試運転
「(へぇ……こんな明るいのに、今月出てるんだ……)」
桃は光にかざしたディスクの穴越しに、青空にぽつんと浮かぶ白い月を何気なく眺めていた。
すると突然、何かが胸の中でカチリと噛み合ったような感覚が走り、桃の目がパッと輝いた。
「あっ! トパーズ、次も投げてみていい!?!? 新品だけど、はいっ!!」
桃は作業バッグからまだ穴の空いていない、まっさらな新品の厚紙ディスクを引っ張り出すと、待ちきれないといった様子でトパーズに向かって差し出した。
「えっ、新品ですの? 失敗作ではありませんのに、よろしいのですか?」
トパーズが少し驚いたように首をかしげると、桃は楽しそうにブンブンと頷く。
「うん! いいからいいから! ほら、いくよーっ!」
「あ、ちょっと桃、いきなり投げるなよ!?」
ルビーの制止も聞かず、桃は新品のディスクを空高くと投げ上げた。
「ひゃーすごい! これ再生してみたらどうなるかな!? 櫛も適当だけど、ちょっと聞いてみない!?」
桃はトパーズが魔力で完璧な穴を穿ったばかりのディスクを抱え、興奮気味にサファイアの元へ駆け寄った。
「ええっ!? 再生用に作ってたのですか!?」
トパーズは思わず目を丸くして声を裏返らせた。彼女としては、ただの魔力コントロールの精密射撃の標的として穴を開けたつもりだったのだ。
「おう! サファイアがさっきまで一生懸命リードの調整してたからな! ちょうどいい試運転になるじゃねえか!」
ルビーがニシシと笑いながら、サファイアの背中をバシッと叩く。
「ちょっと叩くなルビー……! まったく、仕方のないやつらだ。……まだ仮組みだが、回転軸にセットすれば音が出ないこともないぞ」
サファイアは呆れたように息をつきつつも、手慣れた手つきで箱型の本体にスターホイールと金属製の櫛をセットし、桃から受け取ったディスクを軸にはめ込んだ。
「いくぞ……」
サファイアがゆっくりと手回しハンドルを回し始める。
カチ……カチ……とギアが噛み合い、厚紙のディスクが青空の下で優雅に旋回を始めた。
ポン……ポロロン……♪
トパーズの緻密な魔力弾によって穿たれた無数の細やかな穴が、回転に合わせて正確にスターホイールを押し弾き、清らかな金属音が昼の澄んだ空気に広がっていく。
「わぁ……! 綺麗……! 適当に弾いた魔法の穴なのに、ちゃんと曲みたいになってる!」
「本当ですわ……! 私の魔力の軌跡が、こんな優しい音色になるなんて……」




