ディスクオルゴール
「桃、では逆に、この学園に来てから不便だなって思ったことありませんか?」
トパーズにふとそう問いかけられ、桃は少し首を傾げてから答えた。
「私ね、ここに来てから音楽を聞いてない気がするの」
桃の言葉に、トパーズはパッと笑顔を見せて頷いた。
「あら! 魔法具にもございますわよ? 音響の魔法石を組み込んだ蓄音器や、宮廷の音楽魔法士の演奏を記録した高級な魔導具が」
「ううん、そういうのも素敵なんだけどね。やっぱり自分の知ってる音楽も聴きたいなって……」
桃が少し寂しそうに微笑むと、隣で話を聞いていたルビーが「じゃあさ!」とポンと手を叩いた。
「オルゴールとかどうよ? あれなら元々魔力なしでも聞けるしね」
「でも一つ一つオルゴールを作っていてはキリがないなと思って。一つの箱に一曲しか入らないから、いろんな曲を聴こうと思ったら箱をいくつも作らなきゃいけなくなっちゃうだろ?」
「……ふふ、あるよ」
桃の顔に、いたずらっぽくも頼もしい笑みが浮かんだ。
「一つ作れば何曲も聴けるオルゴール」
「……えっ!? 一つのオルゴールで、何曲も……!?」
ルビーが目を見開き、サファイアも眼鏡の奥の目を丸くして身を乗り出した。
「どういうことですの、桃!? オルゴールの筒に打てるピンの数と位置は固定のはず……魔法を使わずに、どうやって曲を変えるというのですの!?」
驚きを隠せないトパーズに、桃は異世界の知恵——『ディスク・オルゴール』の仕組みを説明し始めた。
「立体的な筒じゃなくて、穴の開いた平らな金属の円盤を使うの。ハンドルを回すと円盤がくるくる回って、穴の突起が星型のギアをカチッと動かして音を鳴らすの。でね、曲を変えたい時は……その金属のディスクをパッと差し替えるだけ!」
懐かしいなぁ琥珀の家に遊びに行ってよく遊ばせてもらったっけ、解体した時は本気で怒られたけど…
「円盤を……差し替えるだけ……!?」
サファイアの頭の中で、精密な歯車と穴あき金属板のロジックが一瞬で組み上がった。手帳を開き、凄まじい勢いでスケッチを描き始める。
「なんて美しい構造だ……! 立体のシリンダーに無数のピンを植え込むのではなく、平らな金属板に穴を開けて『楽譜』として外部化する……! これなら、ディスクさえ増やせば何曲でも演奏できる!」
「すっげえ……! それなら本体は一つ作ればいいんだな!? 円盤を何枚も作っておけば、明るい曲も、しっとりした曲も、好きな時に好きなだけ聴けるじゃねぇか!」
ルビーが大興奮で拳を握りしめると、トパーズも胸の前で手を合わせ、瞳を輝かせた。
「素晴らしいですわ、桃! 魔法を使わずに、一枚の金属板を替えるだけで音色も曲も一変する……! これこそ、魔法に頼りきったこの世界の人々の常識を覆す、最高の『ユニバーサル魔道具』ですわ!」
「うん! 私の知ってる昔の知恵だけど……みんなの技術があれば、絶対に最高のオルゴールができると思うの!」
桃のアイデアに全員の情熱が一つに重なり、コンテストに向けたチームの作品は「曲を自在に変えられる手回し式ディスクオルゴール」へと決定したのだった。
初めてディスクオルゴールを聞いた時とても感動しました。
素晴らしい音色だったので今でも夢に出てくるくらい覚えてます。




