完成させたい!
「ってことはみんなとももうお別れか…」
「そんなしんみりするなって桃!!新月まで1週間だなにかやりたい事とかないのか?」
寂しさを隠しながらも明るく声をかけるルビー
「とりあえずオルゴールを完成させたい!!!!みんなと作るって決めたんだから!もう最後かもしれないし………よーし! それじゃあ、まずはオルゴールを完成させよう!! やるぞーっ!!」
瞳を潤ませたまま桃が拳をキュッと握りしめて意気込むと、ルビーがニッと頼もしく笑った。
「おう! 泣いても笑ってもあと1週間だ! 最高のオルゴールを完成させて、パパッと謎も解き明かしてやろうぜ!」
「……『もう最後かもしれない』か」
サファイアは少し遠い目をしながら、静かにオルゴールの木箱を撫でた。
「桃が元の世界に帰れるかもしれない……そう思うと寂しくもなるが、だからこそ中途半端なものは残せないな。僕のリード調整も、本気で仕上げるよ」
トパーズも胸の前で両手をギュッと組み、優しく微笑む。
「ええ……。この『昼の月』の曲が、私たちの絆の証になりますもの。最高の音色を響かせましょう!」
「………あれ?………もしかしてまた死ぬような思いしないと帰れないのかな……?」
桃がぽつりと溢したその言葉に、テントの中の空気が一瞬で跳ね上がった。
「そんな危ない事、オレが許すわけねぇだろ! なに言い出してんだよ!!」
ルビーが勢いよく身を乗り出し、声を荒らげる。
「……いや、待ってくれ。それは流石にないんじゃないか?」
サファイアは顎に手を当て、沈着に思考を巡らせながら二人を制した。
「ローズの事故の時の話だが……彼女はただ、あの車体に『触れただけ』だったはずだ。命を削るような儀式なんて、最初から存在すらしていないんじゃないか?」
そう言いながら、サファイアは『琥珀のかぎ針』を見つめた。
そこに宿っている魔力は、人を害するような悪意などではない。けれど、人間の体温や感情が一切通わない、ただただ冷たく無機質な――人の力なのかどうかすら『全くわからない』代物だ。
「トパーズはどう思う? 君の解析の見解を聞かせてほしい」
サファイアに意見を求められ、トパーズも手元のノートから顔を上げた。
「私も、サファイアに同意見ですわ」
トパーズは静かに、けれど力強く首を振った。
「あの列車の佇まいも、このかぎ針に纏う魔力も……人の感情や意図のようなものが全くわからず、ただ冷たく無機質にそこに存在している……全く未知の代物ですわ。ですが、そこに命の代償を求めるようなおぞましさは一切ありませんの」
サファイアは眼鏡をそっと押し上げ、桃に優しく頷きかけた。
「ああ。命を奪うための仕組みなんかじゃない。だから……正しく仕組みさえ解き明かせば、死ぬような思いなんてしなくても安全に帰れるはずだよ」
「ええ。私たちが必ず解き明かして、あなたを安全に帰してみせますわ!」
こうして、新月までのカウントダウンとなる特別な1週間が始まった。
4人はテントの中で肩を寄せ合い、オルゴールの完成に向けて最後の仕上げに取りかかり始める――。




