ピクニックだー!
翌日のお昼休み。
食堂の裏手から少し離れた、心地よい風が吹き抜ける広場へと四人はやってきていた。
「よし! 食堂のおばちゃんにランチももらったし、ピクニックだー!!!」
両手に大きなお弁当箱を抱えた桃が、太陽の下でパッと弾けるような笑顔を見せる。
「いや、そんなお約束でしたっけ……? 風に当たるだけのはずが、完全にピクニックの装いですわね」
あきれ顔をつくりつつも、トパーズの表情には昨日の夜のような影はなく、どこかすがすがしい。
「だってさ、今日は周りを見渡しても誰もいないし! トパーズのいろんな魔法が見たいんだもん!」
桃は目をキラキラと輝かせながら、一気に距離を詰めてトパーズを見上げる。
「それとね! オルゴールのこと! 完璧に構造が分かったんだよ! あとはこのディスク! 割れないように、でもちゃんと音が鳴るように穴を開けたり爪を引っかけたりするのが……難しいんだよね、コレが!」
紙ディスクを片手にもち、うーんと唸る桃の無邪気でまっすぐな言葉。
その熱意と楽しそうな姿に、トパーズは思わず口元をほころばせ、誇らしげに胸を張った。
「く、ふふふ……あはは! いいですわ、そこまで言うのでしたら!特訓なんて人前でやる事ではありませんが私の得意な基本魔法から応用魔法まで、とくとご覧入れますわ!」
「「「よっ、待ってましたー!!!」」」
ルビー、サファイア、そして桃の三人が息ぴったりに拍手を贈る。
青空の下、昼下がりのやわらかな光が差し込む中で、小さなお披露目会が始まろうとしていた。
「まずは適当な的に……あら、そこに失敗作のディスクがありますわね。いらないのでしたら、私にくださらない?」
トパーズは足元に転がっていた厚紙の試作ディスクを指さした。
「おう、こんな失敗作でよけりゃいくらでも持っていってくれ!」
ルビーが手元にあったディスクを数枚放り投げると、トパーズは杖を優雅に構えた。
「いきますわよ」
ヒュッと風を切る音とともに空中に投げ出されるディスク。トパーズがそっと杖をひと振りすると、先端から放たれた繊細な魔力の弾丸が、空中で旋回するディスクを寸分の狂いもなく撃ち抜いていく。
「すごっ……! ピタッと当たってる!」
桃が歓声をあげるなか、放たれた魔力はディスクを破壊することなく、規則正しい微細な穿孔(穴)だけを穿っていく。空中で幾度も光が弾け、地面へと静かに落ちてきたディスクを桃が拾い上げた。
「わあ……! 見て、すっごく細かな穴がきれいに空いてる!」
光にかざされた厚紙のディスクには、まるでオルゴールの楽譜のように精密な穴のパターンが整然と並んでいた。トパーズの緻密な魔力コントロールに、ルビーもサファイアも感心したように息をのむ。
その時、桃が開けた穴越しに何気なく空を見上げ――青空の中にうっすらと浮かぶ「昼間の月」と、ディスクの穴がぴったりと重なった。




