仲良しこよし
夜になり、食堂へ足を踏み入れた瞬間、桃は思わず声を漏らした。
「わぁ………」
そこには、普段なら決して見られない光景が広がっていた。
いつもなら「魔法科」と「普通科」の生徒が明確に席を分け、互いに牽制し合うような刺々しい空気を漂わせているはずの食堂。それが今や、科の垣根を越えてチームごとに同じテーブルを囲み、楽しげに身を乗り出して話し合っている。
「トパーズ、すごいな!? あんなに険悪だったのに、こんなに二つの科がまとまってる!」
驚きを隠せない桃の隣で、トパーズはふふんと優雅に微笑んだ。
「ふふ、コンテストの開催を発表した甲斐がありましたわ。やはり『チーム戦でアイデアと技術を競う』となれば、互いに手を取り合わざるを得ませんもの」
「初めて見たよ、こんな光景……。仲良しこよしでいてほしいわけじゃないけど、これは悪い事じゃないね」
サファイアは驚きに満ちた表情をしている。
桃は温かい気持ちで食堂全体を見渡した。
「ええ、本当に。競い合い、高め合う中で生まれる協力……これこそがコンテストの醍醐味ですわ」
トパーズも満足そうに頷く。
「「でも!」」
ルビーとサファイアの声が綺麗にハモり、二人は同時に桃の顔を覗き込んだ。
「俺「僕」たちの本題は、忘れちゃいないよな!?!?」
「っ……!?」
パンを頬張りながらも、実は一瞬、琥珀の家でディスクを破断させてしまった大失敗の記憶がフラッシュバックしていた桃は、二人の迫力と動揺で完全にノドを詰まらせた。
「も、もちほん……わすれて……ない、ゲフッ! がふっ……!」
喉に詰まった夕食のパンに白目をむきかける桃の背中を、ルビーが「落ち着けって!」とガシガシ力強く叩く。
「ふふふ。美味しい食事をしながら、楽しい事を考える時間も必要ですわ」
トパーズは優雅にスープを一口口に運ぶと、テーブルの上にそっと手帳を置いた。
「作品づくりに必要な工具と、不足している金属資材の発注計算は、すべて私が終わらせてありますわ。……では、いよいよ本題ですわね」
トパーズの目が、スッと真剣な光を帯びる。
「明日の朝、学園の貨物門に到着する列車……。発注書類を提出し、資材の受け取りを行う担当が1人。そして、残りの3人は列車の調査ですわ」




