こっちも楽しいよ
「なんの成果も得られませんでしたぁぁぁーー!!!」
小一時間ほど列車を穴があくほど眺め回したものの、何も掴めなかった桃は、頭を抱えてその場にへたり込んだ。
「よっし、オレと代われ桃!」
ルビーが待ちかねたとばかりに腕を捲り上げ、パンッ!と威勢よく両手を合わせた。
そのまま人の往来がぐっと減った昼過ぎ——お腹がグーッと鳴るのを全員で我慢しながら、今度はルビーとサファイアの二人が作業に入る。
二人は列車の装甲や車輪にそっと手を触れ、文字通り「手探り」で慎重に魔力探知を進め始めた。
トパーズから言わせれば、普通科の二人が行っているような手探りの魔力感知は、目立つほどの行為でも魔法でもないらしい。……魔法科との技術や知識の格差を、桃はしみじみと感じていた。
だが——「正面」の装甲へと手を伸ばしたルビーの動きが、ピタリと止まった。
サファイアもすぐさま駆け寄り、正面の同じ場所にそっと掌を重ねる。眼鏡の奥の鋭い瞳がすっと細められた。
「……なぁ、サファイア。ここ、妙だぞ」
「……確かに。正面に、桃と……あと『何か』の魔力を感じる。なんだコレ? そもそも魔力なのか……?」
「ローズが当たったのはやっぱりこの正面、確実だったな」
何も分からずへたり込んでいた桃は、二人の会話に思わず顔を上げた。
目視では何の変化もない金属の装甲。だが、ルビーとサファイアの手探りによって、事故のあった正面部分から異質な魔力の痕跡が確かに検知されたのだった。
「くっ……! 私も何か見つけたいのに……! なぜ人が減ってくれませんの!?」
トパーズがオルゴールをぎゅっと握りしめ、優雅な仕草を保ちつつも悔しそうに身をもだえさせた。魔法科としての誇りもあるだけに、ルビーとサファイアに先を越され、自分だけが人の目を気にして指をくわえているのが我慢ならないらしい。
「ふっ、こんな事もあろうかと、あらかじめ『この区画の資材搬入・作業終了時刻』を設定させておいて正解だったな」
サファイアが眼鏡の位置をスッと直し、不敵に口元を緩めた。作業が終わって人が完全に立ち去れば、トパーズも心置きなく調査ができるという算段だ。
「つっても、作業終了時間まで待つしかなさそーだな! オレたちもそれまでテントで既存オルゴール解体でもしてよーぜ」
ルビーがカラッと笑って手元の部品を持ち上げると、桃の目がパッと輝いた。
「そーだよ! こっちも楽しいよ!」
落ち込んでいたのも束の間、桃は「るんるん」と効果音が聞こえそうなご機嫌な様子でドライバーとペンチを手に取り、オルゴールの解体作業へと没頭し始めた。構造を一つずつ確かめながらカチカチと部品を外していく時間に、すっかり夢中になっている。
そんな桃の無邪気な姿とカチャンカチャンという金属音に、焦っていたトパーズも思わず肩の力を抜き、小さく微笑みを浮かべるのだった。




