お祭り騒ぎ
「えーっ!? これ、たった1か月後に発表なの!? すごすぎるよ……! 私たちにそんなのできるかしら?」
「でも、ある程度決まった課題があるみたいだから、それに沿って進めば大丈夫だってさ! 発注も会計も、ぜんぶ自分たちでやるシステムらしいぜ?」
「へえ、本格的! でも材料はどうするの?」
「臨時で来た配給列車がずっと学園の貨物門に止まってるから、必要な資材の受け取りや注文はそこに行けばいいらしいぞ!」
「普通科と合同ですって!?」
「でも組み分け棒が考えた最強のチームらしいよ、あの棒が言うんだから科が違っても最強のチームになるんびゃないかな?」
講堂のあちこちから、興奮と不安が入り混じった生徒たちの賑やかな声が聞こえてくる。
「配給列車がずっと止まってる……」
生徒たちの会話を耳にしたルビーは、口元をニヤリと歪めて小さく呟いた。
「おいおい……『資材の発注や受け取りのために、生徒がいつでも配給列車の周りに集まっていい』って流れを作ったのかよ! これなら俺たちが四六時中列車の近くに張り付いて検分してても、誰も怪しみやしねぇじゃねぇか……!」
「ええ、完璧な計算ですわね」
壇上から戻ってきたトパーズが、髪を優しく払いながら涼しい顔で合流する。
「『資材の管理と生徒のサポート』という名目で、私たちが列車の中に堂々と入り込む大義名分も完成いたしましたわ」
サファイアも眼鏡のフチを指で押し上げ、静かに頷いた。
「さらに素晴らしいのは、チーム分けの手回しですわね」
今回のコンテストのチーム分けは、学園名物の『魔法の組み分け棒』による、相性を考慮したオールランダム抽選——ということになっている。
「……もちろん、僕たちが綺麗に4人同じチームになったのも、組み分け棒による公平な選出……ということですけれどね」
「棒にまで手回ししてたのかよ!? トパーズお前ってやつは……!」
ルビーが呆れ返ってツッコミを入れると
「これはサファイアのアイディアですわ、私もそこまでは考えておりませんでしたの」
桃も目を丸くしてトパーズとサファイアを見つめた。
(トパーズとサファイア…事件の調査をするために、ここまで完璧に全員の目を欺く仕掛けを作っちゃうなんて……すごすぎるよ……!)
「ふふ、組み分け棒さんも『インペリアル家の頼みなら』と快く協力してくださいましたわ」
トパーズは悪戯っぽく微笑むと、ぎゅっと胸の前で手を組んでいる桃へ向き直り、優しく語りかけた。
「これで、誰にも邪魔されずに4人一緒に動き回れますわ。本当は次の正規配給がある半年後まで、あの列車をずっと学園に留め置いておくつもりでしたのよ? ですが……さすがのお父様にも『学園の物流と本国の運行ダイヤが狂う!』とお本気で怒られてしまいましたわ」
トパーズは少しだけ気まずそうに、けれど上品にほほ笑む。
「半年も止めておくつもりだったの!? トパーズ、スケールが大きすぎるよ……!」
桃が目を丸くして驚くと、サファイアが静かに眼鏡のフチをすっと押し上げ、本題へと表情を引き締めた。
「つまり……僕たちが誰にも怪しまれずにあの列車を調査できるタイムリミットは、生徒たちが大騒ぎしているコンテスト最終日まで、ということですね」
「ええ、その通りですわ。コンテストが終われば、あの列車は資材の回収と報告を終えて本国へ戻ってしまいます。それまでに、事故の夜に刻まれた不自然な魔力回路の痕跡と、裏で手を引く者の手がかりをすべて暴き出さなければなりません」
「1か月……長いようであっという間だな。よし、お祭り騒ぎに沸く生徒たちの陰で、俺たちも本格的に動くとしますか!」
組み分け棒です
帽子じゃないです




