛で強い叫びが響いた瞬間――
ズドッ……!!!
列車から溢れ出た溢れんばかりの強い光と、巨大な衝撃波が四方八方に弾け飛んだ。
「ぐあっ……!?」「きゃぁぁぁーーっ!!」
吹き飛ばされる一同。
運良く、4人はたまたま後ろに設営されていた別のテントの上へと勢いよく落っこちた。
「っ……!? みなさん、大丈夫ですの!?」
飛ばされた咄嗟に強力な防御魔法を展開していたトパーズが、姿勢を立て直しながら叫ぶ。
「いてて、大丈夫よ……っ」
「おう……なんとか、大丈夫だ……」
体を起こしながら返事をする桃とルビー。
だが――
サファイアからの返事だけが返ってこなかった。




