本当の鍵
「オレ達でも流石にわかるってなぁ、サファイア!?」
ルビーが目を見開き、トパーズが見つめる小屋を指さした。
「ああ……。今までいくら探しても全く反応がなかったというのに、なぜ今になって急に……!」
サファイアもメガネの奥の目を丸くし、自分の手元にある魔力計測用の器具がカチカチと微かに反応を示しているのを見つめている。
トパーズは高鳴る胸を押さえながら、今起きた奇跡のような符合を一つひとつ言葉にした。
「 『昼の月』が出ているこの時間帯の太陽と月の位置関係こそが、あの魔法の隠蔽を解除する『真の波長』だったのですわ! まるで、穴の開いたディスクと光が重なった瞬間にだけ音が鳴る、あのオルゴールの構造のように……!」
「じゃあ……! ずっと見つからなかった手がかりが、今なら見えるってこと!?」
桃がぱっと表情を輝かせ、小さなお弁当箱を慌ただしく片付け始めた。
「そうですわ! 昼間の月が沈んでしまう前に……あの小屋へ向かいますわよ!」
手作りの「昼の月」のディスクをぎゅっと握りしめ、4人は風を切って古い車庫へと駆け出した。
「では、もう一度……今度はフルパワーでかけますわ!」
トパーズは一歩前に踏み出すと、両手でしっかりと杖を握りしめた。青空に浮かぶ「昼の月」を背景に、彼女の金色の髪が心地よい風にふわりと揺れる。
「ちょ、トパーズ、フルパワーって……ここ、学園の中だぞ? 周りに誰か見られたら……」
ルビーが慌てて周囲をキョロキョロと見回すが、トパーズはフンと誇らしげに鼻を鳴らした。
「人に見られても構うものですか! どうせ、トパーズ様の華麗な魔法の噂が一つ増えるだけですわ!」
その堂々とした言葉に、サファイアが小さく苦笑いを浮かべ、桃が「かっこいいーっ!」と目を輝かせてパチパチと拍手を送る。
「では、いきますわよ……ッ!」
トパーズが魔力を極限まで高め、頭上の「昼の月」と遠くの小屋を一直線に結ぶように、杖の先端から眩い光の奔流を解き放った。
――それは周囲の空間が震えるほどの圧倒的な魔力の波動。
「くっ……ビリビリ来る……! この間と同じ……ううん、それ以上に強い魔力を感じる……!」
トパーズが解き放った全力の魔力感知が小屋を包み込むと、大気が激しく鳴動し、空間そのものが微細に震え始めた。隠されていた空間の歪みが、昼の月の光に照らされて露わになっていく。
「何を持っているのですか!?桃!?」
遅れてルビーとサファイアも反応する
制服のポケットの中から、ぽっと優しい琥珀色の光が漏れ出している。
桃がゆっくりとそれを取り出すと――そこに現れたのは、いつも肌身離さず持っていた琥珀のかぎ針だった。
それがまるで昼の月の光とトパーズの魔力に呼応するかのように、じんわりと温かな脈動を打ち、幻想的な光を放っている。
「……!? それは……!」
トパーズの目線が、桃の手に収まる琥珀のかぎ針に釘付けになった。
(あの光……あの波長……! まさか……ッ!?)
トパーズは息を呑み、桃が持つ琥珀のかぎ針と、目の前に佇む謎の列車の二つを、何度も何度も交互に見比べた。
これまで無関係だと思っていた桃の持ち物と、事故を起こした列車。
「昼の月」と「異世界転生」が、今この瞬間に一本の太い線で繋がろうとしていた。
「トパーズ……? どうしたの……?」
呆然と立ち尽くすトパーズの様子に、ルビーもサファイアも息を呑んで見守っている。
「……見つけましたわ……。本当の……『鍵』を……!」
トパーズの震える声が、昼下がりの広場に響き渡った。




